『ヨーロッパの解放』とは、1970年からソビエト連邦で製作された戦争映画である。
概要
アメリカの大作戦争映画『バルジ大作戦』に対抗して、ソ連の国家的事業として約3年の期間をかけて制作された。
1943年のクルスクの戦いから始まり、1945年のベルリン陥落に至るまでをソ連軍の一兵卒を主人公として描く全5部・総上映時間7時間48分の超大作。
流石に『ベルリン陥落』のようにスターリン礼賛要素こそないが、ゲオルギー・ジューコフは出番が多いがイワン・コーネフの出番が少ない、T-34/85がクルスク戦にも参加しているなど史実と異なる場面も多い。もちろんアドルフ・ヒトラーやドイツ軍は絶対的な悪役である。
ただし制作当時東西冷戦で張り合っていたはずのアメリカ・イギリスも好意的に描いている。
またソ連製作の映画ながらドイツ人がきちんとドイツ語をしゃべる。しかし本国公開版ではロシア語吹替が行われ、日本の市販DVDでも長らくこのロシア語吹替版の音声のみが収録されていた。
改造ティーガー戦車
本作において欠かせないのはメイン画像に描かれているティーガー戦車である。
他の戦争映画に登場するティーガーIはT-34を改造したものが多く、やや砲塔が前寄りになってしまいポルシェティーガー風になっていることが多かった。
しかし本作のティーガーIはT-44を改造したことでティーガーに近いプロポーションを保っている。第1部時点では専用の幅の広い履帯まで履いていたが、第5部では原型の履帯に戻っている。
ちなみにIS-2を改造したと思われるティーガーIIっぽいドイツ軍戦車も登場している。
このT-44改造ティーガーはその後1972年『スターリングラード大攻防戦』、1985年『モスクワ大攻防戦』、1995年『レッド・チェリー』、2002年『東部戦線1944』と劣化しながらも多くの作品に登場し、2004年『ヒトラー~最期の12日間~』まで登場し続けた。
日本での扱い
1973年の『戦争と人間』第3部はソ連モスフィルムの協力のもとソ連ロケも行われているが、戦闘シーンで第1部「クルスク大戦車戦」の映像が流用されている。ただし劇中の時間軸はノモンハン事件である。
1979年の『復讐するは我にあり』で第3部「大包囲撃滅作戦」のオープニング映像が流れる場面がある。
1977年に日曜洋画劇場でテレビ放送が行われ、第1部と第2部を「ヨーロッパの解放I」、第3部と第4部を「ヨーロッパの解放II」、そして第5部を「ヨーロッパの解放III」と3分割して放送した。
2014年にはアニメ『ガールズ&パンツァー』とのコラボ企画としてHDリマスター版DVDが発売され、パッケージにはテレビシリーズで登場していたプラウダ高校の面々が描かれている。通常パッケージ版も追って発売された。