概要
ステルスマーケティングとは、英語の 「Stealth」(隠れる、こっそりする、隠密)に由来する。消費者のクチコミの中に広告を混入させることで、消費者の嗜好や意見をコントロールすることができる。
伝統的な言い回しでは「サクラ」「やらせ」などに相当する。消費者意識の高い先進諸国では法規制されている。
対義語は「あからさマーケティング」。呼ばれ始めたのは2010年からだが、現状ではネット上で一部の人だけが使うスラングにすぎない。
ステマの問題点
ステルスマーケティングは消費者の判断を誤らせる。通常の広告であれば、消費者はそれが広告であることを差し引いて広告内容を吟味できる。しかしステルスマーケティングが行われた場合、消費者の持つそうした判断基準は奪われる。
またステルスマーケティングが行われた場合、一般的な広告と違い、企業は広告倫理に基づく責任から一時的に逃れることが出来る。そのため製品の品質に関わる嘘や、競合製品への過小評価が広告に混入される場合もある。
ステマの事例
- グルメサイトでの投稿レビューに業者が介入していた事件
- 架空の評論家による評論記事への告発
- フェイスブック、いいね数の水増し工作など
- ゲームファンサイトとマーケティング会社の繋がりの発覚
事件の発覚により、ステルスマーケティングを行ったウェブサイトに対する信頼は、そのまま強い疑念へと転じた。ステルスマーケティングの発覚により、消費者を詐く広告手法に対する、個々人のメディアリテラシーの重要性が浮き彫りになった。
ステマのリスク
企業がステルスマーケティングに手を染め、それが発覚した場合、消費者による抗議が予想される。ステルスマーケティングではない好意的なクチコミすらも、ステルスマーケティングではないかと疑われ、企業の、ひいては業界への不信へと繋がる。
またステルスマーケティング業者を利用した場合 “ステルスマーケティングに手を染めている”という、企業にとっての致命的な情報を外部業者に握らせる事もなってしまう。
企業がステルスマーケティングを行った場合、その内容が虚偽でなくても、景品表示法によって告発される場合がある。ステマを信じて購入した消費者は、その商品が期待通りの性能でなかったことを理由として、賠償を請求する事もできる。
消費者の心構え
発覚前のステマ
消費者が発覚前のステルスマーケティングに抗う手段は無い。
しかしステルスマーケティングに付随して、情報に混入された嘘などについては、情報源を十分に選別することで、ある程度はその被害を避けることが出来る。メディアリテラシーを育むことが、ステルスマーケティング対策につながる。
ステマに対する抑止力
消費者がステルスマーケティングを見分ける手段は無いが、それを抑止する方法はある。
ステルスマーケティングが発覚した場合は、ステルスマーケティングによる広告効果を上回る、不買運動や抗議を行うことで、その後のステルスマーケティングを抑止できる。いくら消費者が抗議をしても、ステルスマーケティングによる広告効果の方が上ならば、ステルスマーケティングは抑止されない。
ステマに関するインターネットマナー
以下についてはステマとは呼ばない。
- 金銭の絡まない消費者による批評や応援
- 広告であることを明示した記事
これらを踏まえず「ステマ」と叫べば、もれなく「ステマ連呼厨」の称号をゲットすることができる。
もちろん前者に関してはステルスマーケティングの可能性も考えられるが、憶測に基づく安易なステマ認定は避けるべきである。あくまで疑惑は疑惑でしかない。
ステマに携わる製品の扱い
ステルスマーケティングの問題点は、消費者を騙す宣伝手法にある。
抗議や不買運動が必要となる場合もあるが、それに乗じて製品を過小に評価すれば、それもまたステマと同じ歪な情報となる。製品に対する評価と、卑劣な営業行為に対する評価を混同すべきではない。
景品表示法
2012年、消費者庁は「インターネット消費者取引に係る広告表示に関する景品表示法上の問題点及び留意事項」を改定した。
要約すると、事業者がステルスマーケティングを業者に依頼した場合、景品表示法違反になる可能性があるというものだ。景品表示法に抵触するか否かは個別に判断される。