暴民政治
ぼうみんせいじ
詳細
民主政治の良し悪しは、選挙権を持つ有権者によって左右されるが、その有権者が愛国心の欠如などにより、自国の政治に関して無関心であったり知識が乏しく正確な判断ができず、扇動者の詭弁に誘導されて、国益ではなく各々の身勝手なエゴの実現や、自分たち利益ばかりを追求するなど、いい加減だったり歪んでいたりする誤った意思決定で政治を判断してしまっている状況など指す。 このため、ポピュリズム等の不安を煽り有権者が知ること、考えることじたいを拒否したがるように仕向けるような情報操作に対しては非常に脆い。
これらは民主主義の欠点・弊害とされ、有権者が愚民・暴民である場合、民主主義は悪い方向に進んでしまうとされ、現にドイツにおいてアドルフ・ヒトラーが率いたナチス党による独裁政権が誕生したのは、実はドイツ国民が民主主義によりナチス党を支持したためである。
民主主義は、決して理想の制度というわけではないのである。ただ、それ以外の制度が論外なだけである。
大日本帝国の暴民政治
大日本帝国では民本主義の名の下、限定的であるにせよ民意を重んじる傾向があったのだが、末期の国会においては多数派が少数派の意見を無視するということが常態化していたため、少数派が法案の審議引き延ばし戦術を筆頭にした結論を出させない議会戦術を多用したことや軍将兵のクーデターがしばしば発生していたこともあって、政党政治というものに愛想をつかした国民は同盟国のドイツやイタリアのような、全体主義的傾向を持つ強力な指導体制を望む声が大きくなった。
そうした国民の声に応えて政治家たちは「バスに乗り遅れるな!」というスローガンの下、合法政党が全て自主解散して大政翼賛会を結成。協力な指導体制を構築していこうと試みた。
当然のことではあるのだが全合法政党が合流したのだから旧政党間の争いが派閥争いとしてきっちり継承され、政治組織であれば当然あるべき綱領・宣言の類がまとまらないていたらくだった。
総裁の近衛文麿は「大政翼賛会の綱領は大政翼賛・臣道実践という語に尽きる。これ以外には、実は綱領も宣言も不要と申すべきであり、国民は誰も日夜それぞれの場において方向の誠を致すのみである」と述べ、政治的方針が統一されることはこれからもないと開き直ったが、国民のほとんどはひとつの組織にまとまったのだから大丈夫とでも思ったのか、特に批判も何もしなかった。
なお、これで日本の政治はとりかえしがつかないレベルで泥沼化したと言ってよく、軍部の独走を止められなくなり、統一性もなく個々の部署で戦線を無謀に広げ続けて言った結果、太平洋戦争の敗北に至った。