ビッカース社が開発した大型爆撃機。
イギリスが国産の原子爆弾「ブルー・ダニューブ」開発を決定し、搭載するジェット爆撃機が必要となったため、1947年1月に航空省が提出した仕様B.35/46にビッカース社も応募したが、保守的で見るべき点のない案だったため選に漏れてしまった。
しかし、採用されたハンドレページ社とアブロ社の案が斬新過ぎるため、両社が失敗した際の「保険」としてビッカース案も採用される事となった。
1951年5月18日に原型機が初飛行し、1955年、ヴァリアントとしてRAFに就役。
ソ連へ侵攻し、核攻撃を行うための戦略爆撃機「3Vボマー」の一角。
胴体の下半分を爆弾倉にするため、主翼は肩翼に配置され、前縁に二段の緩い後退角がある。
当初はアメリカ合衆国から供与された原子爆弾「Mark.5」、国産原子爆弾「ブルー・ダニューブ」、水素爆弾「イエロー・サン」、核ミサイル「ブルー・スティール」等を搭載していた。
1956年、スエズ動乱で唯一の実戦に参加した。
1957~1958年、クリスマス島、マルデン島で行われた水爆実験「グラップル作戦」に参加し、核兵器を投下した唯一のイギリス機となった。
イギリスの核抑止力がSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)へ移った1963年以降は戦術核攻撃へ任務が変更された。
しかし、戦術核攻撃のための低高度侵攻の役割を与えられたヴァリアントは、機体形状に由来する乱流による金属疲労で次々と不具合が発生した。
1964年の全機点検により多くの機が安全寿命を超えている事が明らかとなり、政府はヴァリアントの修理費用を予算化しない事を決定し、1965年1月26日をもって全機が退役した。
諸元(B.1)
乗員:5名
全長:33m
全高:9.8m
翼幅:34.9m
翼面積:219.4㎡
空虚重量:34.42t
最大離陸重量:63.5t
動力:ロールス・ロイス・エイヴォン204/205ターボジェット(推力43kN)×4
性能
最大速度:912km/h
航続距離:7,242km
実用上昇限度:16,460m
武装
通常爆弾(最大9,525kg)、または自由落下核爆弾/核ミサイル×1