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10式戦車

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ひとまるしきせんしゃ

10式は陸上自衛隊最新鋭の戦車である。日本の地勢に合わせて、小型軽量なのが特徴。

10式戦車は、陸上自衛隊が保有する主力戦車

pixivでは制式化される前の名称(開発コード)であるTK-Xのタグが付いている絵も多い。

概要

90式戦車に続く、戦後4代目となる主力戦車。2009年12月に「10式戦車」と命名し制式化され、富士総合火力演習2010において一般公開された。試作・生産は三菱重工業

61式戦車74式戦車、90式戦車に次ぐ第4世代の陸自戦車であり、最新のデータリンクシステムへの対応をはじめ多くの新機軸を盛り込んでいる。

さらに90式戦車と同等の火力と装甲を維持しつつ、装甲材料の進化による大幅な小型軽量化に成功している。各国の戦車の重量が50t~60tオーバーなのに対して10式戦車は全備重量44tと公表されており非常に軽量。

実際にアメリカ合衆国の次世代戦車であるM1E3などは戦略機動性を上げるために大胆な軽量化を計画しているとされ、他にも近年アメリカのM10ブッカーや中国の15式軽戦車といった軽量級戦車が誕生しており、次世代戦車の一部トレンドを先取りしたと言える。

陸自戦車伝統となる車体の姿勢制御は、前後左右に可能。砲身の動作を後押しするだけでなく、射撃の際の反動制御にも応用されているという説もある。

当初は退役を迎える74式戦車を置き換える形で本州九州に配備される予定だったが、後に本州と四国から教育用を除く戦車の全廃が決定したため(代わりに本州四国には16式機動戦闘車が大量配備される)、現在は北海道・九州と、富士教導団等の教育部隊を中心に配備されている。初年度の調達価格は約9.5億円。

スペック

陸上自衛隊第2師団公式HPより引用

性能詳細

防御

軽量さのため防御力を不安視する意見も少なからずあるものの、現代戦車の装甲は重量と防御力が単純に比例するわけではない(ある程度相関はするが)。

日本の素材技術は格段に進歩しており、使用されている高張力鋼は比強度が最低1Gpa以上と著しく高く、同じ性能でアルミ合金よりも軽くすることが可能。これらの技術向上により、対戦車戦闘に十分な防御力を保ちつつ軽量化を可能にしている。

車体正面、砲塔周囲はモジュール式装甲となっており、装甲は簡易な作業で取り外しが可能。装甲を外せば40t程まで軽量化できるらしく、73式特大型セミトレーラ(制限重量40t)で10式が運搬される様子も目撃されている。

装甲の着脱は物入れを兼ねたカバーの内側で行われるため、装甲を取り外しても外観からはそれを判別できない。そのため上記73式特大型セミトレーラで運搬された際も、10式に外見上の変化は見られなかった。

仕様書によれば、爆発反応装甲など更に装甲を追加することも可能なようだが、それでも最大で重量48.1tと、世界水準からすると軽量である。

また、世界情勢の変化やウクライナ侵攻の影響もあり、『装甲戦闘車両のアクティブ防護システム搭載に関する設計検討』と題し、UAVを撃墜するための30mmRWS(遠隔銃座)の搭載や、対戦車ミサイルなどの対戦車弾を命中直前に迎撃して無力化するトロフィーAPSの搭載といった、防護力の大幅向上改修が検討されている。

ちなみに遠隔機銃の採用自体は、61式戦車で搭載例がある。ただし61式のリモコン機銃は、内部から俯仰角や全周旋回の操作が可能だったが、潜望鏡越しに確認して射撃するため命中率は低く、対歩兵用の牽制止まりだった(そのため74式戦車では試験のみ)。

もっとも想定していた相手はソ連軍なので、対人海戦術用の防衛手段と考えれば妥当とも言える。

射撃

日本独自開発の44口径120mm滑腔砲『10式戦車砲』を搭載。同砲はライセンスパーツを使いながらも国産品であり、日本刀にも通ずる優れた鍛造技術により高い耐久性を得ている。

90式戦車にも搭載されたラインメタル社製Rh120 L/44と同等以上の性能であるとされ、これで威力不足となった場合、より長砲身の55口径120mm滑腔砲などに換装することが考慮されている。あるいは過去に本邦で試作された135mm滑腔砲か。

もっとも、長い砲身は重量増加などの問題を招くばかりか、市街地と山地の多い日本では取り回しが悪く、大口径砲も搭載弾数の低下などの問題があるので、44口径120mmも今のところ威力面での問題は取り沙汰されてないので十分だったりするが。

火薬の改良で砲弾威力を向上させた専用の徹甲弾(10式APFSDS)も用意されており、これを10式戦車砲と合わせることで、射距離2kmでの貫徹力はRHA換算で推算548mm。これは90式のRh120 L/44がDM33徹甲弾を使用した場合よりも、100mm近く上回る貫通力と言われる。

旧砲弾との互換性も維持されており、90式と同じ砲弾も使用可能。その逆は無理。90式は10式戦車砲ほどの高い腔圧に耐えられない。しかし、90式を10式と弾薬を共用可能とするための改修が検討されてはいる。

120mm級の戦車砲は50t以上の重量がなければ反動を押さえられないと言われていたが、10式戦車は姿勢制御で反動を吸収することでこの問題を解決している。

姿勢制御を積極活用し、あらゆる局面で砲口を徹底的に安定させている。

砲身にワイングラスを載せてこぼさないように砲塔を回すなんて芸当も可能なほど。その安定性の高さと、後述する高度な射撃管制装置により、蛇行走行しながら射撃しても百発百中という驚異的な射撃精度を実現している。

90式と同じく自動装填装置を搭載し、自動装填による高い連射速度は健在(90式は4秒に1発間隔)。装填手が必要ないことから乗員数も3名となっている。もっとも自動装填の有無は賛否あるが(この点については「主力戦車」の記事を参照)。

射撃管制装置とC4I

10式戦車に搭載されている射撃管制装置(FCS)の性能は世界トップクラスとされ、90式でも行えた行進間射撃はもちろんのこと、スラローム射撃(蛇行行進しながらの射撃)を世界で初めて実現した。そのFCSの高性能さ故に隊員の間では「走るコンピューター」なんて呼ばれることも。

さらに自動的に敵を探知し、データベースから全自動で敵の種類を識別、脅威度を判定するだけでなく、敵の弱点へと照準までしてくれる。自動照準の後は砲手が引き金を引くだけで、さらに射撃後は自動的に撃破判定まで行う。撃破不確実と判断された場合は、砲手に次弾射撃をリコメンドする。

また、探知した敵はC4Iシステムという、敵の位置や種類などの情報、味方からの指示を自動で共有する指揮システムを介して味方に共有される。

10式が戦車小隊(4両の集団)を組んで行動する場合、C4Iシステム経由で得た情報を車内の液晶ディスプレイに表示し、表示された目標を小隊長がタッチパネルを使って小隊各車に振り分けることで、多重撃破(オーバーキル)や同士討ちを避けながら効率よく標的を射撃することが可能となる。

これによって10式は集団での戦闘に強く、いわば10式戦車は集団戦闘に特化した戦車と言えるだろう。

エンジン

伝統の2ストロークを廃し4ストロークV8エンジンを採用。

2ストロークは部品点数が少ない為小型・軽量・高整備性だが燃費に難があり、更に高回転大出力化の壁にぶち当たり4ストロークエンジンに対する利点を次々と失っていき、自動車用小型高速ディーゼルエンジンとしては民生用では既に廃れていた。

燃費が問題だったというよりは、日本国内において自動車用ユニフロー2ストロークディーゼルエンジンの技術開発自体が1979年の日産ディーゼル撤退後、防衛産業以外ではほぼ途絶しており、調達費の下落が見込めないことや将来性がないことが理由としてあげられる。

  • 一応ダイハツディーゼルが続けてはいたが車両としての完成品はなく傍流だった。後にダイハツの親会社であるトヨタとともに小型乗用車・軽自動車用高効率ガソリンエンジンに技術を転じた“D-2”を発表するも製品としては結実せず、この時点で日本における小型高速2ストロークエンジンの命脈が途絶えることが確定した。

もともと主力戦車用エンジンはポジションが微妙で、通常の自動車用よりは遥かに大型の反面、回転数については(装甲戦闘車両以外の)自動車同様に高回転かつ回転数変動が大きい。ガスタービンに移行した国があったのも民生自動車用ディーゼルエンジンの技術流用がほとんど望めないからという背景がある。

戦車用と最も近似した民生用技術は鉄道用ディーゼル機関車用エンジンなのだが、90式開発時は国鉄が赤字体質や労使問題からほとんど技術開発に投資できず、国鉄と防衛以外ではほとんど用途がなく技術開発が停滞していたため、三菱重工が維持している74式戦車の技術の進化系として採用された。

しかし国鉄分割民営化後、ドイツアメリカに遅れていたこの“大型・小型高速ディーゼルエンジン”の分野を埋めるため、ドイツのMTU社やアメリカのカミンズ社から技術導入を図ると同時に、土木重機用ディーゼルエンジンと自動車用ディーゼルエンジンと小型船舶用ディーゼルエンジンの技術を結集して鉄道用ディーゼルエンジン技術の再構築が図られた。機関車用としてはDF200形や、DD51形のB更新工事用のコマツSA12V系エンジンの登場で一応の成果を見た。

元々国鉄は戦前からの4ストローク派であり当然後身であるJR各社にもこれが受け継がれている。また陸自でもコマツ製4ストロークディーゼルエンジンはすでに採用実績がありガラパゴス化した2ストロークディーゼルを維持する必要性はなかった。

整備性についても、自動車用ディーゼルエンジンでは1970年代中盤以降排ガス対策に伴うシリンダーヘッド改設計が繰り返され、さらに1990年代には更なる公害対策のため動弁系やクランクケース周りの設計も一新された結果、4ストロークディーゼルエンジンのほうがむしろ有利となっていた。

ちなみに2ストロークエンジンとして最も身近なデイ式(クランクケース圧縮式)も、この間に1987年に2輪を除いて途絶(最後はSJ30ジムニー)、1999年に2輪からもスズキが撤退して、国内向け自動車用としては途絶することになった。

この為1995年以降の防衛省調達では、技術上の利点を失った自動車用2ストロークディーゼルエンジンの採用は打ち切られ、将来性があり技術転用によってコスト削減が容易とされる4ストロークディーゼルエンジンに交代したのである。

その他

赤外線ステルス機能を意識した設計がなされ、運用時には赤外線遮へい用のゴム製スカートが取り付けられる。

装甲戦闘車両としては珍しく、無段変速トランスミッション(CVT)を搭載。大馬力に対応する無段変速機は近年実用化が進み、アメリカ合衆国のM2ブラッドレー歩兵戦闘車にも採用されているが、戦車への搭載は10式戦車が世界初となる。

よく間違われるがアクティブサスペンションは搭載していないので注意。能動的に姿勢制御はするものの、技術的定義の話をした場合、10式はパッシブサスペンションになる。

90式戦車と同様、乗員用エアコンは装備していない(そもそも要求項目に入っていなかった)が、製造元の三菱重工業の判断により電子機器冷却用エアコンの冷却能力を高めて、多少乗員にも「冷気のおこぼれ」がもらえるようになっているという。もっとも本格的な車室冷却機能はないため「真夏の対NBC(核・生物・化学兵器)戦には耐えられないのでは」との懸念もある。

主な登場作品

試作段階から注目を集めていたこともあり登場作品は多い。

特撮作品では試作車に似た造形の車両も多く登場する。

自衛官の蝶野亜美が使用。C-2改からLAPESによる投下がされた。

コミック『リトルアーミーⅡ』ではベルウォール学園柏葉姉妹戦車道に参加する為に購入したが、規定違反になるため使用されなかった。

実車初登場。東京防衛戦「タバ作戦」にて多数使用された。結果は怪獣映画のお約束の通りであったが、公開後にプラモデルの売上が跳ね上がったそうな。

本車をモデルにしたと思われる「轟雷」が登場。後者は10式戦車とコラボしている。

最後の攻撃命令」で防衛隊の戦車として登場。

地球防衛軍の主力戦車として登場。複数のベゼルブを撃退する活躍を見せた。

漫画版で銀座事件と特地への逆侵攻に投入されている。

アニメ版には登場しないが、1期主題歌MVに『ガッチャマン』で使用された実物大模型が登場している。

番外編『辺境の魔王』にて登場。害獣駆除の国際貢献として派遣され、トーパ王国軍とともに魔王軍と交戦する。

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