概要*
作中で言われる魔神とは、『魔界の神』という意味ではなく、『魔術を極めすぎて、神様の領域にまで足を突っ込んでしまった』人間のこと。『人の身で在りながらその存在を、魔術の修得と儀式でもって神格へと昇華させた者』とも、『魔術で世界の全てを操る者』ともされる。「無限」という言葉で表すしかない程の力を持ち、その「無限」の容量ゆえにそのままの状態では世界に居ることすら叶わない、世界自体を壊してしまう程の強大な存在である。魔術を極めた先にある到達点であり、全次元、全元素、全位相を完全に掌握し世界を自由自在に歪める事が出来るとのこと。
旧約では10万3000冊の魔道書の知識を全て行使するものが到達するといわれているが、最終巻まで魔神になれなかったオッレルスのような例外を除き、全く登場することはなかった。
新約3巻にして、オッレルスの因縁の相手である不完全な魔神オティヌスが登場。
ここから彼女を中心に物語が展開し、ついに8巻にて魔神として完成し、その能力(世界を消滅させる。また、「位相」を差し替えて彼女の思いのままに世界を創り上げる。銀河と銀河を衝突させる。「時間」を巻き戻せる。未来へ繋がる運命のレールを一から敷き直し、望んだ結果を得る(運命論)。例えとして宇宙全体(端から端まで)に渡るほど、巨大な『弩』を展開させる(オティヌスの弩)。素粒子を乖離させ、その存在自体を霧散させる。「生」と「死」を操る(死者の軍勢(エインヘルヤル))。「自分」ではなく、「自分以外の世界(宇宙)全て」を動かすことで、瞬間移動を実現する(骨船))を持って上条当麻を追い詰める展開となる。
しかし、10巻終盤にて、実はオティヌスは本当の意味で到達していなかったことが明かされる。
位相*
作中において、人の意識の中で構築される世界は、決して科学の法則だけが支配するまっさらな世界ではないとされる。
十字教・仏教・イスラム教・神道・ケルト神話・ギリシャ神話・インド神話・アステカ神話・北欧神話・インカ神話などの様々な宗教、またはそれに付随する神話にそれぞれ設定された、「天国」「地獄」「冥府」「浄土」「黄泉」「地底」「オリンポス」「ニライカナイ」「アースガルド」といった宗教概念(世界観)がそのまっさらな世界に重ねられている。
人の目に映る世界とは、宗教概念というフィルターを通して見る歪んだ景色のようなものである。こういった、宗教概念の集合体のことを主に『位相』と呼ぶ。これら宗教概念は単なる空虚な妄想というわけではなく、異世界として確かに実体を持って存在し、現実世界に影響を及ぼすことさえある。例えば、魔術はこれら『異世界』における法則を強引に現世へ適用することで超常現象を引き起こしている。学園都市製の超能力を成り立たせる自分だけの現実も、その集合たる虚数学区も、個人に限定されたものであることを除くと異世界に相当する。
魔術を用いる用いないに関わらず、そもそも人間のいう現実世界(現世)というもの自体、前述のように位相を介して見ている景色に過ぎない。故にもし位相を改変する技術があれば、世界の「見え方」はがらりと変わってしまうことになる。その場合、位相の向こうにある真なる『科学の世界』そのものを直接いじっているわけではないが、人間の主観で言えば、世界そのものが作り替えられているのと全く変わらない。
作中における平行世界はパチンコ台に釘を打ってゴム紐をかけたような一直線のもので、平行する世界が無限に存在するというわけではない。また、時間や空間のように伸縮する性質を持ち、通常では60ミリのフィルムを10ミリしか使っていないような状態。
登場した『魔神』は総じてある一つの魔術的宗教的思想・観念を司る現人神として大成し、位相を自在に操作する力を持ち、余った位相を世界に挟み込む事で誰にも気づかれずに自在に世界の見え方を改変することができる。例えば逆位相を取れば完全に世界と切り離され、接触する事も視覚で捉える事も不可能となる。少し位相をズラしてしまえば疑似的な“幻覚”としても作用する。
運命論*
魔神は「運命」のレールを敷くことによって1から世界を創り、望んだ世界を得る事が出来た。
しかし幸福の定義、各々の宗教観、一つ一つの考え方が相容れない魔神たちの内輪揉めの結果、結局は影響を受けるのは世界の方であった。
魔術師なら多かれ少なかれ位相に干渉するものだが、魔神は強力すぎる故に大きく干渉してしまい、その衝突によって生じる「火花、飛沫(不幸な運命)」で知らずのうちに人を死に追いやってしまう。
鏡合わせの分割*
ブードゥー教の魔神ゾンビ少女の生み出した魔神用の術式。
魔神とは曰く「無限」の力を保有する存在だが、上条達の居る世界はその「無限」の存在を受け入れるほどのキャパシティには至ってない。魔神が現世に足を踏み入れようものなら世界はステンドグラスのように粉々になってしまう。
そこでゾンビ少女が提唱した、無限の存在(魔神)を無限に分割し、世界で許容可能なギリギリのレベルに魔神の容量を下げた上で、自己と重ね合わせて世界を騙す、という理論が重宝されている。完全に殺すには永遠に等しい戦闘を繰り返さなければならない。
誕生経緯*
誕生の経緯は基本的に複数存在するらしいが、基本的には『死』がポイントとなっており、魔神たちはオティヌスも含め、魔術を極めた後何らかの形で人として死を迎える事で誕生する。
その際魔神たちの共通として、瞳が緑色に変色することが上げられる。
そして、オティヌス以外の魔神たちの『本来』の誕生過程にはその時代の人間の理不尽な行為によって死を迎える事で、初めて魔神として完成する。(つまり、作中に登場した魔神たちは魔神になる以外の選択肢を奪われた元人間である。)
そしてその方法で誕生した完全な魔神の存在は世界の許容量を軽く超越しており、存在するだけで世界が砕け散ってしまうため、力を世界の許容量のギリギリまで分割しなければ世界を自由に闊歩することすらできない。前に進もうが後ろに下がろうが…どころではなく、その場に留まるという選択肢でさえ世界に影響を与えてしまう。
結末*
完全無欠の『魔神』にとってこれは一種の悩みであり、「誰にも迷惑をかけずに世界全体でのびのびと生きていたかった」「どれだけ暴れても誰にも迷惑をかけない孤独の世界へ飛ばされたかった」と願っていた者が少なからず存在した。
まさしくそれは新たな天地を望む「願望の重複」であり、理想送りの力によって大多数が「新たな天地」へ追放されている。新天地は位相の一種で、魔神ですらその存在を知覚することができない。元の世界を元に再現された世界であり、どれだけ破壊行為を行っても午前0時を迎える度に「向こう」を基準とした状態に修正されるという特徴がある。一部の魔神にとってはなかなか悪い選択肢では無かったらしく「人の献上した神域」とポジティブにとらえている。
新天地では魔神同士の激突(手始めにヌアダの学園都市のビルを巻き込む虫で構成された巨大なダイスやコイン、カードの投合、それに対抗する娘々の指先から出てくる数多の刀剣類の銃撃、プロセルピナの太陽を隠すことでの惑星規模の人工氷河期、それから逃れるべく窓のないビルをロケットに見立て娘々の術式でブースターとし大気圏離脱、テスカトリポカの世界地図の形を変える程の天の槍での爆撃、そのテスカトリポカを叩き付け地球を解凍)が行われている模様。