真・WW2最強戦車
IS-3は、第二次世界大戦(大祖国戦争)末期の1945年に実用化した重戦車。
時のソ連最高指導者ヨシフ・スターリン(Iosif Stalin, IS)の名を冠する「ヨシフ・スターリン戦車」の3番目の車輌で、開発時の呼称はオブイェークト703。
122mm砲の大火力に加え、傾斜の効果を最大限に活かした装甲配置により、ドイツ戦車として最強クラスの火力を有するティーガーIIを完封しうるほどの防御力を発揮したが、終戦までに実戦投入されなかった。
なお、他の呼称として、英語・ドイツ語におけるヨシフ・スターリンの表記(Joseph Stalin, JS)が由来の「JS-3」が存在する。
火力
IS-3の搭載するD-25T 122mm砲は、先代のIS-2が搭載したものと同型。
その威力は当時の戦車砲としては圧倒的で、ドイツ戦車の18cmに達する重装甲をも容易に射貫した。
ただし、防御力重視で内部の狭い砲塔に、D-25Tの大型で重い砲弾・一回の砲撃に二度の装填を要する(※1)という特性が組み合わさった結果、砲弾の装填に長時間を要する、砲弾搭載数が少ない(最大28発)といった欠点も生じている。
実際、ドイツのティーガーIやパンターが分間6発程度を撃てたのに対し、IS-3の場合は訓練された戦車兵でも分間2~3発程度が限界とされた。
(※1:砲弾の構成要素である発射体と装薬とを分離保管する「分離装薬式」のため。)
防御力
- 砲塔
正面装甲は250mm厚で、側背面も70~220mm厚が確保されていた。
そして、これらの装甲は急角度の曲面により跳弾を誘発しやすく、総じて大戦末期のドイツ製戦車砲・対戦車砲をほぼ無力化できるだけの防御力を発揮した。
- 車体
前方に向けて尖った正面形状はカワカマス(Щука:シューカ)の頭部に例えられ、それがそのままIS-3のあだ名となっている。
正面装甲厚は110mmだが、各部の傾斜を考慮した実質装甲厚は220mm程度で、側面も上部は最大90mm+60度の傾斜で実質180mm程度(+増加装甲5mm)と、やはり大戦末期のドイツ製戦車砲・対戦車砲をほぼ無力化できるだけの防御力を発揮した。
ただし、車体正面装甲の2枚板の継ぎ目に高威力の砲弾を受けると装甲の接続が破壊され、車体構造ごと分解してしまうという致命的な欠点があり、改良の手立ても無かったことから、新型のIS-4実用化が急がれた。
機動力
ドイツのティーガーIIが車重70トンにまで肥大化していた当時、IS-3はパンターやセンチュリオンなど他国の中戦車と同等の車重46トン程度にまで抑えられていた。
これにV-2-ISディーゼルエンジンの出力520馬力、トーションバー式サスペンションが組み合わさることで、30トン級のT-34にも匹敵する走破性を発揮。最高速度は40km/hに達した。
ただし、1945年当時のソ連は既により軽量で、優秀な機動力と防御力を両立した次世代型戦車の実用化を目前としており、それとIS-3を比較した場合の劣位は明白だった。
運用
第二次世界大戦末期、ソ連の対日参戦に伴う満州侵攻で投入されたが、日本軍と会敵しないまま終戦を迎えたため、実戦を経験することは無かった。
終戦後の1945年9月、ベルリンで開催された戦勝国パレードで52輌のIS-3が登場。
そのあまりに先進的なシルエットは西側に大きなインパクトを与え、これに対抗すべくアメリカはM103重戦車、イギリスはFV214コンカラーやFV4005の開発に奔走することとなる。
1967年の第三次中東戦争では、エジプト軍に売却された約100輌のIS-3M(IS-3の近代化改修型)が戦闘に参加。
イスラエル軍のマガフ1戦車(M48A1)と交戦した際、その90mm砲弾をことごとく防いだ。
しかし、実戦経験の少ないエジプトの戦車兵は車体後部の補助燃料タンクを装着したままだったようで、これに気付いたイスラエル側はこれを狙撃。
5、6輌が炎上してパニックに陥り、中には戦車から逃げ出してしまったエジプト兵もいた。
ソ連軍でのIS-3は近代化改修などを経て1970年代まで装備車輌リストに含められており、後に北方領土で沿岸防衛用のトーチカ代わりとして長く使われ、現在も放棄され錆び付いた物が残されている。
他にもチェコスロバキア、ポーランドに1,2輌が、北朝鮮に部隊編成できる程度の数が送られたが、結局第三次中東戦争以外での本格的な実戦参加は無かった。
2014年、ウクライナのドンバスで蜂起した親ロシア派はウクライナ政府軍のT-64に苦戦。
戦車を保有しない親ロシア派は、モニュメント化されていた約70年前の戦車、すなわちIS-3を再稼働させて戦線に投入しようとした。
(参考資料:ZAPZAP - 親ロシア派、博物館のスターリン3型重戦車(IS-3)で対抗へ)
エンジンは当時のものがそのまま使え、また弾薬は自走砲のものが流用できたらしいが、結局、実戦投入されることはなかった模様。
登場作品
史実とは異なり、IS-3はWW2を描く戦後映画で赤軍戦車として度々登場している。
ベルリン陥落
ソ連軍の戦車として登場。
ヨーロッパの解放
ソ連軍の戦車として登場。
レニングラード攻防戦
ソ連軍の戦車として登場。
World_of_Tanks
ソ連の重戦車として登場。
War Thunder
ソ連の重戦車として登場。
コンバットチョロQシリーズ
初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。
「コンバットチョロQ」では「スターリン3」として作戦16「輸送列車部隊、西へ」から登場。実戦を経験しなかったことから「幻の戦車」と解説されている。
初登場ステージでは貨物列車に乗って移動する敵の増援部隊として登場。戦域を離脱される前に破壊する必要がある。その後も多くのステージで敵タンクとして登場している。
「新コンバットチョロQ」では「JS-3重戦車」として登場。「越えろ!大防衛線」で最終防衛ラインを守る敵タンクとして登場、同ステージをクリアすると使用可能になる。
同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。