概要
火力発電所では、主に石油や天然ガスなどを燃焼させ、その時に出た熱で水を沸騰させて水蒸気を生み出し、その水蒸気で蒸気タービンを回転させることで熱エネルギーを運動エネルギー、そしてさらにそれに連結された発電機(モーターと構造は同じ)で電気エネルギーに変換するという手順を踏んで発電を行っている。
昔は石炭を燃やして発電する発電所も存在しており、今でも中国などでは現役で稼働しているほか、日本でも現役の石炭火力発電所は存在する。
なお、火力発電所は石油などを海路で輸送するので海沿いに建設するのが一般だが、石炭を燃料にする場合は輸送効率の悪さもあってかつては炭鉱の近くに建設されていた。この場合は「山元発電」とも呼ばれている。
なお、後述する理由から日本では現在石油火力発電所の新規建設は禁止されている。
一般に石油などの炭素系物質を燃やして熱を得るため、二酸化炭素排出などの問題を抱えている。
なお、煤煙などによる環境汚染に関しては徹底的な大気汚染防止対策がなされているので日本に関してはほぼ問題ない。日本に関してはね・・・。
同じ方式の発電方法
「何かの熱を使って水を沸騰させてタービンを回して発電する」という発電方式は汽力発電と呼ばれ、同じ発電方式を使用している発電方法に地熱を使う地熱発電、核反応時の熱を使う原子力発電、太陽光熱を使う太陽熱発電がある。
要は水を沸騰させられるだけの熱があればいいのである。
少し変わった火力発電所
内燃力発電所
燃料の燃焼で放出される化学エネルギーで内燃機関を回すことによる、「内燃力発電」の設備を持つ発電所のことを言う。
使用される内燃機関はディーゼルエンジンが主流だが、ガスエンジンやガスタービンを使用している発電所もある。
始動性が良く、需要調整が最も容易であるため、離島の電源や、発電所の非常用電源として設置されている。
コンバインドサイクル発電所
ガスタービンの排熱で汽力発電も行う、「コンバインドサイクル発電」の設備をもつ発電所のことを言う。
2重に発電を行うため、他の発電方法と比べ熱効率が高く、ガスタービンであるため始動性も良い他、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた小容量のユニットを複数設置し、3〜6台ずつグループとして運用するため、起動・停止や出力の変化が速い。
これにより、系列あたりの出力は大容量でありながら効率の低下が少ないという特徴がある。
なぜ石油火力発電所を新設できないのか?
先ほど石油火力発電所は新設できなくなっていると書いたが、実は第二次石油危機の発生を受けて、1979年5月に行われた第3回国際エネルギー機関(IEA)閣僚理事会において、「石炭利用拡大に関するIEA宣言」の採択が行われたのだが、この宣言には石油火力発電所の新設禁止が盛りこまれていたのである。
これによってそれ以降日本でも原則として石油(原油)火力発電所を新設することが出来なくなっているのである。
福島第一原子力発電所事故以降の火力発電所
世論もあって原子力発電所の定期検査後の再稼働が実質不可能となっているため、その不足分を補うために休止状態だった火力発電所までも若干の改装ののちに無理やり再稼働させて、それでも足りないのでガスタービン発電、ディーゼル発電などの緊急設置電源を新設したり、火力発電所の増出力運用を行って、それに節電まで合わせてやっとギリッギリ足りているというのが現状である。
当然余力発電などほぼないといっても過言ではなく、現状どの火力発電所も定期検査のために止めておけるだけの余裕がなく、特例的に定期検査を先延ばし先延ばしにして無理やり動かしている。
現在日本で稼働している火力発電所の約20%は最初の稼働開始から40年以上経過した老朽火力発電所であり、定期検査ができないことも相まっていつ故障して計画外停止をしてもなんら不思議ではない状況となっている。
現在の日本の電力の75%以上は火力発電依存であり、おまけに一切余裕が存在しない綱渡り状態の電力供給状態故に、万一電力需要がピークに達している際に60~100万kW級の大型火力が停止したり、本来は軸単位で運転・停止が可能なコンバインドサイクル発電設備が系列全体で停止したりすると、大規模な停電につながる危険性が非常に高く、回避できても輪番停電や計画停電は覚悟しなければならなくなる。
また、中東の情勢が非常に不安定なために燃料の石油価格も高騰しており、今のままでは電気料金の値上げは回避不可能となりつつある。
二酸化炭素の排出量もうなぎのぼりであるため、それによる大気汚染の懸念もある。