アメリカ軍では、戦車以外の対戦車車両を(装甲・非装甲を問わず)「Tank Destroyer(タンク・デストロイヤー)」と呼んでいたため、(主にドイツ軍の)「駆逐戦車」とは区別して「戦車駆逐車」と呼ぶことがある。
解説
本車は、M4A2の車体に、3インチ対戦車砲を装備した大型砲塔を搭載したものである。機動力が優先されたために装甲がもとのM4シャーマンより薄くなっていた。
足回りはほとんどM4シャーマンと変わらないが、新たに搭載された旋回砲塔がオープントップになっているのが特徴である。これは軽量化のためと、車長、砲手、装填手の3人で周囲を警戒し、敵の早期発見、撃破することを狙ったためである。
ただし、近くで炸裂した砲弾の破片、土砂や煙が飛び込んでくるため不評であり、一部の車両は現地改修され、天井が追加されているものもあった。
主武装の3インチ(76.2mm)対戦車砲は強力で、M4シャーマンの75mm砲より対戦車能力に優れていた。通常の徹甲弾でドイツ軍IV号戦車の75mm砲L/48に匹敵する威力を持ち、タングステンを使用した高速徹甲弾の場合、ドイツ軍の88mm砲並みの貫通力を発揮した。
しかし、この3インチ砲はかなりフロントヘビーで、中期型以降はバランスを取るために砲塔後部にカウンターウエイトを搭載していた。
使用国
アメリカ軍のほかは、イギリス軍や自由フランス軍でも使用された。また、極少数ながら、ソ連軍でも使用された記録がある(レンドリース法によるもの)。
ちなみに、イギリス軍はこのM10に「ウルヴァリン」というニックネームが付けた。さらに3インチ砲から17ポンド砲に載せ換える改造をしたものも使用し、こちらには「アキリーズ」というニックネームを付けた。
特殊な事例としては中華民国軍が挙げられる。国共内戦時にアメリカ軍から供与されたが、トラクター扱いで武装を撤去しての供与だった。そのため日本軍から鹵獲した九一式十糎榴弾砲(口径105mm)を搭載して共産党軍との戦いで使用したとされている。台湾の陸軍機甲学校に保存されているのはこの105mm榴弾砲を搭載した車両を3インチ砲を搭載した車両に似せたものである。
M10パンター
ドイツ軍のオットー・スコルツェニー中佐率いる第150装甲旅団は1944年のアルデンヌの戦いで「グライフ作戦」として、米軍に偽装した車両や捕獲車両、米兵の軍服を着たドイツ兵によるミューズ河に架かる重要な橋を奇襲確保する計画を立てており、その際に投入されたのがパンター戦車をM10に偽装させた車輌であった。
これはパンターにM10のシルエットを模した軟鋼板を被せるのみならず、キューポラを除去、更に米軍第5機甲師団を模した車両番号まで書き込んでいたという凝りようであった。
奇襲効果が失われた後、この偽装パンターは通常の戦車同様にマルメディへの強襲攻撃に使用され、米軍と交戦し撃破された。
登場作品
アメリカ軍の駆逐戦車として登場。イギリス軍の駆逐戦車としてアキリーズも登場。
前述の中華民国軍で使用されたことにちなんでか中国ツリーにも実装されている。
アメリカの駆逐戦車としてM10が、イギリスの駆逐戦車としてアキリーズが登場。
アメリカ軍・アメリカ海兵隊・イギリス軍の戦車として登場。
アメリカ軍の駆逐戦車として登場。
初代PS「コンバットチョロQ」のみ登場。「M10」表記。
敵タンクとしては登場せずバトルアリーナでのみ交戦する。
性能はM4シャーマンの機動力強化型といった趣だが耐久力は低い。