測距儀とは、観測者と観測対象(目標)との距離を光学的・数学的方法で割り出す機器。
レンジファインダーとも。
単に測距儀と言う場合は特に火砲の照準装置の一つとして扱う場合が殆どで、本稿の内容も専らこの用途のものである。
用途
銃で目標を狙って撃つときは、銃を構えて「銃が目標の方向を向いているか」を目で見て確かめれば当たる。細かい話は省くが、ライフル銃の場合は概ね500mくらいまでであれば銃についた照準器を目分量で調整してもちゃんと狙えば当たるわけである。
ところが、何キロも先の目標を射撃する火砲の場合は、砲弾がより顕著に山なりとなるため「砲が目標を向いているか」確かめても、目標に命中するとは限らなくなる。つまり、砲の水平方向の向きだけでは無く仰角(縦の角度)を目標との距離によって細かく調整しなければ当たらなくなる。(※)
つまり、目標に命中させるには距離を正確に測定する必要があるが、このために用いられるのが測距儀と呼ばれる器具である。
本当は、メイン画像のようなステレオ式の他にも色々な方式のものがあるが、今のところPixivに作品はないので割愛。
- (※)砲によっては火薬の量を加減して射程を調整できるものもあるので、こちらも距離によって正確に加減しなければならない。
構造(ステレオ式)
左右についた対物レンズが映す映像の差を観測者が確認することで距離を割り出す。もうちょい専門的に言えば「三角法」の原理を応用したもの…と言っても不親切な説明と思われる方も多いはず。
そこで、鏡に向かい合って顔の前に指を一本立ててこれを両目で見てみてほしい。
これを顔に近づけるとより目になり、遠ざけるに連れて瞳が離れていく。
つまり、目玉の向き(角度)は距離によって変化したわけで、逆にこの目玉の角度をどうにかして数値化できれば、顔から立てた指までの距離を正確に割り出すことができる。
これと同様に、測距儀も「両目」に当たる大きく離れた両端の反射鏡が「同じ場所を映している」状態(※2)のときの角度を距離に換算するものである。
つまり近くのものを映しているときほど両端の反射鏡は内向きになり、離れるほど外向きに近くなる。
基線長
ところがこのシステム、遠くになればなるほど算出した距離が正確ではなくなってくる。
理由は簡単で、観測者から近い場所と遠い場所では前述の「反射鏡の角度変化」の割合が変化するためで、遠距離になればなるほど角度変化の割合が小さくなり、正確な数値を得にくくなる。
このため、より遠距離を観測したい場合は左右の反射鏡の距離(基線長)をより長く取るように設計される。
大和型戦艦の艦橋最上部 主砲射撃指揮所に搭載された測距儀は15.5mの基線長があった。これは観光バス1台よりも更に長く、電車1両分よりやや短い程度である。
基本的に基線長が長いほどより遠距離まで正確に計測できるため高性能になるが、反面本体が大きくなってしまうため実用性と性能を両立できるよう設計される。
また、光学系に拡大機能を組み込めばよりコンパクトに設計できるが、これも上手に設計しなければ実用性が大きく損なわれてしまう。
- (※2)「同じ場所を〜」と記したが、多くの測距儀は映像を人が判断しながら合わせる原始的な構造である。左右の対物レンズの画像を上と下に分けて映して、片方の映像が左右に動くダイヤルを回しながら上下の映像が一致するところで目盛りを読んで距離を計ったり、或いは薄い2重の映像が完全に一致する場所で目盛りを読んで距離を計る。つまり人が目で見て判断をしつつ距離を割り出していた訳だが、これを逆手に取って観測者を幻惑させるべく考案されたのがダズル迷彩である。
用途
火砲の照準器の他に船舶(含民間用)の航法装置の1つとして、つまり他の船舶や灯台、障害物や目標物との距離を計測する器具としても用いられている。
火砲の射撃用のものは、現在ではステレオ式のものは廃れてしまったが、船舶用のものは今でも使用されることがある。
現在では、レーザー光線とコンピューターを用いた「光波測距儀」が民間の建築・測量分野や軍事分野などで多く用いられている。
この装置は、非常に正確に測定することができるほか、測量分野やそれを応用した軍用(歩兵向け)であれば、バスケットボールからハンドボール程度の大きさに、ゴルフ用のものであれば掌に収まる程度の大きさになる。
また、他の装置と連携させることが容易で、例えば民間分野であれば3Dスキャナ、軍用向けでは戦車や艦船の射撃管制装置に連動させる事ができる。
但し、レーザー光線を用いるため軍用・民間用共に状況(濃霧など)によっては使えないことも。