概要
新潮社の雑誌『小説新潮』に、1950年(昭和25年)10月号から1952年(昭和27年)8月号まで連載された。全20話。連載時の題名は「帖」のつかない「明治開化 安吾捕物」であったが、単行本化に際して改題された。
「捕物帖」という題名であるが、舞台となる時代は江戸時代ではなく明治時代中期である(第1話「舞踏会殺人事件」では「明治十八九年」、つまり1885年 - 1886年と明言されている)。
紳士探偵の結城新十郎が難事件を次々と解決する、という筋書きであるが、勝海舟が、いつも推理を外してしまう「トンマな探偵」の役割で登場する、という点が大きな特徴となっている。
主要人物
紳士探偵。東京・神楽坂在住。右隣に泉山虎之介、左隣に花廼屋因果が住んでいる。旗本の家系で、父親は徳川家重臣の一人。洋行帰りの美男子であり、優れた推理能力を持つ。警視庁から探偵長に迎えたいと言われたが、役所勤めを嫌って断り、警視庁雇という身分で活動している。独身。
「探偵とは正義のために戦うことを務めとし、いかなる人々の秘密をも身命にかえて守ることを誇りと致す者です」(第19話「乞食男爵」)という信条の持ち主で、世間では「名利にうとく、ただ正義を愛するために犯罪を解く人」(第14話「ロッテナム美人術」)として知られている。また人情家でもあり、事情によっては、犯人がわかっていてもわざと見逃すこともある。
勝海舟
東京・氷川の邸宅に隠居している。弟子の虎之介から新十郎が捜査している事件についての報告を聞き、安楽椅子探偵として自らの推理を披露するが、ほとんどの場合は外してしまう。
剣術使い。勝海舟門下で、海舟が官職について多忙になってからは山岡鉄舟に預けられた。神楽坂で道場を開いているがあまり流行っておらず、そのかたわら、警視庁雇として巡査に剣術を教えている。着流しを着ており図体が大きい。
探偵癖があり、隣の結城新十郎のもとに事件が持ち込まれると、頼まれてもいないのに首を突っ込んでくるため、新十郎からは押しかけ助手扱いされている。
戯作者。元は薩摩藩士で、鳥羽伏見の戦争や上野寛永寺の戦いでは鉄砲組の小隊長として戦ったが、維新後は戯作者に転向し、人気作家となっている。「田舎通人、神仏混合、花廼屋因果」と呼ばれており、自分でもそう名乗っている。気取り屋で、常に洋装でハットをかぶり、ステッキを手に持って巻タバコを咥えている。
虎之介に輪をかけた探偵癖の持ち主で、隣の新十郎のもとに事件が持ち込まれると、頼まれてもいないのに首を突っ込む。そのため、新十郎からは虎之介ともども押しかけ助手として扱われている。
映像化作品
テレビドラマ(1973年)
『新十郎捕物帖・快刀乱麻』(しんじゅうろうとりものちょう かいとうらんま)と題してテレビドラマ化され、朝日放送(ABC)制作によりTBS系にて1973年10月4日から1974年3月28日まで毎週木曜の21時から21時55分(JST)に全26回で放映された。
テレビドラマ(2020年)
『明治開化 新十郎探偵帖』(めいじかいか しんじゅうろうたんていちょう)と題してテレビドラマ化され、NHK BSプレミアム「BS時代劇」枠にて2020年12月11日から2021年2月5日まで全8回で放送された。主演は福士蒼汰。
テレビアニメ
『UN-GO』(アンゴ)と題し、本作を「原案」として舞台設定を近未来にするなどの大幅なアレンジを加えてテレビアニメ化され、フジテレビ系「ノイタミナ」枠にて2011年10月13日から12月22日まで全11話で放送された。