THE GREAT KANSAI DERBY
頂上決戦!舞台は関西
概要
本大会の表題は「SMBC日本シリーズ2023」。
2014年以来10年連続で三井住友銀行(SMBC)がタイトルスポンサーを務める。
2005年以来18年ぶりのセ・リーグ優勝を果たした岡田彰布監督率いる阪神タイガースと、21世紀初のパ・リーグ3連覇を成し遂げた中嶋聡監督率いるオリックス・バファローズが共にクライマックスシリーズを制し、日本シリーズで相まみえることとなった。
両球団は共に関西地方を拠点とし、戦前から85年以上の歴史を持つ球団※1であるにもかかわらず、前身の大阪タイガース・阪急ブレーブス(→オリックス・ブルーウェーブ)・大阪近鉄バファローズの時代も含めて日本シリーズでの対戦が一度もなく、意外にも今回の日本シリーズが初顔合わせである。
関西球団同士による日本シリーズは1964年の南海ホークス(現: 福岡ソフトバンクホークス)対阪神タイガース※2以来実に59年ぶりとなる。決戦前には両軍による『THE GREAT KANSAI DERBY』というコラボキャンペーンも行われた。
またタイガースの本拠地阪神甲子園球場(阪神本線の甲子園駅が最寄り)とバファローズの本拠地京セラドーム大阪(阪神なんば線のドーム前駅が最寄り)が共に阪神電車の沿線にあることにちなんで「なんば線シリーズ」とも称された。※3
なお、阪神電車はシリーズ期間に「なんば線シリーズ」と銘打って記念乗車券を発売している。
双方のチームが2位に10ゲーム差以上つけてリーグ優勝を果たしていたのに加え、オリックス・山本由伸や阪神・村上頌樹などリーグトップのピッチャー陣が揃っていたため、開幕前から(ファンや野球関係者からの)注目度が非常に高かった。
第7戦までもつれ込む激戦の末に4勝3敗で阪神タイガースが勝利、1985年以来38年ぶり2度目の日本一を掴み取った。敗れたオリックスは、日本シリーズ連覇とはならなかった。
※1 近鉄を傍系球団として扱った場合。大阪タイガースが1935年、阪急軍が1936年、近鉄パールスが1949年にそれぞれ創設されている。
※2 4勝3敗で南海ホークスが日本一。NPB史上初の関西ダービーであり、こちらは阪神のターミナル駅である阪神大阪梅田駅と南海の南海難波駅を結ぶ御堂筋に因み「御堂筋シリーズ」や「御堂筋決戦」と称された。しかし、最終戦(10月10日)までもつれ込んだことで東京五輪の開会式実施日と優勝決定日が重なってしまい、(関西を含めて)あまり注目されることがなかった。
※3 近畿日本鉄道(近鉄)にも近鉄難波線が存在しており、それとの区別の為「阪神なんば線シリーズ」とも呼ばれる。
出場選手
阪神タイガース
首脳陣
役職 | 背番号 | 名前 |
---|---|---|
監督 | 80 | 岡田彰布 |
ヘッドコーチ | 78 | 平田勝男 |
投手コーチ | 88 | 安藤優也 |
バッテリーコーチ | 83 | 嶋田宗彦 |
打撃コーチ | 77 | 今岡真訪 |
打撃コーチ | 73 | 水口栄二 |
内野守備・走塁コーチ | 81 | 馬場敏史 |
宇野守備・走塁コーチ | 74 | 藤本敦士 |
外野守備・走塁コーチ | 96 | 筒井壮 |
投手
背番号 | 名前 | 投打 |
---|---|---|
13 | 岩崎優 | 左左 |
14 | 岩貞祐太 | 左左 |
15 | 西純矢 | 右右 |
16 | 西勇輝 | 右右 |
17 | 青柳晃洋 | 右右 |
18 | 馬場皐輔 | 右右 |
27 | 伊藤将司 | 左左 |
35 | 才木浩人 | 右右 |
37 | 及川雅貴 | 左左 |
41 | 村上頌樹 | 右左 |
46 | 島本浩也 | 左左 |
47 | 桐敷拓馬 | 左左 |
49 | 大竹耕太郎 | 左左 |
50 | 富田蓮 | 左左 |
54 | 加治屋蓮 | 右右 |
64 | 岡留英貴 | 右右 |
65 | 湯浅京己 | 右右 |
69 | 石井大智 | 右右 |
98 | コルテン・ブルワー | 右右 |
99 | ジェレミー・ビーズリー | 右右 |
捕手
内野手
外野手
オリックス・バファローズ
首脳陣
役職 | 背番号 | 名前 |
---|---|---|
監督 | 78 | 中嶋聡 |
ヘッドコーチ | 88 | 水本勝己 |
投手コーチ | 72 | 平井正史 |
投手コーチ | 75 | 厚澤和幸 |
打撃コーチ | 83 | 小谷野栄一 |
打撃コーチ | 79 | 辻竜太郎 |
内野守備・走塁コーチ | 77 | 梵英心 |
外野守備・走塁コーチ | 81 | 田口壮 |
バッテリーコーチ | 87 | 斎藤俊雄 |
投手
背番号 | 名前 | 投打 |
---|---|---|
11 | 山﨑福也 | 左左 |
13 | 宮城大弥 | 左左 |
16 | 平野佳寿 | 右右 |
17 | 曽谷龍平 | 左左 |
18 | 山本由伸 | 右右 |
19 | 山岡泰輔 | 右左 |
26 | 斎藤響介 | 右右 |
29 | 田嶋大樹 | 左左 |
35 | 比嘉幹貴 | 右右 |
45 | 阿部翔太 | 右左 |
46 | 本田仁海 | 右左 |
52 | 横山楓 | 右両 |
56 | 小木田敦也 | 右右 |
57 | 山田修義 | 左左 |
58 | ジェイコブ・ワゲスパック | 右右 |
63 | 山﨑颯一郎 | 右右 |
95 | 東晃平 | 右右 |
96 | 宇田川優希 | 右右 |
捕手
内野手
背番号 | 名前 | 投打 |
---|---|---|
3 | 安達了一 | 右右 |
5 | 西野真弘 | 右左 |
6 | 宗佑磨 | 右左 |
8 | マーウィン・ゴンザレス | 右両 |
9 | 野口智哉 | 右左 |
10 | 大城滉二 | 右右 |
24 | 紅林弘太郎 | 右右 |
30 | 廣岡大志 | 右右 |
40 | レアンドロ・セデーニョ | 右右 |
53 | 宜保翔 | 右左 |
67 | 中川圭太 | 右右 |
外野手
試合結果
☆は勝利投手、★は敗戦投手、Sはセーブ。
第1戦
10月28日(土)@京セラドーム大阪
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
阪神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 4 | 3 | 0 | 0 | 1 | 8 |
オリックス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
- 【バッテリー】
オリックス: 山本★、山田、ワゲスパック、山岡、阿部 - 若月
阪神: 村上☆、加治屋、岩貞 - 坂本
- 【本塁打】
オリックス: なし
阪神: なし
戦評
オリックスの先発は史上初となる3年連続投手四冠に輝いたチームの絶対的エース・山本由伸、
対する阪神は今年自身初となる最優秀防御率のタイトルを獲得した虎の村神様こと村上頌樹。
両チームのエースが先発ということもあり投手戦になる…と思われていたのだが阪神が5回に先頭の佐藤輝明が初球で盗塁を決め、ノイジーのフライでタッチアップし3塁へ。7番DHで出場していた渡邉諒が先制タイムリーを放ち阪神が先制。その後も阪神は攻撃の手を緩めず、1番近本光司、2番中野拓夢もタイムリーを放ち4点をリード。6回にも2死1・3塁のチャンスで8番木浪聖也、9番坂本誠志郎がタイムリーを放ち6-0となったところで山本が降板。
一気に山本を打ち込みワンサイドゲームで快勝。
阪神は僅かなチャンスを逃さず打ち込むことに成功し、投手も先発の村上が7回100球2安打無失点の快投を見せそれを受けた2番手加治屋、3番手岩貞が3者凡退に抑えビジターでの連敗を9で止めた(ちなみに日本シリーズにおいてビジター戦で勝利したのも38年ぶりである)。
一方オリックスは絶対的エースだった山本がまさかの自己ワーストとなる6回途中10安打7失点でノックアウトされてしまい、打線も4回までパーフェクトに抑え込まれ阪神投手陣の前に打った安打は僅か2安打と惨敗となった。
第2戦
10月29日(日)@京セラドーム大阪
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
阪神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
オリックス | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 3 | 1 | X | 8 |
- 【バッテリー】
オリックス: 宮城☆、宇田川、山﨑颯、小木田 - 森
阪神: 西勇★、ビーズリー、岡留、島本、加治屋 - 坂本、長坂
- 【本塁打】
オリックス: なし
阪神: なし
戦評
オリックスの先発はチームの次世代エース格宮城大弥、
阪神の先発は古巣との対戦となる西勇輝。
オリックスが前日とスコアを逆転させて勝利した。3回に先制点を挙げると、4回には集中打で先発の西をノックアウト。7回にも満塁のチャンスを作ると、マーウィン・ゴンザレスが走者一掃の3点二塁打を放った。オリックスの先発・宮城大弥は6回無失点の好投でチームに勢いをもたらした。
阪神は古巣と対戦した西勇輝が4回途中4失点でノックアウトされ、前日には13安打放った打線もこの日はわずか4安打に抑えられた。
第3戦
10月31日(火)@阪神甲子園球場
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オリックス | 0 | 0 | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 5 |
阪神 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 4 |
- 【バッテリー】
阪神:伊藤将★、ブルワー、岩貞、石井、桐敷 - 坂本
オリックス:東☆、小木田、山岡、宇田川、平野S - 若月
- 【本塁打】
阪神: なし
オリックス: 頓宮1号(4回表ソロ)
戦評
オリックスが接戦を制して連勝。1点を追う4回に頓宮裕真のソロ本塁打で同点に追いつき、5回には廣岡大志の三ゴロ間の1点で勝ち越しに成功。宗佑磨の2点適時打も絡み、この回に一挙3点を奪った。さらに6回には若月健矢の犠飛で追加点を挙げ、その後はピンチを招くも宇田川優希・平野佳寿の勝ちパターンで逃げ切った。
阪神は2回に坂本誠志郎の二ゴロの間に先制点を挙げるも追加点がなかなか奪えず、7回に中野拓夢の三ゴロ間と森下翔太の2点適時打で3点を返したが反撃はここまで。9回には平野を追い込んで二死一二塁とサヨナラのチャンスを作ったが、最後は大山悠輔が空振り三振に斬られた。
第4戦
11月1日(水)@阪神甲子園球場
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オリックス | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 3 |
阪神 | 1 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1X | 4 |
- 【バッテリー】
阪神: 才木、桐敷、石井、島本、湯浅、岩崎☆ - 坂本
オリックス: 山崎福、比嘉、阿部、小木田、宇田川、ワゲスパック★ - 森
- 【本塁打】
阪神: なし
オリックス: なし
戦評
阪神はこの年キャリアハイとなる8勝をあげた本格派エース才木浩人、
オリックスはこの年自身初となる2ケタ勝利をあげた山崎福也が先発した。
阪神は1回裏、一死二塁から森下翔太の適時二塁打で先制。一方のオリックスも2回表に一死三塁から紅林弘太郎の適時打で同点に追いつく。その後阪神は3回裏、二死一二塁のチャンスで近本光司が左翼への適時打を放ち1点を勝ち越すと、5回裏には一死一三塁で大山悠輔の遊撃ゴロの間に走者が生還し、3対1とリードを広げた。阪神先発の才木は途中手から流血しながらも5回1失点の投球で先発の任務を遂行。6回からは桐敷拓馬を2番手に送り、継投策に入った。7回表、佐藤輝明の失策をきっかけにオリックスが同点に追いつく。その後阪神は8回表にも一死一三塁のピンチを招いたが、代打の代打を立てられた島本、4ヶ月半に渡り一軍から戦線離脱していた湯浅京己が登板してそれぞれサードゴロ、セカンドフライに打ち取り(特に後述は僅か1球で打ち取った)勝ち越しを許さなかった。
同点で迎えた9回裏は平野ではなくジェイコブ・ワゲスパックを投入した。しかしワゲスパックは一死を取った後に近本に四球、続く中野に二度の暴投を喫するなどの大乱調であり、それを見かねた中嶋監督がフルカウントとなっていた中野、2試合連続打点をあげ復調しつつあった森下翔太に対して併殺狙いの二度の申告敬遠を宣告、満塁策で不調の四番・大山悠輔との勝負という賭けに出た。その大山はファールで粘りに粘ってフルカウント7球目で適時打を放ちサヨナラ勝ち。
阪神がシーソーゲームを制して勝敗を五分に戻した。
第4戦はこの年の日本シリーズで最も長い試合で大山がサヨナラ適時打を決める直前に22時を回っており、鳴り物の応援が禁止となったことで地鳴りのような声援が阪神甲子園球場を包み込んだ。
第5戦
11月2日(木)@阪神甲子園球場
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
オリックス | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 2 |
阪神 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | X | 6 |
- 【バッテリー】
阪神: 大竹、西純、島本、石井、湯浅☆、岩崎 - 坂本
オリックス: 田嶋、山崎颯★、宇田川、阿部 - 若月
- 【本塁打】
阪神: なし
オリックス: ゴンザレス1号(4回表ソロ)
戦評
2勝2敗、勝った方が王手をかける大事な試合。
阪神は現役ドラフト制度で福岡ソフトバンクホークスから移籍し、規定投球回未満ながら勝ち頭となる12勝を挙げた大竹耕太郎、オリックスは田嶋大樹が先発した。
オリックスはマーウィン・ゴンザレスの本塁打で先制するも大竹を攻略しきれなかった。7回表に阪神がピンチを招き、森友哉をセカンドゴロに打ち取ったかに思われたが中野が後逸。カバーに入った森下も3塁走者に気を取られよそ見していたことでボールを取り損ね、思わぬ形で追加点を与えてしまった(この後、岡田彰布監督が明らかに空気が悪くなっていたことを察し阪神ナインに円陣を組ませ気合いを入れ直した)。
その後、オリックスは8回裏に田嶋から山崎颯一郎に継投。しかしこの継投策が結果的に大失敗となってしまう。先頭の木浪聖也の高いバウンドのゴロを安達が悪送球してしまいボールデッド。無死2塁とするとここが勝負どころと言わんばかりに岡田監督が湯浅の代打で糸原健斗を起用。
その糸原がポテンヒットを打ち無死1・3塁とし日本シリーズ好調の1番近本が適時打を放ち1点を返す。続く中野がバントを決め1死2・3塁となったところでオリックスは山崎を諦め宇田川優希(この時の宇田川は3連投、更にはレギュラーシーズンでもなかった4試合連続登板であった)にスイッチするが、森下に逆転の2点タイムリースリーベースを打たれ逆転。大山にもタイムリーを許し宇田川に代わってから一つもアウトも取れず阿部翔太にスイッチ。しかしこれでも勢いは止まらず7番坂本誠志郎にダメ押しの右越2点適時打三塁打を打たれ終わってみれば打者一巡・一挙6点の猛攻となり9回守護神岩崎が3者凡退に抑え込みゲームセット。
阪神は森下が見事汚名返上し、これがきっかけで甲子園に詰めかけていた阪神ファンのボルテージが最高潮となり、ホーム球場の力で阪神野手陣を後押しして絶対に落とせないホーム最終戦で見事大逆転勝利を収め、日本一に王手をかけた。
一方のオリックスは先発の田嶋が7回83球とスムーズに阪神打線を抑え込んでいたにもかかわらず継投策に出たことが大きく裏目に出てしまい、勢いに乗った阪神打線と熱狂する阪神ファンの流れにのまれ後がなくなった。
第6戦
11月4日(土)@京セラドーム大阪
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
阪神 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
オリックス | 0 | 2 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | X | 5 |
- 【バッテリー】
オリックス: 山本☆ - 若月
阪神: 村上★、西勇 - 坂本
- 【本塁打】
オリックス: 紅林1号(5回裏2ラン)、頓宮2号(8回裏ソロ)
阪神: ノイジー1号(2回表ソロ)
戦評
先発は第1戦と全く同じ組み合わせとなった。
この日はオリックスの絶対的エース・山本由伸の計14個にもなる奪三振ショーが展開され、日本シリーズ奪三振数新記録を達成して完投勝利し逆王手を掛けた。
2回表にシェルドン・ノイジーからソロ本塁打(第6戦にしてこれが阪神初の本塁打だった)を被弾したものの、それ以外は終始圧倒的な力で山本が阪神打線を抑えつけた。第1戦の汚名を返上し、ポストシーズンで幾度も苦しんでいた自身にとっても嬉しい日本シリーズ初白星となった。なお山本はこのシーズン終了後にロサンゼルス・ドジャースに移籍したため、これが渡米前最後の登板となった。
打線も2回裏に若月健矢の適時打と中川圭太の犠飛ですぐさま逆転し、5回には紅林弘太郎、8回には頓宮裕真がそれぞれ本塁打を放って阪神を突き放した。
阪神はノイジーのソロ本塁打があったものの終始打線が山本に圧倒され、先発の村上頌樹も5回4失点と崩れてしまった。この試合では敗戦処理として第2戦先発の西勇輝が起用された。
第7戦
11月5日(日)@京セラドーム大阪
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
阪神 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 | 1 | 7 |
オリックス | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
- 【バッテリー】
オリックス: 宮城★、比嘉、小木田、宇田川、山崎颯、東 - 森
阪神: 青柳、島本、伊藤将☆、桐敷、岩崎 - 坂本
- 【本塁打】
オリックス: 頓宮3号(9回裏ソロ)
阪神: ノイジー2号(4回表3ラン)
戦評
令和初のフルセットで迎えた日本シリーズ最終戦(引き分けなしであり、純粋に勝った方が日本一となる試合が令和に入ってから初めて実現した)。
オリックスの先発は第2戦で阪神打線を圧倒した宮城大弥、
対する阪神はポストシーズン初先発初登板となる青柳晃洋。
3回まで両チームともに無得点だったが、4回表に森下の安打と大山の死球で一死一二塁とすると、ノイジーが会心の一撃となる3ラン本塁打を放ち、先制点を挙げた。
5回にも一死一二塁のチャンスを作り、中野が併殺崩れで二死一三塁としたところで宮城が降板。
二番手の比嘉幹貴に交代するも阪神打線の勢いは止まらず、クリーンナップの森下・大山・ノイジーに3連続適時打が飛び出し6-0とオリックスを突き放した。
阪神先発の青柳は4回3/2まで投げて降板。勝敗こそつかなかったがこの間を無失点に抑え、PS初先発ながらこの大一番で見事先発としての仕事を成し遂げた。5回のピンチは二番手の島本浩也が見事火消しした。その後は3番手として伊藤将司が登板して8回までを無失点に抑え、第3戦のリベンジを果たした。
9回表には第3戦の先発だった東晃平から森下が適時打を放ち、試合を決定づけた。
9回裏はまず桐敷が登板し、先頭の紅林にヒットを許すも次の森友哉を併殺打に打ち取ったところで守護神・岩崎優に交代。その岩崎だったが頓宮に初球ソロ本塁打を打たれてしまい、続くゴンザレスにもヒットを許し最後の最後で何とも締まらないお笑い展開こそ招いたものの、最後は杉本裕太郎を左飛に討ち取ってゲームセット。
阪神タイガースが38年振り2度目の日本一に輝いた。
連覇が懸かっていたオリックスは先発の宮城がノイジーの会心の一撃に泣かされる結果となり、打線も頓宮のソロを除いて沈黙した。
表彰選手
- MVP(最優秀選手): 近本光司(阪神)
阪神のリードオフマン(1番打者)として全試合に出場し、打率.483(29-14)を記録する活躍を見せた。第1戦、第4戦、第7戦で猛打賞を記録(第4戦は5打席全て出塁、第7戦は4安打)。14安打は日本S歴代3位の快挙である。球団の日本人選手初となる日本SのMVPとなった。
- 敢闘選手賞: 紅林弘太郎(オリックス)
守備ではショートを担いファインプレーを連発。打撃においても第2戦から6試合連続安打を記録し、第6戦で阪神・村上頌樹から2ランHRを放ったほか、打率も.400(20-8)を記録した。
- 優秀選手賞: シェルドン・ノイジー(阪神)
第6戦・第7戦でオリックスの山本と宮城からそれぞれ先制ホームランを放った。
特に後者は3ランであり、試合の主導権を握るきっかけにもなった。
第7戦では5回に森下・大山に続いてタイムリーも打ち、4打点と大活躍した。
- 優秀選手賞: 森下翔太(阪神)
シリーズを通して阪神の3番に定着し、ルーキー(新人選手)としての日本S記録を更新する7打点の活躍を見せた。第3戦から3試合連続で打点を記録し特に第5戦では自身の失策を取り返す逆転の2点タイムリー3塁打を放った。
- 優秀選手賞: 山本由伸(オリックス)
第1戦こそ打ち込まれて敗戦投手となったものの、第6戦では日本S新記録となる1試合14奪三振で完投勝利。オリックスのエースとしての貫禄を見せた。
- SMBCみんなの声援賞: 大山悠輔(阪神)
X(旧Twitter)でファンから最もタグ付きのツイートをされた選手が表彰される。
レギュラーシーズンから全試合で阪神の4番を担った。シリーズでは打率.179と苦戦したものの、第4戦で満塁策を講じられた末にサヨナラタイムリーを放っており、第5戦、第7戦でタイムリーを打ち4番の意地を見せた。
その他
- 阪急ブレーブス系の古参ファンの中には、阪急ブレーブス対阪神タイガースの日本シリーズを題材としたかんべむさし氏のSF小説「決戦・日本シリーズ」に因み、「今津線シリーズ」と呼ぶ人もいた。
- しかしながら2006年の「阪急・阪神経営統合」により阪急阪神ホールディングスが結成されて以降は、かつて阪神のライバルだった阪急電鉄が阪神タイガースの経営に参画するようになった(2023年からは阪急出身者の杉山健博氏が阪神球団のオーナーに就任している)。日本一の際にも阪急電鉄の公式Xアカウントが阪神タイガースの日本一を祝福する投稿を行うなどしている。
- 阪神タイガースは1985年以来38年ぶりに日本シリーズを勝利したが、これは、2007年の中日ドラゴンズ(1954年以来53年ぶり)、2006年の北海道日本ハムファイターズ(東映フライヤーズ時代の1962年以来44年ぶり、なお相手は阪神)に次ぎ、1998年の横浜ベイスターズ(大洋ホエールズ時代の1960年以来38年ぶり)と並ぶ3位タイのブランクであった。
- 岡田監督は65歳11か月で日本一監督となったが、これは2013年の星野仙一(66歳9か月)に次ぐ年長記録で、2000年の長嶋茂雄(64歳8か月)を超えて最年長セリーグ日本一監督となった。
- また、岡田監督は前回の日本一を達成した1985年は現役選手として経験しており、阪神球団に於いて選手と監督の両方で日本一を経験したのは岡田が初めてとなった。(前回の日本一監督だった吉田義男は、現役時代の1962年と1964年に出場したがどちらも敗退したため。)
- 3勝3敗の状態で第7戦まで縺れたのは2013年以来10年ぶり。ちなみに、西暦の下1ケタが3の年の日本シリーズは、1973年を除いてすべて第7戦まで開催された。
- なお、当記録は引き分け試合をカウントせず、引き分けを含む場合は2年連続となる。
- 両軍の最終スコアは30-24だが、第6戦までの総得点は23-23の同点だった。8点差・1点差・4点差を2試合ずつで勝敗を分け合った。
- 阪神は6戦目にして初めて本塁打を放ったが、これは、2003年第7戦の広澤克実(現役最終打席)以来20年ぶりのことだった。(この間の2005年と2014年は1本も本塁打が出なかった)
- ちなみに本塁打2本のみで日本一を達成したのは、7試合まで戦った日本シリーズにおいて最少タイ記録(6回目)である。
- 京セラドーム大阪にて日本一が決まったのは、全球団を含めて今回が史上初である。
- シリーズ開幕前の10月11日には松山市で開催された第19回全日本女子硬式野球選手権の決勝において阪神傘下の阪神タイガースWomenが埼玉西武ライオンズ・レディースに勝利し、同大会では初のNPB傘下女子チーム(2023年時点では阪神・西武・巨人の3チームがある)日本一を達成した。この結果、阪神はNPB史上初の「男女ダブル日本一」となっている。
- 地上波では、日本シリーズ史上初めて民放のテレビ局5系列全てが最低1試合を中継した(第1戦&第7戦=フジテレビ、第2戦=テレビ東京、第3戦&第6戦=TBS、第4戦=日本テレビ、第5戦=テレビ朝日)。
両チームが出場した過去の日本シリーズ
太字は日本一。
阪神タイガース
- 1962年: 対 東映(2勝4敗1分、藤本定義監督)
- 1964年: 対 南海(3勝4敗、藤本定義監督)
- 史上初の関西ダービー。詳細は上記を参照。
- 1985年: 対 西武(4勝2敗、吉田義男監督)
- 球団創設以来初の日本一。2023年に阪神が日本一に輝くまで、このシリーズが阪神にとって唯一の日本一だった。
- 2003年: 対 ダイエー(3勝4敗、星野仙一監督)
- 全試合ホームチーム(後攻)が勝利した「完全内弁慶シリーズ」である。
- 2005年: 対 ロッテ(0勝4敗、岡田彰布監督)
- 合計スコアが「33-4」となった伝説のシリーズとして語り継がれている。詳細は当該記事参照。この時の監督だった岡田彰布氏は、2023年に(チームこそ違えど)18年振りにリベンジを果たした。
- 2014年: 対 ソフトバンク(1勝4敗、和田豊監督)
- レギュラーシーズン2位ながらもクライマックスシリーズで首位の巨人を撃破。阪神が初めてCSを突破した。またこのシリーズは第5戦で守備妨害により日本一が決まってしまった初の事例である。
オリックス・バファローズ
阪急ブレーブス時代
- 1967年: 対 巨人(2勝4敗、西本幸雄監督)
- 1968年: 対 巨人(2勝4敗、西本幸雄監督)
- 1969年: 対 巨人(2勝4敗、西本幸雄監督)
- 1971年: 対 巨人(1勝4敗、西本幸雄監督)
- 1972年: 対 巨人(1勝4敗、西本幸雄監督)
- この5回は巨人の全盛期「V9」(1965年から1973年)にあたる時期であり、9回の日本一のうち半分以上を阪急が献上した。
- 1975年: 対 広島(4勝0敗2分、上田利治監督)
- 1976年: 対 巨人(4勝3敗、上田利治監督)
- 1977年: 対 巨人(4勝1敗、上田利治監督)
- 1975年に球団史上初の日本一となり、そこから怒涛の日本シリーズ3連覇を果たした。このうち1976年は「花の44年組(福本豊、加藤秀司など)」が驚異的な活躍を見せ「阪急史上最強の年」とまで言われた。
- 1978年: 対 ヤクルト(3勝4敗、上田利治監督)
- 1984年: 対 広島(3勝4敗、上田利治監督)
オリックス・ブルーウェーブ時代
- 1995年: 対 ヤクルト(1勝4敗、仰木彬監督)
- 1996年: 対 巨人(4勝1敗、仰木彬監督)
- 1991年からオリックスはグリーンスタジアム神戸(現: ほっともっとフィールド神戸)を本拠地としていた。1995年の阪神・淡路大震災で神戸市は壊滅的被害を被ったが、球団オーナーの宮内義彦(神戸市出身)が発破をかけたことで、この年から1998年までは「がんばろう神戸」をスローガンに掲げ戦うこととなった。1995年は日本Sで敗れたものの、1996年はリーグ優勝・日本一を共にグリーンスタジアムで達成した。
オリックス・バファローズ時代
- 2021年: 対 ヤクルト(2勝4敗、中嶋聡監督)
- 2022年: 対 ヤクルト(4勝2敗1分、中嶋聡監督)
- 2005年の大阪近鉄バファローズとの合併以降では初の日本一。また近鉄は球団消滅まで一度も日本一がなかったため、1962年に近鉄が「バファローズ」という名を冠してから60年経って初めて日本一を掴み取ることとなった。
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