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ゲパルト

げぱると

レオパルド1戦車の車体に、35mm機関砲2門とレーダー2基を備える砲塔を組み合わせたドイツの対空戦車。1965年から開発され、1973年より配備が始まった。ドイツ以外にもオランダやベルギー、ルーマニアで採用された。本国では2010年に全車が退役している。
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登場~冷戦終結

ゲパルトの登場

1950年代初期にアメリカで開発されたM42ダスター自走高射砲は、試作段階でレーダー照準器の搭載が試みられたものの、当時の技術力の限界からレーダー照準器搭載は見送られ、照準はもっぱら目視に頼っていた。しかし、その事もあって超音速ジェット機への対抗には疑問があったようだ(目標が速すぎて射撃が追いつかない)。


そこで求められたのが「レーダーと射撃コンピュータを備え、正確無比な射撃が可能な対空戦車」である。このゲパルトでは目標捜索用レーダー(砲塔後ろ)と追尾・照準レーダー(砲塔前)と二つのレーダーを備え、ZSU-23-4では不可能だった「射撃しながら次の目標を探す」といった使い方が可能になった。


主砲にも当時最新鋭の35mm機銃エリコンKDAを採用しており、この射程距離は初期の対戦車ミサイルの射程をも上回っていた。生み出される弾幕も濃厚そのもので、この弾幕を突っ切る時は良くても被弾は覚悟しなけらばならない。


照準はレーダー照準なので、悪天候・夜間といった視界の利かない時でも有効、さらに35mm機銃は1発の威力も高いので、命中は即致命傷を意味していた。ゲパルトの脅威は戦車部隊の安全を確保し、思う存分に活躍させるための立役者だったのである。


冷戦終結

第二次世界大戦のように戦車部隊に随伴し、空襲に対応するためのゲパルトだったのだが、必要とされるときはとうとう訪れなかった。冷戦が終結し、ソビエトが大戦車軍団を率いて侵攻してくる恐れは無くなってしまったのだ・・・この時点では。


こうして陸軍戦車部隊からあぶれてしまうゲパルトだったが、それでも「攻撃機はもちろん、戦闘ヘリにも重大な脅威である」との意見は強かった。しかし兵器の発展は目覚しく、当初こそミサイルの射程を上回っていた30mmKDAも、次第に見劣りするようになってしまった。


そこで開発されたのが、歩兵用対空ミサイルFIM-92「スティンガー」を追加する増加装備である。これは射程こそ約5kmと大差ないが、撃ったら直進するだけの砲弾と違って自分で敵に方向転換することができる。つまり長距離になればなるほど有効な攻撃手段というわけで、ゲパルトによる対空防御力はより高くなっている。


ゲパルトの現在

そして現在へ

ドイツでは資金難により、脅威度の低い対空戦車部隊は解隊されている。

またレーダーを2基装備し、これが意外に高価な事や、思ったほど軽量・小型に仕上がらない事も短所である。


いまや対空機銃の射程より、ミサイルの射程のほうが長いことも対空戦車の有効性に疑問を持たせる要因になっている。このゲパルトで分かっているように守備範囲はせいぜい5kmであり、対して現在の対戦車ミサイルの射程は9kmにもおよぶ(AGM-114Lの場合)。


複雑・高価で、さらに有効性にも疑問の余地アリというわけで、現在この手の車両は新規開発そのものも低調なのである。


ロシアのウクライナ侵攻で初の実戦へ

こうしてドイツのゲパルトは保管状態となり、このまま消えていくかに思われた。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻により、ドイツからゲパルトがウクライナへ供与される事となった。


ゲパルトその物は約50年前の設計であり、上記にあるように現代の戦場に対応できるか疑問視されていた。更に弾薬関係の問題も重なり、その先行きも不安視された。当時はドイツがウクライナ支援に及び腰だったことから「重装備供与という実績作りのため、ロシアの脅威にならない役立たずの骨董品をウクライナに押し付けている」という批判まであった。


・・・ところが。


ウクライナへ送られたゲパルトは、その予想に反し大活躍した。

戦場では地対空ミサイルによる防空網が形成され、航空機が自由に飛び回れず、地上への攻撃も低空飛行を余儀なくされた。また、巡航ミサイルや自爆ドローンが多数飛来し、市街地を攻撃していた。

ゲパルトはそれらの迎撃に参加し、多数を撃墜したとされる(後に映像も確認されるようになった)。

様々な要因が重なり、戦場が当初想定された状態に近くなった事で、結果的にゲパルトが半世紀ぶりに日の目を見る事となったのである。


ゲパルトを運用するウクライナ軍からの評価も極めて高く、その後もドイツは国内外の車両をかき集めて追加供与している。前述の弾薬問題の解決のためゲパルトの弾薬の工場が新設されており、他の装備で代替できない評価の高さがうかがえる。 現在は上述の工場で生産された弾薬が供給されている。因みに当時の35㎜弾を再生産したのではなく、別の35㎜弾が使用可能なように、ゲパルトの射撃コンピューターに適合させたとのこと。

さらには空対地ミサイルを搭載するロシア軍ヘリに対抗するため、ゲパルトにMANPADS(携帯式防空ミサイルシステム)を搭載させレーダーシステムと連動させる改装まで報じられている。


戦争終結の日までゲパルトの戦いは続いていくと思われる。


関連タグ

A-10・ゲパルトと同じく、冷戦終結でお役御免になるはずだったが、その後大活躍したアメリカの攻撃機。

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