ベースとなった「III/IV号火砲搭載車」とは、III号戦車のディファレンシャル・ギアとドライブスプロケット、IV号戦車のシャーシ、転輪、誘導輪を組み合わせ、エンジンを車両中央部に搭載した自走砲専用車両である。同じ車両を使用したものとして150mm榴弾砲を装備した「フンメル」がある。
解説
1941年、ドイツ陸軍はバルバロッサ作戦の緒戦でソ連のT-34やKV-1などの防御力に優れた戦車に接し、これらの重装甲戦車を撃破できる対戦車自走砲の必要性を実感した。
この要求に基づき、アルケット社が開発したIII/IV号火砲搭載車に71口径88mm対戦車砲を搭載することが決定され、名称は「ホルニッセ(=スズメバチ)」と名付けられた。
試作車両開発後、1943年7月の「ツィタデレ作戦(=クルスクの戦い:独ソ戦の天王山となった第二次大戦中最大の戦車戦)」に間に合わせるべく、100両の生産が命じられた。
初陣となったクルスクの戦いにおいて、本車は有効な兵器であることを証明した。ロシアの開けた平地に非常に適していたのである。装甲が薄く、天板がないといった不利があったが、反面、広大な射界を得ることができた。信頼性の高い照準器と、よく伸びる弾道特性の火砲によって、敵戦車をアウトレンジから撃破できたのであった。
1944年2月にヒトラーの指令により、「ナースホルン(=サイ)」に改称された。
ナースホルンは終戦まで約500両が生産され、北アフリカを除く全ての前線で運用された。