IS-2では納得いかない!
1944年夏、ソ連軍はドイツ軍の対戦車砲に対する被害調査結果から、新型重戦車キーロヴェッツ1の開発を計画した。
この計画には、KV-1重戦車を設計したJ.Y.コーチンとN.L.ドゥホフが率いる2つの設計チームが競作で参加。それぞれのチームが開発した戦車の車体と砲塔を組み合わせた試作戦車オブイェークト703は1944年十月末に完成。同年末に「IS-3」として制式化され、生産に入った。
火力はそのまま、防御力を追求
IS-3は開発期間の短縮のために、IS-2と同じ主砲(122mm砲)とエンジンを装備しているものの、それ以外はほぼ一新された。
最大の特徴はその砲塔。 まるで近未来から連れてきたかのような極端に扁平で丸い砲塔はあらゆる方向に対して高い防御力を発揮。砲塔下部に至っては傾斜込みでなんと250mmもの装甲厚を誇る。これはドイツ軍のヤークトティーガーの戦闘室正面装甲並みである。(こちらは傾斜を考慮せず鋼板の厚みそのものが250mm。)
車体も同じように傾斜装甲を採用。傾斜のおかげで実質200mm近い装甲となっている。
簡単に言えば、『あらゆる角度からの被弾経始にすぐれ、パンター並みの重量で、それ以上の装甲と砲を実現』した、まさに第二次世界大戦究極の重戦車である。
ただ、極端に傾斜装甲を多用したことにより車内容積を犠牲にしている。
分離式の弾頭と薬莢の装填に非常に苦労したIS-2よりもさらに狭く、同じ主砲を採用した車内環境は過酷を極めた。
ちなみにこの設計手法はT-54をはじめ、後のソ連/ロシア戦車に受け継がれていく。
強烈なインパクトを与えたIS-3
結局、ドイツ敗戦までに完成したのはごく少数で、独ソ戦はおろか満州侵攻でも実戦を経験することなく終戦を迎えた。
・・・が、その後ベルリンで行われた戦勝国パレードに参加したIS-3。そのあまりに先鋭的なシルエットを見た各国首脳は度肝を抜かれ、これに対抗すべくアメリカはM103ファイティングモンスター、イギリスはコンカラー重戦車や、さらにぶっ飛んだ戦車であるFV4005の開発に奔走することに。
その後
1967年の第三次中東戦争ではエジプト軍に売却された約100輌のIS-3M(IS-3の近代化改修型)が戦闘に参加。イスラエル軍のM48パットンA2戦車が20~30輌のIS-3Mと戦闘に入ったが、その90mm砲弾は貫通に至らなかった。しかし実戦経験の少ないエジプトの戦車兵は後部の補助燃料タンクを装着したままで、これに気付いたイスラエル側は曳光徹甲弾で狙撃し5、6輌を炎上(ソビエト戦車が主に採用するディーゼル燃料はガソリンに比べ発火・引火し難いが、榴弾の爆発や曳光弾の熱では着火してしまう)させ、パニックに陥らせた。中には戦車から逃げ出してしまったエジプト兵もいた。
ソ連軍でのIS-3Mは1970年代まで装備車輌リストに含められており、後に北方領土で沿岸防衛用のトーチカ代わりとして長く使われ、現在も放棄され錆び付いた物が残されている。
他にチェコスロバキア、ポーランドに1,2両、北朝鮮に部隊編成できる程度の数が送られたが、結局第三次中東戦争以外では表舞台に登場することはなかった。
内戦中のウクライナにて親ロシア派集団は暫定政府側のT-64に苦戦。
戦車がない親ロシア派が博物館にあったIS-3を再稼働させて戦線に投入しようとしたという。エンジンは当時のものがそのまま使え、弾薬は自走砲のものが流用できたようである。
結局砲火を交えることはなかったが仮に実戦でT-64に主砲が直撃した場合、25kgもある弾頭の巨大な運動エネルギーによって装甲板の内側を剥離させて搭乗員へダメージを与えることができた可能性がある。
しかしT-64が採用するAPFSDS弾は、装甲の傾斜角をほとんど無視して貫通力を発揮する特性があるため、IS-3とて正面からでも簡単に貫通されてしまう。
性能
全長 | 9.85 m |
---|---|
車体長 | 6.67 m |
全幅 | 3.2 m |
全高 | 2.450 m |
重量 | 45.8 - 46.5 t |
懸架方式 | トーションバー方式 |
速度 | 40 km/h(整地)19 km/h(不整地) |
行動距離 | 190 km |
主砲 | 122 mm D-25T L/43 加農砲 |
副武装 | 12.7 mm 機関銃×1 7.62 mm DT 機関銃×1 |
装甲 | 砲塔上部全周110 mm |
砲塔下端最厚部220 mm | |
砲塔上面20 mm | |
車体前面110 mm | |
車体側面上部90+30 mm | |
車体側面下部90 mm | |
車体後面60 mm | |
車体上面20 mm | |
車体底面20 mm | |
エンジン | V-2K (V-2-IS) 600 馬力 |
乗員 | 4 名 |
関連イラスト
登場作品
本来は実戦には間に合わなかったが、戦後のソ連映画にはソ連軍の戦車として多く登場している。
- ベルリン陥落
ソ連軍の戦車として登場。
ソ連軍の戦車として登場。
- レニングラード攻防戦
ソ連軍の戦車として登場。
ソ連の重戦車として登場。
- コンバットチョロQシリーズ
初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。
「コンバットチョロQ」では「スターリン3」として作戦16「輸送列車部隊、西へ」から登場。実戦を経験しなかったことから「幻の戦車」と解説されている。
初登場ステージでは貨物列車に乗って移動する敵の増援部隊として登場。戦域を離脱される前に破壊する必要がある。その後も多くのステージで敵タンクとして登場している。
「新コンバットチョロQ」では「JS-3重戦車」として登場。「越えろ!大防衛線」で最終防衛ラインを守る敵タンクとして登場、同ステージをクリアすると使用可能になる。
同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。