一航戦とは「第一航空戦隊」の略称である。
概要
史実においては赤城や加賀、鳳翔を中核に編成され、後に龍驤が竣工に伴い編入されている。鳳翔は昭和13年編成で第一航空戦隊から外れ、のちに第三航空戦隊へ配備された。また、龍驤も編成替えで太平洋戦争開戦時は第四航空戦隊に所属している。
太平洋戦争開戦時は赤城・加賀ととんぼ釣りの第7駆逐隊(曙、潮、漣)でもって編成されていた。
日中戦争にも参加していた為、実戦経験が豊富で乗員の練度も非常に高かったが、そのプライドと驕りから練度の劣る第五航空戦隊の実力を見下すような事さえあったという。
セイロン沖海戦で赤城が(トラブルで投下不能となった一機を除いて)爆弾を16発全弾目標に命中させる(当時、爆撃の命中率は25%程度というのが世界水準であった)といった神業を見せていた事から当然のように思えるのだが、同海戦では五航戦も翔鶴が二航戦の飛龍と同率で7割、瑞鶴が赤城に次ぐ9割超の命中率を叩き出している。ちなみに同海戦に加賀は参加していないため記録はない。
しかし、「五航戦を見下していたのは司令部であり、むしろ現場のパイロット達の仲は良好だった」とする資料もある。
どちらが真実であったのかは一概には言えないであろうし、「見下していた者もいれば、仲良くしていた者もいた」と考えるのが現実的であろう。
『艦隊これくしょん』の一航戦
ゲームにおいては赤城と加賀が当該戦隊について頻繁に言及している。
両者の服装に関しては、赤城が赤と白を、加賀が青と黒を基調としており、袴がミニスカート仕様であることを除けば、一般的な弓道着のそれである。(どう見ても、コスプレにしか見えないが…)
また、互いに色調が真逆であることから、格闘ゲームで言う赤城が1pカラー・加賀が2pカラーのようにも表せる。
そして何より、史実において、両者は第一航空戦隊主力艦の双璧を成していたことから、2人を王道的な相棒関係として見る向きがある。
その為、高頻度で赤城・加賀の組み合わせになり、彼女達の二人を相棒・親友・ライバル・コンビとして表す場合に使うファンがほとんどである。
なお、勘違いされがちであるが、赤城は天城型2番艦の巡洋戦艦、加賀は加賀型1番艦の戦艦をそれぞれ改装したものであり、姉妹艦の関係ではない。
ゲーム中での性能に関しては元々戦艦(巡洋戦艦)として設計されていたという事もあって、共に「軽空母一隻分の搭載数に匹敵する第三装備スロットを有する」というのが最大の特徴となる。
ここに強力な艦上戦闘機を配置するだけで、制空権で不利な状況に陥る事はまずなくなると言っても良いほど、制空権争いでのアドバンテージが大きい。
また、第一・第二スロットも共に十分以上の搭載数を持ち、艦載機の攻撃力に影響する火力も高い為、艦載機運用に関しては攻防共に隙がない。
一隻だけでも十分だが、二隻とも配備すると、制空権を確保できない方がむしろ珍しくなるだろう。
その為、制空権確保が極めて重要となる艦上攻撃機の運用に最も向いた空母であると言える。
艦のスペック的には、元戦艦であるためか防御重視のステータスとなっており、その分他の正規空母と比べると回避の値が若干低く、やや被弾しやすいのが弱点と言えば弱点。
更に二航戦や五航戦と比べると燃費が悪いという特徴もある。
その高性能ぶりから航空戦力としての人気は正規空母の中でもダントツであり、高難易度海域に空母を連れて行くなら取り敢えず一航戦、という形で選択される可能性が高い。
隠れた弱点として、大ダメージストッパー(俗称)の恩恵を受けにくいという欠点がある。『艦これ
』では「轟沈条件を満たしていない時に、轟沈するような大ダメージを食らった時、5~8割程度の損傷で踏みとどまる」という仕様があるのだが、防御力が高めの一航戦はこれが働きにくく、普通に大ダメージを食らって大破してしまう場合が多い。ダメージストッパーが機能すれば中破で踏みとどまる事も多いので、「一発喰らって即大破」というようなケースが多い危険海域においてはむしろ大破撤退率が上がってしまう可能性も孕んでいる。
赤城・加賀の両艦はその空母改装に至る数奇な運命を皮切りに、帝国海軍の緒戦で共に大活躍してその栄光を掴み、ミッドウェーでその運命を共にしている。
日本の大型空母の設計や建造技術及び運用経験はこの二艦の改装と運用による試行錯誤の中で培われたと言ってもよく、後に建造された空母達の先達として大きな貢献をした偉大なお姉さんたちである。
2014/2/26実装家具「雛人形豪華四段飾り」では、右大臣と左大臣に扮していた。
補足
ワシントン海軍軍縮条約では陸奥が無理やりの駆け込みで竣工扱いにされたため、工事の進捗と軍縮会議の如何によってはこの2隻とその姉妹の2隻もそれぞれ加賀型戦艦、天城型巡洋戦艦として完成していた可能性も充分にある。
この想定の架空戦記はそれなりにあるが、その場合第一航空艦隊の空母が不足してしまうため、結局2隻が工事中に何らかの理由で空母改装の対象になるケースが多い。
その場合、当然運用を考慮して同型艦同士が空母になる。
このあたりは作家の采配によりけりで、史実の計画と空母という艦種の特性を考慮して天城型空母天城・赤城となる場合もあれば、逆に天城型は“超金剛型(巡洋)戦艦”となるべく竣工し、戦艦として時流遅れ(と、思い込んでいたのは大日本帝国海軍だけなのだが)である加賀型が加賀型空母加賀・土佐になる場合も多い。
赤城・加賀以外の「第一航空戦隊」所属空母
『艦これ』では基本「赤城&加賀」両名のコンビを示す一航戦だが、史実では入れ替わりが激しい部隊であった。
赤城・加賀と縁が深い空母も多い為、ここで解説する。
ゲーム中では殆ど言及されないが、「空母の母」と言われる彼女も就役当初は一航戦に身を置いていた。太平洋戦争では練習艦となり、実戦には殆ど出ないまま終戦を迎えたものの、それ以前には赤城(昭和3年・4年・6年)加賀(昭和5年・7年・8年)龍驤(昭和10年・11年・12年)とコンビを組んでサポートしていた。加賀・龍驤とは日中戦争での作戦にも参加し、海軍史上初めての空母艦載機による航空戦を行っている。
赤城・加賀共に影響を受けていると解釈しても面白いだろう。
龍驤もゲーム中では「一航戦」について言及はしていないものの、前述の通り太平洋戦争以前は赤城・加賀・鳳翔と入れ替わりで「一航戦」コンビを組む事があった。
1937年10月から11月までのごく僅かな時期ではあるが、一航戦の旗艦を務めた事さえある。
また、装備換装時には「ありがとう。これで赤城や加賀にも負けないかな?って……そりゃ無理か、あはははは……」と、赤城と加賀を意識しつつもその性能や練度を認める発言もしている。また、赤城と加賀を気軽に呼び捨てているのもポイントで、昔の同僚と言った塩梅である。
他にも「二航戦」「三航戦」「四航戦」に所属した事もあり、多くの空母と組んだ事がある歴戦の空母である。
ミッドウェー海戦による4空母喪失後の一航戦は五航戦(第五航空戦隊)から転属となった翔鶴・瑞鶴、および後述の瑞鳳である。
太平洋戦争の期間に限定すれば、赤城・加賀・龍驤よりこの3隻の方が長く務めている。
なお、翔鶴は完成と共に一航戦に編入、赤城と交代して第一航空艦隊旗艦となるはずだったが、完成当初の評価が(後の活躍からは信じられないほど)非常に低く、取りやめになったという因縁がある。
ミッドウェー海戦以後の帝国海軍は次第に敗戦を重ねて苦しい戦いを強いられており、熟練のパイロットもどんどん失われて行ったが、それでも日本の機動部隊として頑張っていた事も確かである。
ゲーム中では瑞鶴が図鑑内で「翔鶴姉と共に、ミッドウェーの後の第一機動部隊の中核として、
矢尽き刀折れるまで奮戦しました」と語っているのに対し、翔鶴は「妹の瑞鶴と共に第五航空戦隊を編成します。あの惨劇の後は、先輩方の後を継いで戦線を支えました」と語っている為、瑞鶴・翔鶴は五航戦として扱われている。
メディアミックスでは、4コマ『吹雪、がんばります!』で瑞鶴と翔鶴が来た時に加賀が赤城・蒼龍・飛龍を庇いながら涙目で怯えているが、「自分達が沈んだからお払い箱になるのではないか」と考えた結果とされている。
小説『鶴翼の絆』では、瑞鶴が姉と共に一航戦を継いだ事が語られており、加賀と張り合う展開がある。加賀としても「ここ(一航戦)は譲れません」という意地があるのだろう。
この二隻も、翔鶴・瑞鶴時代の一航戦の「3隻目」として所属した事がある。昭和19年に大鳳が就役するのと入れ替わりで、瑞鳳は三航戦へ移った。
ミッドウェー海戦後からマリアナ沖海戦までの一航戦については新一航戦というタグも存在する。
大鳳に関しては『鶴翼の絆』2巻において加賀と瑞鶴・翔鶴の会話にて今後の登場が仄めかされている。
隼鷹はミッドウェー海戦と同時期のAL作戦で空母として実戦に出たが、その後に龍驤や相方の飛鷹と共に新二航戦を継いでいる。
龍鳳は潜水母艦「大鯨」から空母へと改造されて実戦に投入されたのがマリアナ沖海戦だったが、それが空母として最初で最後の実戦となってしまった。
マリアナ沖海戦で飛鷹が沈んだ事で二航戦は解隊。伊勢・日向の四航戦へ移るも載せる航空機がなく、レイテ沖海戦には不参加。最後は後述の雲龍型と大和・信濃と共に「最後の一航戦」として書類上では存在する形となる。
終戦時、隼鷹は輸送任務中に受けた攻撃により機関部修理不能。龍鳳は呉軍港空襲で飛行甲板が大破、空母としての機能を喪失した状態だった。
プレイ日記『艦々日和』で加賀が隼鷹を見守る展開があるが、「あくまで一航戦として認識しているから」という事らしい。
当然の事ながら大和は戦艦であって空母ではないが、昭和20年2月に戦艦部隊の第一戦隊が解隊した後、2月11日の再編をもって一航戦の所属となった(ただし戦隊の司令官は任命されず、生き残り空母と大和を寄せ集めただけの状態)。
4月7日に大和が坊ノ岬沖海戦における水上特攻で戦没した後、空母は全て予備艦となり、一航戦は昭和20年4月20日をもって解隊となる(「第十七駆逐隊戦時日誌・戦闘詳報」に拠る)。
2015年5月現在、「信濃」は未だ実装されていない。
改飛龍型である「雲龍型」の雲龍・天城・葛城と、「大和型」戦艦改造空母である信濃。
瑞鶴・瑞鳳・千歳・千代田がレイテ沖海戦のエンガノ岬沖海戦で囮部隊として壊滅し、瑞鶴の図鑑コメントで言うところの「矢尽き刀折れ」「文字通り、最後の空母機動部隊が壊滅」した後の寄せ集め。
戦況が悪化した事や搭載すべき艦載機が不足していた事もあり、三航戦や四航戦のように大規模な海戦へ参加する機会は訪れなかった。信濃などは就役直後に戦没しているにも関わらず、書類上は生き残っているという有様である。
なお、天城は赤城の姉となるはずだったが、ここで挙げているのは関東大震災によるダメージで加賀にパーツを譲り渡した「赤城型」ではなく、飛龍型の直系として作られた「雲龍型」の二番艦である。
一航戦に関わる「第一航空艦隊」の護衛艦
空母ではないが、作戦を行動を共にした艦について。
太平洋戦争開戦前の編成。とんぼ釣りとして参加していた。
なお第七駆逐隊の最後の一隻の朧は秋雲と共に五航戦の護衛をしていたこと、後の珊瑚海海戦では曙、潮、漣が五航戦の護衛として参加し翔鶴とのエピソードがある事から4隻とも正規空母と縁がある駆逐隊と言える。
太平洋開戦時は航続力不足のため真珠湾攻撃に参加せず、漣と潮はその時にミッドウェー島に対し連装砲で砲撃をしていた。漣はその時の様子を図鑑で話題に出している。
探照灯の残念エピソードとそのドヤ顔が印象に残るが、何気に空母と縁が深い艦。
前述の通り朧と共に五航戦のとんぼ釣りを担当し、真珠湾攻撃では第十八駆逐隊に所属。後に第十戦隊の第十駆逐隊として行動をしている。
そのせいか図鑑では瑞鶴と翔鶴を呼び捨てにしている。
こちらは二航戦のとんぼ釣り担当。
睦月型は太平洋戦争以前の日中戦争などで空母の護衛を務めていたことがある。
卯月はああいうなりで日中戦争の加賀さん全盛期の一航戦でとんぼ釣りをしていたのでっす!えっへん!
なお、彼女達も航続力不足で真珠湾攻撃には参加しなかった。
空母機動部隊の護衛駆逐隊の一つ。後述の第一水雷戦隊に加え、第十戦隊が新編された時も参加している。
信濃との縁が強調されている浜風だが、元から何かと空母と縁が深い駆逐艦であり、真珠湾攻撃からマリアナ沖海戦まで大きな海戦では空母に付き従い続けている。
第七駆逐隊の代わりに一航戦の護衛として真珠湾攻撃に参加した駆逐隊。
この時、上記の第十七駆逐隊や朧と共に五航戦のとんぼ釣りだった秋雲も一緒に付属している。
霞は真珠湾攻撃から天一号作戦まで、太平洋戦争の初期から連合艦隊の実質的な消失まで見続けていた立ち位置と言えよう。
航空巡洋艦にして空母と行動を共にする事が多かった姉妹。主に水上偵察機による偵察を務める。
研究家の間ではミッドウェー海戦での索敵にまつわるミスは敗因の一つではないかと長い間言われ続けてきた。
ノベル「鶴翼の絆」では演習で五航戦と同じチームに入り、「いつか静かな海で」では二航戦と共に空母ヲ級の敵襲を迎撃するなど空母との縁が強調されている。
機動部隊の直衛任務を目的に編成された部隊。
しかし、第十戦隊としての主な初陣があのミッドウェー海戦であり、舞風達は赤城を、巻雲達は飛龍をそれぞれ雷撃処分する事になってしまう。
乗船員もその辛さを手記に書き記しており、舞風・巻雲にとってもトラウマの一つになっていると思われる。
矢矧と秋月は、マリアナ沖海戦で轟沈した翔鶴と大鳳の乗船員を救助している。
そのためか、翔鶴は轟沈時のセリフで矢矧と秋月に後の事を任せる旨の言葉を残している。
補足
史実においてはこの一航戦と二航戦(第二航空戦隊)そして五航戦(第五航空戦隊)が、「第一航空艦隊」(通称「南雲機動部隊」)として真珠湾攻撃に参加している。
尚、龍驤は太平洋戦争勃発時には第四航空戦隊に編入されており、南方で陸軍の支援に当たるため真珠湾攻撃には不参加。ちなみによく言われる俗説は2つとも間違い(速力不足:加賀の方が鈍足。航続力不足:蒼龍・飛龍も大して変わらず、その為引火の危険を承知で予備の燃料をドラム缶に満載し、格納庫に搭載して行ったというのは有名な話)
関連イラスト
関連タグ
赤賀(※こちらのタグは、赤城・加賀を百合やレズなど同性愛の関係に置く場合に用いられるので、一航戦タグと混同しないように。)
新一航戦 ミッドウェー海戦後~マリアナ沖海戦までのメンバー。