概要
アメリカ・ミシガン州に本社を置く、L3 EOTech(イオテック)社が開発・製造している、ホログラムを利用した光学照準である。
有名なものはメイン画像のような小銃に取り付け可能なものであるが、40mmグレネードランチャー、FN303レスリーサルランチャー、アーチェリー向け等も出ている。
元々はブッシュネルのホロサイトを軍用として(L3)EOTech社が改良したものであり、民生型はブッシュネル社が製造・販売を行っている。
同等品を比較した場合、スイッチ部のデザインと、レンズ部のガードの有無が民生型との違いとなる。(既に廃盤品となっているが初期にはブッシュネル製と同じスイッチとガードなしのものもあった)
また、名前が異なるものの、アメリカ・ウィスコンシン州に本社を置くVortex Optics社からもホログラフィックサイトが製造されており、EBR-CQBと呼ばれるHWSのものと似たレティクルパターンを持つRAZOR AMG UH-1が販売されている。
構造と利点・欠点
原理上必要な湾曲したレンズと、反射したドットを見やすくするためのコーティング等が必要なものが多いダットサイトとは違い、レーザー光を特殊なレンズに投影する方式のため、非常にクリアで歪みのない視界が得られるのが特長。
またレンズが少しでも残っていれば割れたりヒビが入った状態でも問題なく使用できる。
少なくともレンズ2枚を必要とするためドットサイトと比較して小型化が難しい反面、構造に余裕を持たせやすいため電子回路を組み込みやすく、安易なボタン操作での輝度調整やナイトビジョンモードへの移行を可能にしている。
レーザーホログラムという構造上、乱視の人が使用した場合、レティクルが滲んでしまう欠点がある。
ただし、ブースタースコープ(マグニファイア)やナイトビジョン等を介して見た場合、滲みは軽減されるため、等倍で用いない場合は欠点となりにくい。
とはいえ通常のドットサイトの場合も乱視の程度によってはドットが複数に見える、ドット形状が歪んで見えるなどが起きるため、好みや個人差の問題である。
通常のダットサイトと違い銃口側からレンズ部を覗いた際にレティクルの光が見えない事が利点とされるが、光量設定によってはチューブ内でレーザー光が反射・拡散して光ってしまう。
前述のように他のダットサイトと違い小型化が難しいため、ハイマウントとなってしまうためにローマウントした他社製品と比べるとゼロインした距離から離れると狙いがずれやすいという欠点がある。
ブッシュネルの民生型ホロサイトのように多少は低くすることは可能なようだが、フラットトップAR15搭載時にレティクルの中心点がフロントサイト(及び同じ高さのバックアップサイト等)の照星と合うようになっており、HWS前にマウントしたLAM(レーザー照準機)が視界を遮らぬ為であったり、ガスマスクやヘッドセット等の装着時に構えやすいよう、更に高くする変更がされたEXPS等のハイマウントモデルがあり、意図して小型化していない模様。
なお、銃のデザインによってはハイマウントモデルであっても直に付けると低くて狙いづらい場合もあり、より高い位置にするホロサイト用のライザーマウントも販売されている。
(他社の小型のダットサイトでも搭載するために背の高いマウントへの交換が行われる事もあり、使用するマウント次第ではホロサイトより高くなる場合もある)
ダットサイトと比較して電池寿命が短いため大型の電池を必要とする、レーザーダイオードの寿命がLEDに比べて短い、ホログラフィック投影膜が短期間で劣化する、電池消耗対策のオートシャットダウン機能により場合によって射撃中に電源が落ちてしまう事がある。
オートシャットダウンに関しては同機能を搭載したものであれば同様の為、HWSに限らない欠点ではあるが。
一方で単3型や123A型リチウムといった大型の電池はフラッシュライトやナイトビジョン、イヤマフなどと同じ電池であり、使用する電池に合わせて装着するモデルを選べば携行する電池を一種類のみとすることも可能であり、銃自体に電池保管用のコンパートメントを持つ場合はボタン電池よりも携行しやすく、電池切れの際には他の機器から取り外して流用するといった事も可能。
種類・諸機能
使用電池の種類や銃の種類、口径にそれぞれ対応した複数のレティクルパターン、マウントの種類、NVモードの搭載有無等により複数の種類がある。
ガード部分にL3レーザーデバイス社のレーザーモジュールをマウントしたEOLAD、単3電池用バッテリーケース部にレーザーモジュールをマウントしたLBCというユニットも出ており、既存の機種と部品を交換することでレーザーモジュール一体型へと変えることが出来た。
EOLADはレーザーモジュール用に別にバッテリーを搭載しているが、LBCはバッテリーを共用するようになっている。
モデルによって形状は異なるが、基本となるA65パターンは単純な点ではなく中心に点のあるサークル状のレティクル(65MOAサークルと1MOAドット)が投影される。
これは精密に狙うのではなくすばやく照準を合わせることを主としたレティクルパターンとなっている。
光点一つのパターンや、65MOAサークル内に複数のドットがあり距離に応じて使うドットを使い分けるパターンも用意されている。
目標となる人にレティクルを合わせた際、レティクルと人のサイズを比較することでおおよその距離を測ることも出来るようになっている。
例えば立った人の大きさが65MOAのサークル丁度であれば100ヤード(91.44m)、半分であれば200ヤード(182.88m)、顔がサークル丁度なら20ヤード(18.288m)と大雑把ではあるが計ることが出来る。
光量を落とすNVモードを搭載した機種ではナイトビジョンとの併用が可能で、銃へのタンデムマウントだけでなく頭部への装着時にも使用が可能。
ダットサイトに代わる次世代の新たな光学照準としてモデル553が SOPMOD(Block2)のSU-231/PEQとして採用、EXPS3がSOPMOD(Block3)のSU-231A/PEQとして採用され、米軍の特殊部隊を中心に普及が広まっていた。
しかし先述の欠点に加えて温度変化によりレティクルが移動して照準が狂うなどの問題があり、欠陥を持つとして賠償金を支払うことに合意している。
米軍では次世代光学照準器の選定が進められている一方、18年9月末に米海軍海上戦闘センター・クレーン局(NSWC-CD)とCQBサイト(広い視野を持ち300mまでの迅速かつ正確な射撃を支援するサイト)とマグニファイアとのセットの契約が交わされている(SU-292/PVS。EXPS3及びG33マグニファイア)。
次世代光学照準器としてか暫定的代替策としてかは不明だが、一時期はVortex Optics社のRAZOR AMGが陸軍により使用されていた。
EOTech系のホロサイトの欠点
EOTech系のホロサイトは大体値段が日本円にして7万円ほど(日本で買うと10万円程度)なのだが、使用及び保管環境や個体差により差が大きいものの使用して二、三年程度からレンズのコーティングが劣化して徐々に指紋のような模様が現れるようになる。
これには「アメーバ」という俗称があるのだが、これが出ると最初の方は問題ないが、徐々にレンズを覆っていき、最終的には向こう側がかなり見えづらくなってしまう、という欠点である。
そのためアメリカではホロサイトは消耗品として認知されており、シューターも「本当に長く使えるサイトを買いたいならAimPointの製品を買うべき」、等と言われたり昨今ではそのコスパの悪さの影響で一時期米軍の官給品から外されたりと問題になっている。
一応法執行機関向けも含め普通に売られているモデルであればアメリカでは本社に送り返すことで修理が行えるが、日本からの場合は正規代理店で購入しなかった場合は税関で没収されてしまう為不可能であり、日本の多くの実物ホロサイトのファンが最も恐れている現象である。
SU-231のような民間には放出品しかないモデルに関してはアメリカ国内であっても修理は不可能なのでメーカー修理は諦めるしかない。(放出品とはそういうものである)
この欠点はブッシュネル時代から存在するものだが、改良が構造的に不可能なのかそれともわざと改良していないのかは不明である。
温度変化によりレティクルが移動して照準が狂う問題(サーマルドリフト)は現行商品では対策済みとなっている。
電池収納部のゴムパッキンはメーカーではユーザーが交換する補修部品が用意されているが、何故か日本での正規代理店ではカタログでは用意されておらず、メーカー修理となってしまう。並行輸入を行っているショップも同様で、補修部品を取り寄せる必要がある。
その他
アメリカでの対ゾンビ装備ブームに乗っかり、レティクルパターンがバイオハザードマークに変更された「ZOMBIE STOPPER」というものもある。
機能としては基本のA65レティクルとは変わらない。
また現行の軍用スタイルのカバーのことを名称に引っ掛けた駄洒落として「幌」と呼ぶ事もある
SU-231は採用初期のモデルは市販品そのままで特に刻印に変更がされていない為、その当時の装備を再現するのであればわざわざ放出品を探さず、当時のロゴの市販品を探すのも手である。
エアソフトガン用に販売されているレプリカ品、通称「パチホロ」は実際にはドットサイトである。
通常の1枚のハーフミラーを用いるドットサイトに対してハーフミラーを2枚使用する構造上画面が暗い、ミラー面が射手側に向いているためにコーティングに加えてレンズに射手の顔が映る為に目標が見辛い、等の問題があり、そもそも実用性が二の次であるため安価粗製な製品(特に配線とレティクル調整部分が酷い事が多い)が多く出回っている(このような製品以下の検品ではねられたようなものもノンブランドとして売られている)、といった面があり「パチホロは(手を加えないと)使えない」とよく言われる。
実際のところ「使える・使えない」は運ゲーとなるが、ちゃんと動く前提での使用感はオープンサイトの視界とチューブサイトの剛性を持っているためそれなりに良好といえる。
パチホロは飾りとして、ハーフミラーコーティングを剥がしてタンデム搭載したAN/PVS-14型ダットサイト等で照準するという手もある。
他のダットサイトと違い箱型かつ大型であることを利用して、電動ガン用バッテリーケースとしたものが売られたことがある。
一応光点が点く物もあったようだが調整できずダットサイトとしての機能は無いため、バックアップサイトを用いるか、他のダットサイトとタンデム搭載する必要がある。
このように、LED、集光チューブやトリチウムチューブを使えば機能を再現できる他社のダットサイトと異なりレーザーホログラフィックを採用したレプリカが無いことに加え、多くの欠点が致命的ともいえる欠点ではない事もあってか国内での人気はそれなりに維持をしている。