ようこそ、O5-13。
概要
SCP-001における提言のひとつ。サブタイトルは『死を想え(メメント・モリ)』
超噛み砕いて説明すると、サイト-01内に存在する13箇所の異常性を持った場所、領域の総称である。
メタな話になるが、この作品はO5-13が報告書を読んでいる、という設定と目線で書かれている。
それぞれの異常領域はO5達に関連している。そしてこの世界線では13以外のO5は全員死亡している。
SCP-001-01
一つ目の異常領域。18世紀初頭から20世紀後半までの歴史的遺物が残されている保管庫、『ブリッジ・アーカイブ』。
これらの歴史的遺物に触れた者はそのオブジェクトと関連する幻視を体験する。
O5-1は歴史に夢中だった。ヨーロッパの戦争由来の遺物を大量に集めていた。
冷戦時代、財団が中立的な立場を保てたのは彼のお陰だった。
しかし、中立とは永遠に保てるものではない。
インサージェンシーによる反乱がそれを証明した。
彼は死んだ。その生き様と同じように。
我々の未来と過去を『アーカイブ化』しようとしていたように、歴史のなかに沈み込んでいった。
SCP-001-02
二つ目の異常領域。モニターとテレビが壁に設置された、誰かの寝室。
電源がなくともこれらのモニターは永遠に作動し続けており、常に何かしらの情報を映し出している。
O5-2は断片的な複数の情報から一つの結果を脳内で導き出すというとてつもない才能があった。
彼はその才能を生かしO5の一員として活躍した。しかし落とし穴に嵌った。
偏執的になった。自分は何か完了できていない仕事があると思い込むようになった。
非常に少ない人員の喪失でさえも自分の責任であると抱え込むようになった
彼は全てを知っていなくてはならなかった。人間にはそんな事不可能だというのに。
彼は若くして死んだ。管理者が見つけた時には彼は弱々しくうずくまり、宝くじの抽選中継画面を見つめていた。
SCP-001-03
三つ目の異常領域。たくさんの工具や機械が保管されている工房。
ここにあるもので作られた物品は性能が異常に強化される。
O5-3は何かを開発する天才だった。
さまざまな装置を開発し財団に貢献してくれた。
しかし一つ難があるとすれば、仕事以外では全く人と関わらない事だった。
そのため彼の最期は分からず仕舞いだ。
自分の工房に行ったきり帰ってこなかった。
SCP-001-04
四つ目の異常領域。多種多様な文書や書籍が収蔵されている私用図書館。
ここにある本は全て異常現象に関する情報が記載されている。
O5-4は珍しく蛇の手から離反して財団に入った人間だ。
彼女は魔法や異常能力の分野において膨大な知識を持っており、それらを無力化する方法も知っていた。
何があったのかは知らないが、彼女は蛇の手を決して許さなかった。
奴等を破滅させることの歓びに匹敵するのは『知識』だけだった。
結局のところ、それが彼女に止めを刺した。
図書館は、財団に味方した時点で彼女を見限ったのだ。
彼女は図書館の『知識』を再び得るため、最終的には全てを手放した。
SCP-001-05
五つ目の異常領域。異常特性を持った植物が生育している巨大な温室。
ここにある植物はすでに絶滅しており、尚且つ記録に残されていない植物が復元されたもの。
妖精族という種族がいた。
妖精族にとって財団は怨敵とも呼べる存在だった。
O5-5は妖精族と財団エージェントの間に生まれた半妖精だ。
彼女は父親と同じ財団に就職し、速やかに出世した。
しかし彼女は常に悩まされていた。同族の怨敵の団体に属し、さらにそれを動かす立場にいることを。
あの温室は彼女にとって大切な場所だった。だからこそ彼女はそこに銃を持ち込み、引き金を引いたのだろう。
その行為は、彼女にとって贖罪のようなものだったのかもしれない。
SCP-001-06
六つ目の異常領域。中東地域の伝統的な家屋の内装をした寝室。
ここにある物に触れるとテーブルの上の水タバコから煙が放出される。これを吸い込んだ人は幻覚を見る。
O5-6は中東地域の生まれだ。
中東地域には財団に協力的な者は少なかっため、彼がヘッドハンティングされた。
彼はORIAにスパイとして潜入し、誤情報を流した。
しかし財団が情勢を安定させられず、ORIAが覇権を築くこともなかった今の中東を見て何が言えるだろうか。
彼は自分の間違いに気付き、それを正そうとした。我々はそれを止めた。
彼は肝臓が動かなくなるまで飲み、その後も少し飲み続けた。
SCP-001-07
七つ目の異常領域。木製のあずまや。
ここを通り抜けた者は結婚式または葬式が行われている異常空間に転移する。
O5-7は才能に溢れた人物だった。
彼女と13は愛し合っていた。二人は結婚した。とても幸せそうだった。
彼女は惜しみなく愛を注いだ。しかし出産の時に死んだ。
子供がどうなったかはわからない。一つ言えることは、その時から13は変わってしまったということだけだ。
SCP-001-08
タイムマシン(だと思われる)大型装置。
すでに機能が全て停止している。
O5-8は未来人だ。
タイムマシンを使って来たらしい。彼の技術のお陰で財団は大きな進歩を遂げた。
しかし未来人であるという事は大事な同僚達の『最期』も知っている。
彼はそのうちその『最期』に耐えられなくなった。
彼はよく遺影の写真を見つめていた。写真に誰が写っているのかは分からないが、察することはできる。
彼はもっと幸福な『最期』を迎えて然るべき人物だった。
SCP-001-09
薬が入った瓶が大量に保管されている薬棚。
薬を服用した人間は健康面に関して有益な効果を得ることができる。
O5-9は評議会の中で最高齢だった。
彼は生きるために薬が必須となっていた。
財団は彼に生きてもらうためにヘルスケアを行った。
彼はその行為を快く思わなかったのかもしれない。
一人で丘へ行き、日の出を見た。そして酸素供給のスイッチを自ら切った。
誰かがそこに行く前に遺体は冷えていた。
SCP-001-10
大型の犬用ベッド。中には犬のオモチャや革紐、ビーカーなどがある。
これらに触れた者は、サイト-01の池の側に転移する。
O5-10はとても賢かった。犬だが。
むしろ犬の体に変わってしまってからのほうが賢かったような気もする。
だが賢くても犬は犬。人間より寿命が少ないのだ。
彼は池の側に行き、ここでやってくれと頼んだ。
注射が痛くなかったと信じたい。
SCP-001-11
あらゆる銃器や武器が並べられている小規模な武器庫。
武器に触れた者は体のどこかに傷跡が出現する。離すと消える。
O5-11は評議会のような仕事を望まなかった。エージェントととしてのフィールド任務を望んでいた。
それでも彼は引き受けた。そうするべきだと感じたからなのだろう。
彼はとても有能で、素晴らしい人材だった。
ある時、とあるサイトに評議会は健在であるということを示すためにそこに赴いた。
しかし、ボディーガードの一人は暗殺者だった。
彼は何とか暗殺者を返り討ちにして殺した。
そして失血死した。
彼にとっては望み通りの最期だったかもしれない。
SCP-001-12
オフィスにあるバーカート。内容物は決して枯渇しない。
しかし、取り出すと別の物質に変化する。
O5-12は文字通り狂人だった。
インサージェンシーに攻撃されたとき、そういった人材を求めていた。
彼にとって、評議会での日々は退屈だった。
性格が丸くなっていったが、彼の過去の行いをそう易々と忘れられるものではない。
彼はどこかへ喧嘩沙汰を探しに出かけ、それを見つけた。そのまま死んだ。
▶補遺を開く◀
SCP-001-13
13基の墓石が並んでいる墓地。それぞれ文字が刻まれている。
01. ジャンゴ・ブリッジ、此処に眠る。最後までアーキビストだった者。
02. デイヴィッド・ローゼン、此処に眠る。遂にその訪れを予期できなかった者。
03. エヴァレット・マン、此処に眠る。幸せ以外は何でも作れた者。空の墓。
04. ティルダ・ムース、此処に眠る。自分が何を持っているか、手放すまで知らなかった者。取り返そうとして死す。
05. チェルシー・エリオット、旧姓グラシュティグ、此処に眠る。二つの世界に足を乗せ、どちらにも根付かなかった者。
06. アリ・イブン=ビジャン、此処に眠る。同郷の民を裏切った者。罪悪感で死す。
07. アガサ・ライツ、此処に眠る。私が愛した唯一人の者。
08. タデウス・シャンク、此処に眠る。今日の我々を助けるために明日から来た者。後に残したものを決して忘れなかった。
09. ジーン・アクタス、此処に眠る。過去の遺物だったが、それを自覚していた。
10. ケイン・パトス・クロウ、此処に眠る。彼は良い子だった。
11. トロイ・ラメント、此処に眠る。私が今までに知る最良の者。
12. アルト・クレフ、此処に眠る。地獄で朽ちてゆくがいい。
13. MEMENTO MORI