ホバークラフト
ほばーくらふと
概要
圧縮空気を船体の下に噴射し、水面から浮き上がって高速で航行する船。
ホバークラフトとは商品名であり、正式には「エアクッション艇」/「空気浮揚艇」と呼ばれる。
浮き上がって航行するため水からの抵抗を受けず、並の船より遥かに高速で航行することが可能。
また浮上してるので(平坦な場所であれば)そのまま陸にも上がれる。
ちなみに最初に作ったのはイギリス人である。
原理
「吹き込み口以外にも穴が開いた風船を膨らませる」というのがホバークラフトの原理。
吹き込み口以外に穴が開いていては風船の役割は果たせないわけだが、空気の逃げ道である他の穴が十分に小さく、吹き込み口から十分な量の空気を吹き込めば、全ての空気が狭い穴から一気に逃げ切ることができず、一時的に風船内部に留まることになる。吹き込みの量次第では更に多くの空気が留まり、風船内部の圧力を高め、風船を膨らませることになる。
そしてこの吹き込みを継続できれば、風船が膨らんだ状態も維持することが可能になる。
吹き込み口はホバークラフトの空気吸入装置であり、他の穴というのはホバークラフトと地面の隙間。そして風船の膨らみは、ホバークラフトと地面の間の空間である。
ホバークラフトは、逃げ切れずに圧力が高まった空気の上に乗っかることで、地面との接触を減らしている。まさしく空気のクッションに乗っているわけなので「エアクッション艇」という名前がついた。
しかしながら、船底が単なる平滑な板だと実用性に乏しい高さまでしか浮かび上がれないので、ホバークラフトはスカートを履いており、スカートを膨らませて空気を抱え込むことで地面との距離を確保している。
推進力はプロペラで大気によって得るのが一般的だが、水中にスクリューを突っ込んで加速するものもある。
時たまヘリコプターなどと同一視されるのだが、ヘリコプターの飛行原理はホバークラフトとは全く違う揚力というものであり、別物(これがいかに違うかを詳しく説明していると記事のタイトルを変えなければならなくなるので省略)
ホバークラフトの特徴
利点
- 高速航行可能
浮き上がるため水の抵抗を受けず、高速で航行できる
- 陸にも上がれる
平坦な場所であればそのまま陸にも上がれる。
- 上り坂に弱い
陸にもそのまま上がれるとは言え、自動車や鉄道のように摩擦力を利用して走るものではない(逆に摩擦力とは縁もゆかりもない状態にして高速航行を可能としている)ため坂道にはめちゃくちゃ弱い。
- 爆発物に強い
ほとんど浮かんでいるので地雷、機雷にも引っかかりにくい(あくまで引っかかりにくいだけで全く引っかからないわけではない)
欠点
- 悪天候に弱い
海が荒れているとホバークラフトは弱い。
- うるさい
空気を船体下部に噴射するためとにかくうるさい。
- 燃費が悪い
そもそも浮き上がらせるというだけでもかなりのパワーが要る。それにスクリューで推進することはできないので、プロペラやジェットエンジンなどで推進する必要がある。その結果、普通の船と比べて燃費が極悪。
- 摩擦が少ない
氷の上のタイヤと似たようなもので、摩擦が少なすぎて旋回がしにくい。このため船体規模の割に取り回しが悪く、ブレーキも利かない。
- コストが高い
燃費のこともあるのだが、伸び縮みを繰り返し、地面を引きずられることになるスカートが劣化、摩耗しやすく、ほとんど消耗品なので交換費用が掛かる。
- 専用の港湾設備が必要
他の船舶と違って、スカートはじめ水中に沈む部分もしょっちゅう面倒を見なければならないので、保守点検、整備をするには上陸させなければならない。そのため上陸用のスロープを作る必要がある。
利用
民間用
客船としては高速船の一形態として運用されることが多かったが、コストの問題があってあまり普及せず、より効率の良い水中翼船が普及してからは廃れることになった。
日本で有名なのは大分空港から発着していたやつであろう。
貨物船としてホバークラフトの構造を応用した高速貨物船・「テクノスーパーライナー」(TSL-A)が計画されていたが、これまた採算が取れないということで結局実現せず。
余談
- ホバークラフトは日本の法律上では「船」として扱われているが、工学では浮いて進むという点で「飛行機」の一種として扱われている。