概要
2016年12月26日からAmazonプライム・ビデオで配信されている、『ウルトラマンオーブ』のスピンオフ作品。30分×全12話。毎週月曜日更新。
本編開始前のオーブの活躍を描いた前日譚であり、いかにしてガイがオーブの力を手にし地球を訪れたのか、そしてジャグラーはなぜガイと袖を分かつ事になったのか、等といった本編で語られることのなかったストーリーが描かれる。
基本的に一話完結式だったオーブ本編とは異なり、『ウルトラマンネクサス』や『ウルトラギャラクシー大怪獣バトル』のような連続式のストーリーとなっている。前半は地球とは異なる惑星カノンを主な舞台とするが地球での動きも描かれ、後半からは本格的に地球が舞台となる(ただしいずれもオーブが元いた宇宙とは別の宇宙である)。
そのストーリーもガイとジャグラー側はRPG風、惑星カノン側は陰謀渦巻く宮廷劇、地球側はサスペンスホラーといった具合に、各サイドごとに雰囲気が大きく変わるのが特徴である。全体的にはシリアス路線で、ドラマパートを重視し戦闘時間は短めな傾向という『ULTRASEVENX』に似た作風である。
さらに『世界を平和にするためにはどうすればいいのか?』という問題提起が作中で行われており、非人道的な手(クグツ)を使ってでも価値観を統一しないと平和にはならないという極論ながら現実的な思想を持つサイキと、多様な価値観を認める世界の実現という理想論の下に動くウルトラ戦士の対立構造に加え、惑星カノンに至っては国土防衛を巡って意見が割れ一枚岩ではない状態、さらに戦う必要はないと思っていても一筋縄では行かない対話と、価値観の衝突や相手を信じる事の難しさが描かれている(ジャグラーの件を含めるなら「どこまで文明への干渉が許されるのか?」という問題もか)。
それ故に小中監督はカタルシスがある1話完結型との勝手の違いに難しさを感じたという。
(出典:『てれびくんデラックス 愛蔵版 ウルトラマンオーブ 完全超全集』・「ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA 監督インタビュー 小中和哉」(小学館)P116より)
また、テレビシリーズとは別班による撮影の為、キャラクターデザインの丸山浩やVFXの日本エフェクトセンター等近年のシリーズに関わっていなかったスタッフが多数参加している。
ラストはテレビシリーズへ直接繋がらないものとなっているが、これはテレビシリーズメイン監督の田口清隆氏が構想した『エピソード10構想』において、本作が『エピソード1』なのに対しテレビシリーズは『エピソード6』に相当するからである。
また後の『ウルトラマンZ』では本作の出来事や結末がZ本編のジャグラーの目的や行動などに影響を与えるなど物語の根幹に関わる要素となっている。
本編未登場の新形態としてオリジン・ザ・ファーストが登場するほか、タイトルのSAGAとかけているのか、ウルトラマンダイナ、ウルトラマンコスモス、そしてウルトラマンガイアとウルトラマンアグルも客演する。
なおプライム配信という権利的な事情と流血など大人向けの内容的な都合の為か、同じプライム作品特撮の『仮面ライダーアマゾンズ』のような地上波放送やYoutubeの円谷公式アカウントでは配信されていない。オーブ特集の『ウルトラマンオーブTHE_CHRONICLE』や上記の通り繋がりがある『Z』放送時も他シリーズのように再放送再編集や応援配信もされなかった。
本配信から7年後、2024年4月1日から円谷公式サブスク『TSUBURAYAIMAGINATION』でようやく他サイトで配信された。
ちなみに、あまり語られていないが、シリーズで初めて青いウルトラマンが2人以上登場したため、初めて青いウルトラマン同士の共演、共闘が描かれた作品でもある。
ストーリー
これは、ウルトラマンオーブ始まりの物語。
遥か銀河の彼方の惑星O-50。その秘境にそびえ立つ「戦士の頂」にたどり着いた二人の青年、ガイとジャグラーは優れた資質を持つ者を見極め「光の戦士」となる力を授けるという眩い光に手を伸ばす。光はガイを選び、聖剣オーブカリバーを手にしたガイはウルトラマンオーブとなった。
ガイとジャグラーは、ドクター・サイキが操る宇宙悪魔ベゼルブの脅威から人々を守るために出発する。王立惑星カノンに襲来したサイキは、戦神の血を引く女王アマテを差し出せと要求する。将軍ライゴウは先制攻撃を主張するが、女王アマテは、近衛隊長シンラにサイキとの対話を命じる。
自らの目的を「争いのない宇宙の創造」だと嘯くサイキ。真の平和の意味を問う若き光の戦士・ガイ。全宇宙をかけたファースト・ミッションがいま始まるー。
登場キャラクター
太字は初登場の形態・キャラクター
ウルトラ戦士
怪獣・宇宙人
メカニック
用語
遥か銀河の彼方にあるという宇宙の秘境。そこにある「戦士の頂」に聖剣オーブカリバーが眠っている。
今作の主な舞台となる惑星。アマテ女王が収める平和な惑星で、惑星の全ての命を生み出した「命の樹木」という巨大な木が生えている。地球から7万光年離れた場所に位置し、科学技術が発展した星でありながら、古代日本を思わせる文化が根付いていて、武装は刀や旧式の銃といった前時代的な物を使っている。
王族は有事の際に民を守る事を義務としており、アマテも戦神に変身する能力を有してはいるものの、民には自衛の意識が芽生えず、王族に依存してしまっている。
上層部も穏健派である近衛隊長シンラ派とタカ派である将軍ライゴウ派に分かれており、シンラが物語途中でアマテ暗殺容疑を掛けられてしまうが、民を守りたいという志は同じであり、最終決戦で共に手を取り合った。
『ウルトラギャラクシーファイト大いなる陰謀』でも舞台の1つとして登場しているが、こちらはギャラクシーフォースボイスドラマによればM78ワールドに存在する別の惑星カノンである模様。
『ウルトラマンZ超全集』収録の小説『ジャの道は蛇』では本作から数世紀後のカノンが舞台となる。星間連盟に加盟し王政から連盟の執政官による統治に移行。様変わりした都市惑星へと変貌している。
『てれびくんデラックス 愛蔵版 ウルトラマンオーブ 完全超全集』・「ウルトラマンオーブ THE ORIGIN SAGA 監督インタビュー 小中和哉」(小学館)P116によると企画段階での名称は「ドワード」とされる。
クグツ
サイキが生み出した毒。生物の意識を奪って操ることが出来るほか、怪獣に使用することでクグツ怪獣にすることができる。
戦神
惑星カノンの女王に代々流れる王家の血によって変身する巨人。かつてアマテ女王の母が変身し、ガーゴルゴンと相打ちになった。
命の木
惑星カノンのシンボルである巨大な樹木。カノンの神話では、この樹の実が宇宙に知恵を与え、樹を守る者と滅ぼす者を生み出したとされている。
惑星カノンに生えていた物はジャグラーによって切り倒されたが、地球に存在していた種が発芽。急速に成長を遂げるが、インフラの破壊を招いた為、防衛軍が出動する事態になってしまう。
また、劇中では北欧神話の世界樹ユグドラシルとの関係性が指摘されたが、詳しい詳細は明らかにならなかった。
海底遺跡
地球の海底4000mの日本海溝にある古代遺跡。祥平はここで巨大な種を発見し、それに接触したことでアマテ女王と同調してしまった。
天河生物研究センター
翔平らが働いている研究施設であり、命の木が運び込まれて発芽を始めた。
センター長は青井洋介(演:ミスターちん)。
惑星ザイン
サイキが拠点にしている惑星。無数のベゼルブが待機している。
惑星ルーリン
ガイがオーブとして初めて戦った砂の惑星。
ミッションの途中にガイとジャグラーが立ち寄った。現地民のモークス少年(演:松浦理仁)は助けられたものの、両親(演:蛯沢康仁/桜木梨奈)が死亡するという苦い結果に終わった。
現地民は全て赤いゴーグルを着けているのが特徴。
キャスト
- ガイ:石黒英雄
- ジャグラスジャグラー:青柳尊哉
- アスカ・シン:つるの剛士
- 春野ムサシ:杉浦太陽
- 高山我夢:吉岡毅志
- 藤宮博也:高野八誠
- アマテ:福田沙紀
- シンラ:前川泰之
- ライゴウ:榎木孝明
- ミコット:文音
- リッカ:渋谷飛鳥
- 森脇翔平:古原靖久
- 西岡結衣:宮崎香蓮
- ドクター・サイキ:和泉元彌
- パーテルの声:飯田里穂
また、月刊ヒーローズで漫画『ULTRAMAN』を連載している清水栄一氏と下口智裕氏のコンビがカメオ出演しており、これがきっかけで後に石黒氏は『ULTRAMAN』第9巻に推薦文を寄稿している。
スタッフ
主題歌
オープニング
『ULTRAMANORB』
(第1話~第7話)
作詞:麻倉真琴 / 作曲・編曲:浅倉大介 / 歌:浅倉大介、つるの剛士
『True Fighter』
(第8話~)
作詞:櫻井沙羅 / 作曲・編曲:Jeff Miyahara / 歌:FUTURE BOYZ
エンディング
『Ultraman Orb - Touch the Sun-』
(第1話~第7話)
作詞・作曲・編曲・歌:シライシ紗トリ
『星たちの奇跡』
(第8話~)
作詞・作曲・編曲:Wolves Unite / 歌:ボイジャー
各話リスト
サブタイ名は「大和言葉」から取られており、漢字表記+ルビで統一されている。
話数 | サブタイトル | 登場怪獣 | 脚本 | *監督 | 配信開始日 |
---|---|---|---|---|---|
惑星カノン篇 | |||||
episode:1 | きらぼし~煌星~ | ベゼルブ、クイーンベゼルブ、クグツアーストロン、クグツキングゲスラ | 小林弘利 | 小中和哉 | 12月26日 |
episode:2 | えにし~所縁~ | ベゼルブ、クイーンベゼルブ、クグツベムスター、ガーゴルゴン、戦神 | 小林弘利 | 小中和哉 | 1月2日 |
episode:3 | こだま~谺~ | ベゼルブ、クグツバードン、ボルギルス、リドリアス | 小林弘利 | 小中和哉 | 1月9日 |
episode:4 | あととむ~跡求~ | ベゼルブ、クイーンベゼルブ、クグツバードン | 林壮太郎 | おかひでき | 1月16日 |
episode:5 | あかつき~暁~ | ベゼルブ、クグツベロクロン、クグツバキシム、戦神 | 林壮太郎 | おかひでき | 1月23日 |
episode:6 | いくさがみ~戦神~ | クイーンベゼルブ、クグツベロクロン、クグツバキシム、戦神 | 林壮太郎 | おかひでき | 1月30日 |
episode:7 | くるる~眩る~ | ベゼルブ、クイーンベゼルブ、クグツベロクロン、クグツバキシム、戦神、ジャグラスジャグラー(アーリースタイル) | 小林弘利 | 小中和哉 | 2月6日 |
地球篇 | |||||
episode:8 | ひびき~響~ | ベゼルブ | 黒沢久子 | 小中和哉 | 2月13日 |
episode:9 | ことわり~理~ | クグツバードン、クグツベムスター | 黒沢久子 | おかひでき | 2月20日 |
episode:10 | はなあらし~花嵐~ | 戦神、ガーゴルゴン | 林壮太郎 | おかひでき | 2月27日 |
episode:11 | かげろう~陽炎~ | 戦神、クイーンベゼルブ、サイクイーン | 林壮太郎 | 小中和哉 | 3月6日 |
episode:12 | まほろば~新世界~ | 戦神、サイクイーン、クグツアーストロン、クグツバキシム | 小林弘利 | 小中和哉 | 3月13日 |
評価
販促描写が一切なく、低年齢層をターゲットにしているとは言い難いその独特な内容は賛否両論となっており、「つまらないわけでもないしスピンオフ作品としての質は高いが、何か決定打に欠けている。」といった評価もある。再生回数も期待以上とはならなかったようで、映像ソフト化やテレビ放送の目途も立っていないとの見方もあったが、無事にBD/DVD化がされる事になったため、ある程度の成果は出せた模様。
その結果か否か本作のようなスタイルの外伝作品は現時点では製作されなくなっているが、「TV作品放映開始後にネットで配信される前日譚となるシリーズ」自体はYoutube配信の「ウルトラギャラクシーファイト」シリーズやTSUBURAYAIMAGINATION配信の「ナースデッセイ開発秘話」に引き継がれている。
関連動画
関連タグ
ウルトラマンオーブ 価値観 日本文化:惑星カノンやサブタイトルに盛り込まれている。
ウルトラマンZ...本作を踏まえた描写や設定が登場する。