概要
いわゆる採掘士である「ディガー」の1人にして、ラベールの兄。姓は一部の設定資料集でしか明かされていない。
ディガーとは主に遺跡などから昔のオーバーツである「クヴェル」を発見して生計を立てるのだが、それだけに当たればでかいがヘタをするとゴロツキのようになってしまう、本人に才能がないとロクにやっていけない冒険稼業である。
彼は、そんなディガーの最高勲位と言える「タイクーン」という称号を夢見て、大成するために10年間放浪の旅をしていた。そして、妹ラベールと再会するのだが、その傍らには奇妙なことに、彼と同じ名前のディガーがいた。名前も目的も同じことから打ち解け、またもともと劣等感を持っていた彼は故郷の人々を見返してやるつもりもあり、極寒の地ヴァイスラントに眠る古代遺跡「氷のメガリス」に挑戦する。
ディガーとしての功績は、クヴェルの発掘だけでなく、人類以前に存在する正体不明の古代遺跡を解明することも大きい。そうした類の遺跡がメガリスと呼ばれるもので、アニマ(≒魔力)が非常に強かった古代種族が作っただけに、その仕掛けは時に、人類の身体構造では到底耐えられないものもある。別の生き物に変質するなどの不可解な事故が多数発生しており、だからこそ制覇することは大きく評価される。
途中までの探索は確かにうまく行った。しかし最深部で、その「正体不明の仕掛け」に遭遇し、メンバー全員が倒れてしまう。やがていつの間にか外へ脱出できたのはよかったが、その理由が、同行していた者が「みんなを助けたい」と強く願っていたためだと相談している場面を見る。
「タイクーンと評価されたい」——功労心ゆえに、彼は閃いた。
みんなを助けたいと願ったから、みんな助かった。
このメガリスの中枢は、きっと——思念を実体化するものだ、と。
なら···自分の願いも、きっと実現してくれるだろう——
「俺は世界最高のディガー、タイクーン・ウィリアムだ!!」
それが、彼の、人間としての最後の言葉となった。
もともと強靭な精神力を持っていない普通の才能しかなかった彼は、メガリスの精神走査に押し潰され、自身の望み自体を変質させられてしまう。もはや人とは全く違う異質の獣「メガリスビースト」となり、周囲のメンバーに襲い掛かり始めた。こうして彼は、メガリスのリスクを、身をもって体験することになった形。
逃げるメンバー、そして崩れ始めるメガリスへの架け橋。メガリス内に取り残された彼は——さっきまでの威勢を潜め、他のメンバーたちを見ているのみだった···。ラベール曰く「だって兄さん、泳げなかったもの···」の一言は、その獣がさっきまでウィリアムだったことの証明に、皮肉にもなってしまった。