概要
『指輪物語(The Lord of the Rings)』は現在までに3回映像化されているが(2013年6月1日時点)。通常、「映画の~」と言った場合には、2001年から3部作構成で順次公開されていった、ピーター・ジャクソン監督総指揮の物を指す。
- 『ロード・オブ・ザ・リング/旅の仲間(The Lord of the Rings: The Fellowship of the Ring)』
- 『ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔(The Lord of the Rings: The Two Towers)』
- 『ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(The Lord of the Rings: The Return of the King)』
第1部は2001年12月に公開。その後はほぼ1年置きに、第2部は2002年12月に、第3部は2003年12月に公開された。尚、第1部の副題である『旅の仲間』は元々の映画の原題の直訳ではない。本来は“The Fellowship of the Ring”であるので「指輪の仲間」と訳すべきであるが、日本では慣例的に文庫小説版の副題である『旅の仲間』をそのまま当てて用いる事が主である。
大胆な演出とエピソードのカット
概ね原作小説を忠実に踏襲する形となっているが、小説の方でかなりのページを割いて描写されているエルフ族の古典民謡や、ドワーフ族の伝説などは全カット。さらには小説単行本のほぼ半分を使って記述されていたエルフたちとアラゴルン(人間族)の指輪の処遇を巡る会議のシーンは、フロドの困惑する表情のアップ30秒に圧縮演出されるなど、かなり大胆な演出が施されている箇所も多い。また原作小説版とは事件の起きる時系列が一部、入れ替わっている場面もある(フロドが大蜘蛛に襲われるシーンなど)。
さらには物語を語る上でかなり重要な位置を占め、個別に『トム・ボンバディルの冒険』というスピンオフ作品まであるほどのキャラクターでもある、“謎の老人トム・ボンバディル”のエピソードも丸々カットとなっている(ジャクソン本人が「好きなエピソードだが娯楽性を高めるために泣く泣く切った」と後に語っている)。この他にも作中で重要な役割を与えられていた“茶色の魔術師”も、第2部の冒頭部分のシーンで数秒ほど遠景に登場するのみとなった(彼の絡んだエピソードも他者が行った事になっている)。
これらの演出には批判の声もあるが、多くの原作ファンや、映画で初めて『指輪物語』を知った新規ファンには、ファンタジー映画として親しみやすいと好印象を持って迎えられている。この事は前述の通り、原作小説の方がお世辞にも誰でも楽しめる作品にはなっていないと言う事も影響している。
キャラクターの改変
ジャクソンは自他共に認める生粋の「指輪フリークス」であったが、映画化に当たっては原作に登場する一部の重要キャラクターの改変を行っている。
有名な物では、フロドに付きまとい指輪に魅了された存在である“ゴクリ”の名前が、映画版では“ゴラム(Gollum)”となっている。これは日本語版のみ起こる物であり、元々の英語原文での表記は“Gollum(ゴラム)”である。これは「ゴクリ」とは名前ではなく、彼が吃音が酷く、話す時には常に「ゴクリ、ゴクリ」と唾を飲み込みながら喋る様から付いたあだ名である。日本語の音韻では飲み込む擬音は「ゴクリ」であるが、英語表現では“Gollum(ゴラム)”となる。前評判の高い大作映画ということで、一般的な人名っぽい響きのある英語版の名前をそのまま日本語版に当てた結果である。
他にも作品を代表するキャラクターである“バルログ”の登場シーンもかなり短くまとめられており、原作小説ではかなりの見せ場となっていた、バルログとガンダルフの対決シーンも回想シーンで流されるなど、従来のファンタジー映画の概念から考えれば非常に斬新な演出となっている。ただし後にジャクソンは「ガンダルフの指先から火花を放つ様な事はしたくなかった」と語る様に、時間的には短いが、それ故に作品中でも屈指の名シーンとなっている。