未成、第三の虎
E-75は、第二次世界大戦後期のドイツで開発されていた重戦車。
ドイツ戦車の規格共通化計画・通称E計画(E-Serie)に基づき、既存のティーガーII重戦車を置き換える車重75トン級の標準戦車(Standardpanzer)とされていた。
終戦時点では試作段階にすら至らず、完成していたのはE-50中戦車との共通化が計画されていたサスペンションのみ。
なお、現存する資料から分かることは「電動モーターで旋回するE-50と共通の新型砲塔を搭載」「900馬力のHL234エンジンやトランスミッションを搭載」といった程度で、武装は完全に不明。
そのため、戦後の架空戦記やゲーム等で登場するE-75の完成版、およびその性能は推測の域を出ない。
余談、絶望的な史実if
「もし1945年5月以降も戦争が続いていれば...」などといった題材の仮想戦記で登場することが多いE-75。
だが、その実態はかなり絶望的だったらしい。
まず最初の要点は、E-75(およびE-50)が量産化される可能性は極めて低い、ということ。
ソ連赤軍の猛迫する1944年以降、強固な総力戦体制の維持を強いられたドイツの実用戦車が1943年から終戦まで何ら進歩しなかったということから分かる通り、当時のドイツに新型戦車の生産ラインを構築するような余力は、もはや無かった。
実際、1945年ドイツの戦車計画は既存のティーガーIIおよびパンターの生産継続でしかなく、E-75のような新型戦車はそもそも実用化に至ることすら無いかもしれない...。
T29 | IS-4 |
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次の要点は、E-75は連合軍の次世代重戦車より劣る、ということ。
例えば、史実の終戦時点で試作段階にあったソ連のIS-4は、終戦時点のドイツ実用戦車砲として最強の12.8cm砲によるゼロ距離射撃すら防ぎうる驚異的な防御力を有していた。
また、アメリカのT29が搭載した105mm砲は最大で300mm厚以上の装甲射貫を可能とし、E-75の最大250mm程度の装甲など容易く貫いたと考えられる。
さらに、もし戦争の長期化によって戦時体制が続くなら、米ソでは1950年代レベルの強力な怪物的重戦車が早期に実現した可能性が高く、それは英国に関しても同様...。
...あまりにも絶望的。
もちろん、ドイツが大戦全期にかけて優勢を維持したというようなif展開なら話は別だが、史実に基づいて考えるとこうなる。こうなってしまう...。
参考
・戦車小話~E-50/E-75の実態と妄想 - Togetter [トゥギャッター]
・История неудавшейся унификации | Warspot.ru(訳:失敗した共通化の歴史)
登場作品
ゲーム
ドイツ重戦車「E 75」として登場。一般的なE-75の姿はこのゲームに登場するものが元となっている。
最終状態では12.8cm砲が搭載可能となり、格上のMausと同等の貫通・単発火力を獲得する。