解説
兵器は前線において、たびたび想定外への直面を強いられる。例えば...
- 相手が強すぎる
- ダメージの修復に必要な補給物資が足りない
- 戦場の自然環境変化に対応できない
...というようなこと。
そのような場合に前線で独自に行われる改修が現地改修(field modification)と呼ばれる。
基本的に現地調達できるありあわせの部品、鹵獲品や破壊された物品からの剥ぎ取り品などが用いられる。
本来ありえない物品を組み合わせることから奇抜な見た目となりやすく、外見的に珍兵器と呼ばれることもしばしば。
旧日本軍では
旧日本軍では陸海の両軍ともに現地改修は違法行為で、例えば九七式中戦車に増加装甲を取り付けようとしたところ「天皇陛下から受け賜った兵器に不当な改造をするとは」というふうに上官に差し止められた、というような逸話がある...
...が、これは単なる逸話。実際のところ、前線での現地改修は普通に実施されていた。
例えば、予備のキャタピラを増加装甲替わりに取り付けた車輌の写真が複数残っていたり、車体前面と操縦室前面に遺棄されたアメリカ製M3軽戦車の装甲板をボルト留めした車輌が存在したり、本来ありえない零戦の複座仕様が前線に配備されていたり。
上述の違法云々という話は、上官による場当たり的対応の多かった日本軍特有の現象だったのかもしれない。
具体例
実在
自機よりも高高度を飛ぶ爆撃機の撃墜を目的に、斜め上向き60~70度で搭載された機関砲。特に何か新しい機構があるわけではない。
爆撃機を追いかけることのできる速度と素早い離脱性能を兼ね備えるJu88機に装備され、大きな戦果を挙げたが、一方で運動性能に乏しいHe219機での使用には向かなかった。
専用の換装キットも量産されたが、換装の是非は現地で判断されたため、現地改修といえる。
- 複座零戦
ラバウル航空隊には、大破した複数の零戦から使える部品をかき集めて再生した複座の改造機が1機だけあり、アドミラリティ諸島の飛行場への爆撃やカメラを搭載して偵察などに使用された。
のちに撃墜されるも、戦後の1975年に引き揚げられ、国立科学博物館の地球館2階展示室にてエンジンカウルをはずされた状態で展示されたのち、現在はヒロサワシティに所在する。
- 鹵獲改造III号突撃砲
III号突撃砲はドイツが大量に使用したため必然的に戦場で放棄されるものや撃破されるものが多く、戦車不足に悩まされていた独ソ戦初期のソ連赤軍はこれらを鹵獲、運用することがあった。
その一部は、T-34(1940年型)の搭載砲への改修(ほぼ改造)をもって前線部隊に充てられたという。
- 九七式中戦車チハ改の増加装甲
1943年後半、インパール作戦に参加している戦車第14連隊の連隊長である上田中佐の発案で、材料廠(前線で整備などを行う部署)によって一部車輌に施された。
最初は駆動系の点検や射撃の邪魔にならない範囲で車体前面に直接溶接する予定だったが、軍司令部からの許可が下りず、代わりに20mm程度の装甲板に長さ約15cmの支柱を溶接、その支柱をボルトで車体に取り付けたものとなった。
当初は「前方視界が著しく悪くなる」「重心が前方になり、走行性能に悪影響が出る」などの理由から不評だったが、1944年4月の戦闘で敵の対戦車砲弾を正面から受け、増加装甲は完全に貫通されていたものの、車体には全く影響がなかったことから効果が見直され、歓迎されるようになったという。
(参考:『日本の戦車1927~1945』平成28年5月27日発刊 アルゴノート社)
創作
OVA版およびTV版機動戦士ガンダムUCに登場する現地改修機。トリントン基地にて、暇を持て余した作業員の遊び…というわけではなく、戦力を強化するために行った物
OVA版およびTV版機動戦士ガンダムUCに登場する現地改修機。セミストライカーよりもこちらのほうが、暇を持て余した作業員の遊びと言える
OVA機動戦士ガンダム第08MS小隊に登場する陸戦型ガンダムの改修機。胸部増加装甲がザクのシールドということは、あまりにも有名。
OVA機動戦士ガンダム第08MS小隊に登場する陸戦型ガンダムの改修機。破壊された頭部を陸戦型ジムの物に置き換えた物。