照準器は、主に火砲などで狙いを定めるために用いられる機器。
概要
簡素なものでは、散弾銃の銃口上部にある突起状の簡単なものや、拳銃や小銃のように照星と照門の2点で見出す緻密な照準が出来るものなど様々なタイプがある。これらは、一般的に「アイアンサイト」と呼ばれ、後述する光学的な照準器と区別される。
高度なものでは拡大効果を持つ光学レンズを組み込んで遠距離を狙いやすくしたもの(スコープ)や、コンピューターが組み込まれて弾道の変化を計算できる、高価かつ大変高度なものまで色々存在する。
高射砲・対空機関砲などの、遠距離かつ高速移動する目標物に対して射撃する火砲や、野砲や艦砲などの非常に長距離の目標物を射撃する火砲の照準器は、特に高度な技術力が要求されたため、軍事産業はもとより技術・工学分野でも最先端の分野であった。
メイン画像のものは第二次世界大戦中にアメリカ軍の爆撃機に用いられていたもので、機体の高度や対地速度、目標からの距離、爆弾の降下中の特性、風向きなどを入力して最適な位置で爆弾を投下できる当時としては大変高性能な照準器である。
銃の照準器
アイアンサイト
銃の後ろ側の照門(リアサイト)から、銃口近くにある照星(フロントサイト)を覗き込んで照準を合わせるもの。
原理
原理としては、照星と照門の位置関係が銃身に対して平行であり(※)、目標と照星、照門が一直線になるよう正確に狙えば銃弾が目標に命中する。(※)銃弾は放物線状に飛翔するため、上下方向には平行ではない。後述。
多数の小粒弾を撃ち出す散弾銃の場合、攻撃の範囲が「点」では無く「面」であるため精密な照準器は不要である。このため、照門を省いて照星のみとしたモデルも多いが正確な姿勢で射撃すれば命中させることができる。
種類と詳細
- 照星
照星は、調整可能なものと固定式の2種類があるものの、殆どのモデルは突起状の部品である。
調整式でもそれ自体が高さを変えることのできる構造となっているものもあれば、高さの違う別部品に交換するという形で調整を行うものもある
- 照門
照門は大変種類が多く、構造も簡単なものから凝ったものまで多種多様である。
大まかに分けると、小穴から照星を見出すピープサイトと、凹みの谷の部分に照星を合わせるオープンサイトの2種類に分けられる。前者は、遠距離の目標に精密な射撃を行う必要があるライフル銃等に用いられる。一方で後者は精度は劣るものの照星の見出しがし易いため、比較的近距離の目標に射撃する短機関銃や拳銃等に使用される。
調整機能
銃弾や砲弾は(程度の差こそあれ)放物線を描いて飛翔する。
ライフル銃を人的に向けて射撃する場合は2~300mほどの距離から照準の修正が必要となる。
このため、軍用のライフル銃や機関銃には距離ごとに照準を修正する機能が備わっている。
これは、エレベーション(elevation)或いは照尺と呼ばれるもので、殆どの軍用銃は照門を上下させて調整する。
距離による照門の調整には、つまみを回転させてネジによって上下するもの(M1ガーランド以降の米軍の銃、64式小銃、89式小銃など)、四画形の枠に上下する照門を取り付けたラダーサイトと呼ばれるもの(リー・エンフィールド、三十年式、三八式、九九式小銃など)、角度を変えられる板状の部品を使用したタンジェントサイト(モーゼルC96、SKS、AK-47など)がある。
左右に調整する機能はウィンデージ(windage)と呼ばれる。
一方で、銃固有の「癖」や弾薬の特性に由来する照準の狂いを矯正する作業も必要である。
これは、ゼロインと呼ばれる作業で、一度調節すると再び大きく狂うまでは調整する事がない。
一般的にゼロインは照星側で行われる。
光学サイト(オプティカルサイト)
1枚或いは複数枚のレンズを使用し、光学的な方法で狙いを定めるもの。
詳細は各項目を参照。
※他の照準器と異なり対象にレーザーを照射する事や、目標指示や誘導といった用途にも使われる事から純粋な光学照準器とは別物として扱われる事もある。
火砲の照準器
火砲のうち、直接目標に照準して射撃するものは、概ね銃の照準器と同様のものが使われている。
一方で間接照準、つまり「このくらいの距離にいる(であろう)敵に対して弾を落とす」撃ち方をする、迫撃砲や榴弾砲、艦砲などは、距離計と射撃方位盤、計算機などが照準器となる。
関連タグ
フラッシュライト:照射範囲の狭いスポットのモデルを銃に固定していた場合、レーザーサイトのように対象に照射する近距離での簡易照準器として使用する場合もある。