概要
化学防護車とは、陸上自衛隊の化学科部隊で運用されている装輪装甲車である。小松製作所が82式指揮通信車(以後CCV)をベースに製作した車両で、各種検知器と空気清浄機などを搭載している。
基礎データ(Wikipediaより抜粋)
全長 | 6.10メートル |
全幅 | 2.48メートル |
全高 | 2.38メートル |
重量 | 14.1トン |
乗員数 | 4名 |
主武装 | 12.7mm重機関銃M2 |
最高速度 | 95km/h |
エンジン | いすゞ 10PBI 4ストロークV型10気筒液冷ディーゼル |
出力 | 305hp/2,700rpm |
行動距離 | 500km |
細かい改修を施した1999年度以降に取得したものは化学防護車(B)として扱われる。
特徴
有毒化学物質や放射線で汚染された地域を偵察することが可能。緊急車両として認められているため、赤色灯とサイレンを搭載している。
除染車3型(B)などと違い、車両本体に防護性能があるため、こちらを操縦する際に個人用防護装備の防護マスクを着用する必要が無い。
車体後部にマニピュレーターを装備しており、これを使用して土壌サンプルを採取したり、汚染されていることを示す目印となる黄色三角旗を投下することができる。しかし、マニピュレーターは細かい作業が苦手な他、マニピュレーター本体の機械的な故障が多く、さらに操作ミスでブレーキランプ等を破壊することもあるので慎重な操作が求められる。
自衛用に車内から遠隔操作可能な12.7mm重機関銃M2を搭載している。様々な化学器材を搭載しているため、原型となったCCVと比べて最高速度は下がってしまっている。
生物兵器に対する検知能力は持たないため、生物兵器で汚染された地域で活動する際は73式大型トラックベースをとした生物偵察車を使用する。生物兵器に対応していない理由として、本車両が制式採用された1987年時点の化学科部隊は放射線及び核兵器と化学兵器にのみ対応する化学防護隊だったためで、生物兵器にも対応した特殊武器防護隊に改変されはじめたのは2000年代に入ってからの話である。
化学科部隊にしか配備されていないため、生産数はかなり少ない。化学科部隊が所属する駐屯地の記念式典等のイベントで行われる装備品展示で公開されている。
ベース車両
ベースとなったCCVとの違いは、各種検知器や車体後部のマニピュレーターの有無等で確認でき、車両後方をみてスッキリしている方がCCV、ごちゃごちゃしている方が化学防護車だと見分けられる。たまにパトランプを上部に付けている車両があれば、それはほぼ確定で化学防護車である。
また、化学防護車は東海村JOC臨界事故の経験から中性子線に対しての防護性能を持つ中性子防護板を状況に合わせて搭載することが可能であり、こちらを取り付けている場合であれば車両前方からも容易に見分けられる
活動実績
オウム真理教による地下鉄サリン事件の際に初めて実戦を経験し、東海村JOC臨界事故の際も現場付近に待機したが活動は行われなかった。
2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響で発生した福島第一原子力発電所事故では中央特殊武器防護隊(通称:中特防)所属車両が派遣された。
後継車両
前述の生物偵察車と本車両を合わせたようなNBC偵察車が存在し、この車両は核(N)、生物兵器(B)、化学兵器(C)の全てに対応しているほか、細かい作業に不向きだったマニピュレーターに代わりゴム手袋が外に飛び出るようになっており、手作業でサンプルを回収するように変更された。
しかしNBC偵察車もまた廃止が決定しており(資料では陳腐化等により重要度が低下したために廃止すると説明)、その後継としてはフィンランド製パトリアAMV装甲車のCBRN対応仕様が充てられる予定。