概要
UH-1汎用ヘリコプターに、僚機を護衛するための武装を追加したものに端を発するが、これには搭載量の制約や追加武装で重くなった結果護衛対象についていけなくなるなどの問題があり、専用の機体として1から開発されたのが攻撃ヘリコプターである。
対戦車ミサイルを主武装として装備するようになっていったことから対戦車ヘリコプターとも呼ばれ、英語ではガンシップとも呼ばれる。
なお、上述のUH-1をはじめ、「本来攻撃用ではない普通のヘリコプターに自衛あるいは支援用の武装を施したもの」は「武装ヘリコプター」と呼ばれ、純戦闘用の攻撃ヘリコプターとは似て非なる存在である。
上述したような欠点はあるが、攻撃ヘリコプターと比べると「既存の機体を流用できるため安価」「攻撃以外の用途にも使える」という利点があるため、一概に攻撃ヘリコプターより劣っているとは言えず現在でも一定の需要がある。
Mi-24は攻撃ヘリコプターと武装ヘリコプターの中間的な特徴を持ち、「強襲ヘリコプター」と呼ばれる事もある。
長所
元々ヘリボーン作戦の護衛用として生まれただけあり、ヘリコプターに随伴して護衛できる唯一の機種である(機種によってはジェット戦闘機でもヘリコプターと編隊を組むこと自体はできるが、本来ジェット機は低速で飛ぶのが苦手な航空機であり、まず航空ショー以外では行わない)。
NOE(Nap Of the Earth)飛行により地面すれすれで飛ばれれば地上のレーダーはおろかAWACSといった上空からの監視網でも発見は難しく、発見できたとしても地形によってはレーダーロストする事が多い為である。
飛行音も『地形に沿って飛ぶ』、『林や建築物等を遮蔽物にする』等をすると殆ど聞こえず、ブレードの形状を変更する等で音を抑える改良を施された機体も存在する事から、携行型地対空ミサイル(MANPADS)が発達した現在であっても、歩兵や戦車にとっては死神同然である(実際、湾岸戦争ではイラク軍が多数のMANPADSを保有していたにもかかわらず、砂塵の影響でろくに位置を特定できないまま攻撃ヘリコプターに一方的にタコ殴りにされ、攻撃ヘリコプターを撃墜する事は遂に叶わなかった)。
また、敵味方が入り乱れた激戦中に航空支援を行う際には、戦闘機よりも低空・低速で飛べる事が誤爆の防止に有利に働き、戦闘機がうまくできなかった航空支援を攻撃ヘリコプターが成功させた事例もある。
現代の戦闘機はいくら低速で飛んでも航空機としては速いことに変わりはないし、止まることもできない以上、比較的小さな目標を見つけ、正確かつ一撃で破壊するのは困難なのだ。その点ヘリコプターならば燃料の許す限りホバリングでその場に留まることもできるので目標の確認がしやすく、より地上部隊に寄り添った支援(いわゆる直接協同)にはうってつけなのである。
何より、運用する陸軍にとっては空軍の航空戦力に頼らなくて済む、自前の航空支援手段を手に入れられる事が大きい(ただし国によっては空軍が運用する所もある。大体は陸軍が自前の航空隊を持っていない国だが、インドやブラジルのように陸軍が航空隊を持っているにもかかわらず空軍が攻撃ヘリコプターを運用している国もある)。
短所
元より航空機は撃たれ弱いが、ヘリコプターは低速なうえ、滞空するだけでもエンジン出力の多くを使っているため固定翼機よりさらに脆弱であり、攻撃ヘリコプターも本格的な防空網にはほぼ無力とされている(もっともこれは、近接航空支援専用機や軽攻撃機にも言われている事である)。
防弾装備に優れているAH-64でさえ、『12.7mmの直撃か、23mm砲弾片の数発分に耐える程度』(メーカー)とされている(本格的な対空砲となると20mm以上などざらにある)。
そんなAH-64もイラク戦争では31機による攻撃が対空砲火の待ち伏せを受けた結果、被撃墜1機、29機が全機被弾・大破して修理が必要になり事実上壊滅状態になるという憂き目にあった。
いくら重武装・重装甲であろうとも低速ではしょせんただの的にすぎないのだ。
他の機種との連携を欠き、攻撃の際に無防備にもホバリングし、巻き添えの危険から反撃も困難という極めて不利な条件下のことではあったが、AH-64が脆弱性を露呈させたのは事実であり、陸軍はその運用方法について考え直すことになる。2日後にF/A-18との連携下で再度攻撃が試みられた際には、ホバリングを禁じて移動射撃に徹したことにより、一切の損害を受けることなく対空砲7基とレーダー5基他多数の目標を破壊することに成功している。
ヘリコプターである以上、燃費が悪く滞空時間や航続距離も固定翼機に比べれば劣る。つまり長く飛べない。
何より高価であり、最新の機種は下手をすると戦車どころか戦闘機並の値段がするのである。
そのため、中小国の軍隊では武装ヘリコプターで妥協している所も多い。
将来
上述した短所から度々不要論が出ているが、依然として需要がある攻撃ヘリコプターの進歩は今尚続いている。
冷戦終結後は対戦車攻撃の役目こそ減ったものの、特にイラク戦争以降は優れたセンサー類に支えられた偵察能力が注目されている。
米陸軍ではOH-58Dの退役に伴って偵察ヘリ任務がAH-64に吸収され、最新のAH-64Eでは無人機の管制能力も獲得し、陸軍の戦術偵察ネットワークのハブとして発展が期待されている。
後継コンペには複合ヘリコプターもエントリーしており、ティルトローター機の採用に伴ってより長距離・高速での運用が求められていく模様。
またトルコでは開発中の軽攻撃ヘリコプターT629の無人機バージョンが発表されている。
武装ヘリコプターも単に普通のヘリコプターに武装を追加するのみに留まらず、攻撃ヘリコプターと同等の電子機器を追加装備する事で攻撃ヘリコプターと遜色ない戦闘能力を持つようになってきており、コストパフォーマンスを重視する国々からの支持を広げつつある(それが専用の攻撃ヘリコプターの不要論を加速させている一面もあるのだが)。
2022年に発生したロシアによるウクライナ侵攻では、両軍の航空優勢確保の試みが失敗し航空作戦が難しくなる中、低空飛行でSAMの射界から逃れられる攻撃ヘリコプターは貴重な近接航空支援ユニットとして頻用されている。もっとも、ロシア軍は多数の攻撃ヘリをMANPADS(FIM-92など)に代表される対空兵器による迎撃で喪失しており、低空飛行しているが故に格好の的になっているという側面もある。その様子が動画サイトに投稿されたことで不要論が盛り上がったりもした。
そんな中、22年末には自衛隊が攻撃ヘリコプターを全廃、無人機と武装ヘリで置き換える方針を発表しており、前代未聞の決定に注目が集まっている。
各国の主な攻撃ヘリコプター
開発国 | |
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アメリカ | AH-1コブラ/AH-1Wスーパーコブラ/AH-1Zヴァイパー、AH-64アパッチ、AH-56シャイアン、RAH-66コマンチ |
ロシア | Mi-24ハインド、Mi-28ハヴォック、Ka-50ホーカム、Ka-52アリガートル |
西ドイツ・フランス | PAH-2・EC665ティーガー |
イタリア | A129マングスタ |
中国 | 武直-10 |
南アフリカ共和国 | AH-2 |
架空の攻撃ヘリコプター
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