概要
構造上の分類では、「高速航行時に水中翼の一部が水面上に出る」半没翼型水中翼船と、「水中翼の全てが水面下にある」全没翼型水中翼船に分けられる。
全没翼型水中翼船には、単胴型と双胴型があり、前者はボーイング社の「ジェットフォイル」、後者は三菱重工が開発した「スーパーシャトル400」がある。
推進方式では主としてプロペラによるものと、ウォータージェット推進式によるもの、更に競技用でなどで人力や風力(ダガーボードを水中翼として利用するヨット)も存在する。
沿革
普通の船(排水型)は、進む時に水の抗力を受ける上に速度の二乗倍で増加し、プロペラ(スクリュー)推進の場合は機関の出力を大きくしても40ノットあたりで頭打ちしてしまう。また全長に対し全幅を極端に狭くする必要があり、積載量を削いでしまう。
そこで『低速で水上を航行する際には船体を水面下に浸けて航行するが、高速航行をする際には、迎角のつけられた水中翼から得られる揚力で海面上に船体を持ち上げ、水中翼のみが水中に浸っている』形の船のアイデアが19世紀半ばから作られた。
しかし推進力となる動力が無く、20世紀になってから開発された。
第二次世界大戦以前から戦中にかけてドイツで開発していたフォン・シェルテル男爵が終戦後にスイスに移り、そこでシュプラマル (Supramar) という会社を創業して1952年に世界初の商用水中翼船 (半没翼型)PT10 "Freccia d'Oro"(金の矢)をマッジョーレ湖に浮かべた。
1962年にはボーイングが軍事目的で開発、1967年にパトロール用の小型艇「トゥーカムカリ」(全没翼型・単胴型)が実用化。
その後NATOの依頼によりミサイル艇(後の「ペガサス級」ミサイル艇)が開発されたり、軍用をベースに旅客用の『ジェットフォイル』が作られた。
日本国内では、シュプラマルの水中翼船は日立造船(現在造船事業はユニバーサル造船に譲渡)が、ジェットフォイルは川崎重工業がライセンスを取得、後にボーイングから譲渡された。
またジェットフォイルのライセンスを取得したイタリアの会社が建造し1983年に就役したイタリア海軍の「スパルヴィエロ級」ミサイル艇に海上自衛隊が注目、住友重機械工業がライセンスを受けて1993年-1995年に1号型ミサイル艇を3隻建造している。
因みに最新型は川崎重工製のジェットフォイル「セブンアイランド結」が2020年に東海汽船で運航開始。
関連イラスト
ジェットフォイル「すいせい」(佐渡汽船)※写真の船・2020年現在現役。
ジェットフォイル「セブンアイランド結」(東海汽船)