2024年の日本シリーズ
にせんにじゅうよねんのにっぽんしりーず
本大会の表題は「SMBC日本シリーズ2024」。
2014年以来、11年連続で三井住友銀行(SMBC)がタイトルスポンサーを務める。
シーズン91勝・貯金42かつ2位・日本ハムに13.5ゲーム差をつけて、4年ぶりにパ・リーグ優勝を果たした小久保裕紀監督率いる福岡ソフトバンクホークスと、セ・リーグ3位、貯金2・勝率.507ながら、クライマックスシリーズで阪神と巨人を破って7年ぶりに日本シリーズに進出した三浦大輔監督率いる横浜DeNAベイスターズ ※1が日本一を賭けて激突した。
この2チームによる組み合わせの日本シリーズは、2017年以来、7年ぶり2度目となる。なお、7年前の日本シリーズでもDeNAはレギュラーシーズン3位でありながら阪神と広島を撃破(対戦相手のソフトバンクに関しても、今回と同じく圧倒的な強さでリーグ優勝を果たしている)しており、出場した時の順位も前回の対戦時と全く同じである。さらに言えば、レギュラーシーズンで3位だったチームが2度も日本シリーズ出場するのはNPB史上初となる。
なお、第6戦が開催される予定だった11月2日(横浜スタジアム)は、雨のために翌3日に順延となった。日本シリーズが雨で順延となるのは20年ぶりのことであるが、横浜スタジアムのような屋外球場での中止となると21年ぶりの事となる。
※1 この年のDeNAは1シーズン通算最低勝率での日本シリーズ出場となる。かつては1975年の阪急(.520)がこの記録を保持していたが、これをDeNAが49年ぶりに更新する形となった。ちなみに、この年の阪急も広島を倒して日本一に輝いている。当時のパ・リーグは前・後期の2期制が導入されており、阪急は75年シーズンの前期では優勝したものの、後期は最下位に沈んでいた。後期で優勝した近鉄バファローズとのプレーオフでも、初戦は落としたが第2戦以降は立ち直ってリーグ優勝を果たした。
※太字は前回対戦時(2017年)にも出場していた選手
横浜DeNAベイスターズ
首脳陣
福岡ソフトバンクホークス
首脳陣
投手
☆は勝利投手、★は敗戦投手、Sはセーブ。
第1戦
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 5 |
DeNA | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 3 |
- 【バッテリー】
ソフトバンク: 有原☆、ヘルナンデス、オスナ - 甲斐
DeNA: ジャクソン★、中川颯、坂本、佐々木、山﨑、堀岡 - 戸柱
- 【本塁打】
ソフトバンク: なし
DeNA: なし
戦評
ソフトバンクの先発はシーズン最多勝の有原、DeNAはエース東が故障明けから間もないため、ジャクソンが先発を務める。
2回、ソフトバンクは有原が自らタイムリーを放って、幸先良く2点を先制。本業のピッチングでも要所を抑えてDeNA打線に得点を許さなかった。
9回には今宮の2点タイムリーヒットと栗原のタイムリーヒットで3点を挙げてDeNAを突き放した。
DeNAは再三チャンスを作るも、有原の好投の前にあと一本が出ず、8回まで無得点に抑えられ、9回にも3点を奪われて5点差とされる。
最終回でもオスナの前に早々と二死まで追い込まれたが、7番梶原から森敬、代打・筒香、桑原と4連続安打で3点を返し、2アウトながら一・三塁で牧を迎える。
本塁打が出れば逆転サヨナラの場面だったが最後は中飛に倒れ、ソフトバンクが先勝した。また、日本シリーズで勝利と決勝点を同時に記録したのは、1986年の日本シリーズ第5戦で延長サヨナラタイムリーを放った工藤公康氏以来、38年ぶりとなる。
第2戦
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 2 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 |
DeNA | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 |
- 【バッテリー】
ソフトバンク: モイネロ☆、尾形、ヘルナンデス、オスナS - 甲斐
DeNA: 大貫★、佐々木、濵口、中川颯、坂本、伊勢 - 戸柱、松尾
- 【本塁打】
ソフトバンク: 山川1号(1回表2ラン・大貫)
DeNA: なし
戦評
ソフトバンクは初回、山川の2ランで幸先よく2点を先制する。
3回には一死満塁から牧原の適時打で2点を挙げ、DeNAの先発大貫をKO。
続く甲斐が2番手・佐々木から犠飛を打って5点目を挙げ、4回には山川が3番手で登板した濱口からタイムリーを放ち、序盤で6点を挙げて試合を優位に進めた。
DeNAは4回まで先発・モイネロの前に1安打に抑えられていたが、5回には一死二・三塁のチャンスを作ると桑原が左翼へ2点適時打を放ち2点を返す。しかし、3番牧は併殺に倒れ、リクエストも覆らず2点止まりに。
7回には二死ながら一・二塁のチャンスを作ると、牧がソフトバンクの2番手・尾形から左翼線へ適時打を放ち1点を返し、なおも二死二・三塁と追加点のチャンスだったが、続く筒香は遊ゴロに倒れ1点止まりに。
DeNA救援陣は5回以降ソフトバンク打線をすべて三者凡退に抑えたが、序盤の大量失点が最後まで響き、8回・9回と三者凡退に倒れ、ソフトバンクが2連勝。2018年から続く日本シリーズでの連勝記録を14に伸ばした。
第3戦
10月29日(火)@ みずほPayPayドーム福岡
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DeNA | 1 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 1 | 0 | 4 |
ソフトバンク | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
- 【バッテリー】
DeNA: 東☆、伊勢、森原S - 戸柱
ソフトバンク: スチュワート・ジュニア、大津★、岩井、前田純、杉山、長谷川 - 甲斐
- 【本塁打】
DeNA: 桑原1号(5回表ソロ・大津)
ソフトバンク: なし
戦評
DeNAは怪我で一時戦列を離れていたチームの絶対的エース・東克樹が復帰。
ソフトバンクはスチュワート・ジュニアが先発。
試合は初回からいきなり動いた。
DeNAは先頭の桑原が二塁打を放ち、二番梶原が犠打を決めて一死三塁とすると、三番牧の遊ゴロの間に桑原が生還しわずか7球で先制する。
その裏ソフトバンクは二死一・三塁からDHに入った近藤が左翼に適時打を放ち、直ぐ様同点に追い付く。
その後、4回までは両先発が走者を出しながらも要所を抑え膠着状態が続いていたが、5回表、スチュワートの後を受けた2番手大津から桑原が左翼へ本塁打を放ちDeNAが勝ち越す。さらに安打と四球2つで無死満塁とすると、筒香が犠飛で追加点を挙げDeNAが2点をリードする。
さらに8回表には一死一塁から戸柱が適時二塁打を放ち、ソフトバンクを突き放した。
東はソフトバンク打線を7回1失点に抑える快投を見せ、8回は伊勢、9回はクローザーの森原が無失点で抑え、DeNAが一矢を報いた。被安打が二桁ながら1失点以下で勝利投手となったのは、1981年第5戦の西本聖投手以来43年ぶりで、史上3人目。
ソフトバンクは6安打のDeNAを上回る10安打を放つもDeNA投手陣の前に1点に抑えられ、この敗戦によって2018年から続いていた日本シリーズでの連勝が14でストップした。また、2011年から前回の2020年まで続いていた本拠地での日本シリーズ連勝記録も16でストップした。
第4戦
10月30日(水)@ みずほPayPayドーム福岡
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DeNA | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 4 | 0 | 0 | 5 |
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
- 【バッテリー】
DeNA: ケイ☆、坂本、ウェンデルケン - 戸柱
ソフトバンク: 石川★、尾形、岩井、松本晴、木村光 - 甲斐、海野
- 【本塁打】
DeNA: オースティン1号(4回表ソロ・石川)、宮﨑1号(7回表ソロ・尾形)
ソフトバンク: なし
戦評
ソフトバンクは石川、DeNAはケイが先発。
ケイは3回まで一人も走者を許さずに三振を6つも奪うという完璧な立ち上がりを見せる。
試合が動いたのは4回表。球数が嵩んで来た石川からオースティンがソロ本塁打を放ちDeNAが先制する。
ソフトバンクは4回裏、栗原が安打性の打球を放つも牧の好守に阻まれ、6回にはケイを攻め立て二死ながら二・三塁と逆転のチャンスを作ったが、山川が中飛に倒れて無得点に終わる。
続く7回表、ここまで打率0割8分3厘と苦しんでいた五番・宮﨑がソロ本塁打を放ち待望の追加点を挙げると、ここからDeNA打線が繋がり、一番桑原の2点適時打と四番オースティンの適時打など打者一巡の猛攻でこの回4点を挙げるビッグイニングを作り、ソフトバンクを突き放した。
ケイは7回無失点という文句の付けようのない投球内容を見せ、8回は坂本、9回はウェンデルケンがそれぞれ無失点に抑える完封リレーで連勝。2勝2敗の五分に戻し、PayPayドームでの胴上げを阻止した。
一方のソフトバンクは再三チャンスを作るも得点が奪えず、2017年第4戦以来の完封負け(なお、本拠地で完封負けを喫したのは、ダイエー時代の2000年第5戦以来24年ぶりで、ソフトバンクとしては初めて)、第3戦2回から17イニング連続の無得点と、不安を残す結果となった。
第5戦
10月31日(木)@ みずほPayPayドーム福岡
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
DeNA | 0 | 0 | 1 | 3 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 7 |
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
- 【バッテリー】
DeNA: ジャクソン☆、伊勢、中川颯 - 戸柱
ソフトバンク: 大関★、松本晴、前田純、杉山、尾形、津森、木村光 - 海野、嶺井
- 【本塁打】
DeNA: 牧1号(4回表3ラン・前田純)
ソフトバンク: なし
戦評
ソフトバンクは大関、DeNAは中4日でジャクソンが2度目の先発。
DeNAは初回、2回と一打先制の場面を作るも内野ゴロに抑えられソフトバンクも2回にチャンスを作ったが海野が三振に倒れ、先制点を奪えなかった。
3回表、DeNAは先頭の牧が中前打で出塁すると、その後二死一・二塁の場面で筒香が中前適時打を放ち、DeNAが3試合連続で先制し、ソフトバンクの先発・大関を降板に追い込む。
DeNAは4回、この回から登板した3番手の前田純から桑原と梶原の連続安打で無死一・二塁とすると、牧が左翼へ3ラン本塁打を放ち、リードを4点に広げた。
4点の援護を受けたジャクソンは第1戦の借りを返すかのようにスコアボードに0を並べ続ける粘投。7回は自身の暴投も絡んで二死二・三塁のピンチを招いたが、周東を二ゴロに打ち取り7回無失点と役割を果たした。
DeNAは9回、二死満塁で桑原が津森から死球を受け、押し出しで追加点を挙げると、続く梶原が代わった木村光から中堅へ駄目押しの2点適時打を放った。
DeNAは8回は伊勢、9回は中川颯が無失点で抑え、DeNAが敵地で3連勝し、26年ぶりの日本一に王手を掛けた。日本シリーズで2試合連続の完封勝ちは、1999年の福岡ダイエーホークス(第3・4戦)以来25年ぶり、セ・リーグ球団では1953年の読売ジャイアンツ(第4・5戦)以来71年ぶりで史上3度目。
一方のソフトバンクは本拠地でまさかの3タテを食らってしまった。しかも、2試合連続の完封負けかつ26イニング連続無得点となり、2011年(対中日)以来13年ぶりの日本シリーズ3敗目を喫し、令和における絶対王者が崖っぷちに追い込まれた。ホークスが日本シリーズで3連敗したのは、2003年の日本シリーズ第3戦から第5戦(全て阪神甲子園球場)以来22年ぶり、本拠地で3連敗したのは2011年の日本シリーズ第1、2、6戦以来13年ぶり、本拠地での3連戦3連敗は2000年の日本シリーズ第3戦から第5戦以来24年ぶり、2試合連続完封負けは、1953年の日本シリーズ第4戦(後楽園球場)第5戦(大阪球場)以来71年ぶり、本拠地での2試合連続完封負けとなると、南海ホークスが日本シリーズ初参戦した1951年の日本シリーズ第1、2戦(ともに大阪球場)以来73年ぶりの屈辱となった。
第6戦
チーム | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | R |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ソフトバンク | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 |
DeNA | 0 | 3 | 1 | 0 | 7 | 0 | 0 | 0 | X | 11 |
- 【バッテリー】
ソフトバンク: 有原★、尾形、スチュワート・ジュニア、岩井、杉山、ヘルナンデス、津森 - 甲斐
DeNA: 大貫、濵口、坂本☆、森原 - 戸柱
- 【本塁打】
ソフトバンク: 柳田1号(4回表2ラン・大貫)
DeNA: 筒香1号(2回裏ソロ・有原)
戦評
悲願の日本一に王手を掛けたDeNAは、第2戦でKOされた大貫がリベンジ登板。
2連勝の後に3連敗を喫して後がなくなったソフトバンクは、第1戦で投打に渡る活躍を見せた有原に託した。
2回裏、先頭の筒香が先制のソロ本塁打を放つと、その後二死二・三塁から桑原が左翼へ2点適時打を放ち3点を挙げる。
3回裏には二死満塁から森敬が押し出し四球を選び追加点を挙げた。
4回表、ソフトバンクは無死一塁から柳田がバックスクリーンへ2ランホームランを放ち、ソフトバンクの連続無得点は29イニングで止まった。
そして5回裏、DeNAの打線が大爆発した。
ソフトバンクの3番手として登板したスチュワートから連打と四球で一死満塁とすると、桑原が四球を選び押し出しで1点、梶原も適時打で続き1点を挙げてスチュワートをKO、4番手の岩井が登板する。
牧は二直に倒れたが、オースティンは死球で押し出し、筒香が走者一掃の3点二塁打を放ちこれで10点目。打線が一巡して宮﨑がとどめの二塁打を放ち、かのマシンガン打線を彷彿とさせる打者一巡の猛攻で一挙7点のビッグイニングを作り出した。
1イニング7得点は2017年第1戦5回裏にソフトバンクが記録して以来で、DeNAがそっくりそのままやり返す形となった。
DeNA投手陣は大貫は柳田に2ランを浴びるも4回2失点にまとめ、5回は濵口、6回と7回は坂本、8回は伊勢へと繋ぎ、9回は森原がきっちり締めてゲームセット、横浜DeNAベイスターズが26年ぶり3度目(前身の大洋時代も含む)の日本一に輝いた。
一方のソフトバンクは、先発として登板した有原が大誤算となり、5回裏にも7得点のビッグイニングを作られて力尽きた。ホークスが日本シリーズで4連敗を喫したのは、南海時代の1973年とダイエー時代の2000年に続いて3度目で、同シリーズでの2桁失点は、1952年の第2戦と1966年の第1戦※以来、58年ぶり3度目の屈辱となった。
※1952年、1966の日本シリーズで対戦した相手はいずれも巨人である。
ペナントシーズンでの苦戦ぶりや元々の戦力差も相まって、前評判では劣勢と見なされていたDeNAであったが、CSを下剋上で突破した勢いをそのまま維持しつつ、打線は全試合で3点以上を叩き出しせば、投手陣も3試合目以降は失点を3点以下に抑え、2017年のリベンジを果たすことに成功した。
一方、盤石に見えたソフトバンクは1戦目から中継ぎや抑えの脆さが露呈。
3戦目以降は四球で走者を溜めたところをDeNAに押し出しされたり、痛打されて先発陣が降ろされ、中継ぎも勢いを止められず大量失点を許す試合が続出。
打線も3試合目以降はほぼ沈黙し、29イニング連続無得点という不名誉な新記録を打ち立ててしまい、第6戦も柳田の2ラン以降は再び抑え込まれ圧倒されてしまった。
また、第2戦までは打てていた主砲の山川穂高が第3戦以降ほとんど抑えられたのも致命傷となった。
また、後述のように小久保監督や村上隆行打撃コーチの失言も目立ち、更には第6戦ではリードを許しながらも継投する羽目になるという、これ以上の失点は防ぎつつも追撃したいという場面で好調だったヘルナンデスを出し惜しみ、何故かスチュワート・ジュニアや岩井を投入。その結果、四球からの押し出しや痛打を浴びて7失点を喫した。その後の勝敗がほぼ決した7回にヘルナンデスを投入するなど、ファンだけでなく『プロ野球ニュース2024』に出演していた真中満氏からも疑問符を投げかけられていた。
今回はDeNAの快進撃が光った一方で、レギュラーシーズンを圧倒的な強さで制したにもかかわらず、その強さを発揮出来なかったソフトバンクの低迷ぶりが目立ったシリーズでもあった。
- 最優秀選手(MVP): 桑原将志(DeNA)
- 打率.444、1本塁打、9打点(6試合で9打点という記録は1966年の巨人・長嶋茂雄と1985年の阪神・ランディ・バースに並ぶタイ記録)という成績を残して堂々のMVPに輝いた。それだけではなく、第2戦から5試合連続の打点を挙げるという日本シリーズ史上初の快挙も成し遂げ、第3戦ではチームのシリーズ初ホームラン、出場した全試合でヒットも記録するなど、チームの日本一に大きく貢献した。
- また試合前に積極的にチームを鼓舞したこともあり、チームの士気を高めたという面でも(ファンからは)MVPとされている。
- ベイスターズの選手が日本シリーズのMVPを獲得したのは、1998年の日本シリーズでMVPを獲得した鈴木尚典氏以来3人目で、右打者としてはチーム史上初。
- 敢闘選手賞: 今宮健太(ソフトバンク)
- 打率.375、2打点。第1戦では9回表に追加点を挙げるタイムリーを放つなど、ホークス打線が沈黙する中で孤軍奮闘の活躍を見せた。
- 優秀選手賞: 筒香嘉智(DeNA)
- 打率.286、1本塁打、6打点。本年の途中でNPB復帰となったが、第3戦で追加点となる犠飛、第6戦では自身7年ぶりの本塁打となる先制ソロ、加えて5回には満塁のチャンスで走者一掃のタイムリーツーベースを放つなど、4打点を挙げる大活躍を果たした。
- ちなみに、この年のDeNAは「筒香がホームランを打った試合では全試合DeNAが勝利する」という流れが出来ており、第6戦でもチームを勢い付かせるホームランを放ち、ベイスターズの日本一に大きく貢献した。
- 優秀選手賞: アンソニー・ケイ(DeNA)
- 福岡での第4戦に先発。7回被安打4、7奪三振、無失点の快投で勝利投手となった。
- 優秀選手賞: アンドレ・ジャクソン(DeNA)
- 横浜での第1戦と福岡での第5戦に先発。第1戦では敗戦投手となったものの5連続奪三振を記録し、第5戦では7回被安打3、8奪三振、無失点の好投でシリーズ初勝利を挙げた。
- SMBCみんなの声援賞: 牧秀悟(DeNA)
- X(旧Twitter)でファンから最もタグ付きのツイートをされた選手が表彰される。打率.222、1本塁打、2打点。シリーズ全体としてはかなり苦しんだものの、第5戦ではホームランを放っており、チームの若きキャプテンとしての意地を見せた。
- DeNAは1998年以来26年ぶり3度目の日本一となったが、レギュラーシーズンでは3位だったため、リーグ優勝回数より日本一の回数が上回るという珍事が発生した。
- レギュラーシーズン3位からの日本一は2010年の千葉ロッテマリーンズ以来14年ぶり2度目、セ・リーグ球団では初となる。
- 先述した通り、ソフトバンクは貯金42、DeNAは貯金2であり、貯金40差をひっくり返しての日本一は1971年の巨人対阪急(巨人18、阪急41)の貯金23差を上回り、NPB史上最大の大逆転勝利となった。
- DeNAの三浦大輔監督は1998年にも選手として出場しており(2017年は既に引退しているため不出場)、前身の大洋ホエールズ時代を含めても、選手と監督の両方で横浜球団で日本一を経験した初の人物となった。さらに横浜球団で投手出身の監督が日本一になるのは、1998年の日本シリーズでベイスターズを優勝に導いた権藤博氏に次いで2人目。
- DeNAの勝利によって、日本シリーズの通算成績はセ38勝、パ37勝となってセ・リーグが勝ち越す形となったが、セ・リーグ勢が2年連続で勝利したのは2000年~2002年(2000年・巨人、2001年・ヤクルト、2002年・巨人)以来22年ぶりである。
- 一方のソフトバンクは、ダイエー時代の2000年以来24年ぶり、かつ球団の親会社がソフトバンクになってからは初の日本シリーズ敗退を喫した。奇しくもダイエー時代に出場した2000年と同じく、シリーズ開幕から2連勝してからの4連敗となった。さらに、前身の南海・ダイエー時代を含めても、読売ジャイアンツ以外のセ・リーグ球団に日本シリーズで土をつけられたのは史上初。
- 第3戦では、ソフトバンクの村上隆行打撃コーチが「東(東克樹、この試合のDeNA先発)よりも宮城(宮城大弥、オリックス・バファローズの投手。ちなみにこの年のオリックスはシーズン5位だった)の方が断然良い」と発言したが、ここから4連敗を喫して日本一を逃した。
- これは35年前の1989年(巨人対近鉄、この時は巨人が勝利)に於ける加藤哲郎氏の「巨人は(この年は最下位だった)ロッテより弱い」を思い起こさせるような発言だった。当時の村上コーチは近鉄に所属しているが、先述の加藤氏本人はX(Twitter)上で「お前、いらんこと言わんでええねん」と苦言を呈している。詳しくは巨人はロッテより弱いを参照。
- また、この試合ではホークスファンによる指笛が投球を妨害していたとして東が審判を通して抗議を行い、選手への指笛は控えるよう警告のアナウンスが流れた。試合後に小久保監督は指笛について記者から聞かれると「大爆笑した」と発言して炎上した。東はXで(炎上覚悟で審判に抗議した理由について)理由を説明し、これらに藤川球児氏(次期の阪神タイガース監督)や野口寿浩氏らが理解を示したことで、ホークスのコーチ陣が指笛を使って球種を伝えていた可能性があることが示唆されている。
- このシリーズではTBSが第1戦を中継していた裏でフジテレビがワールドシリーズ(ロサンゼルス・ドジャースVSニューヨーク・ヤンキース)の"録画再放送"を強行していたことが発覚。これを受け、NPBがフジテレビに与えていた取材パスを没収したことが報じられた。なお、第3戦についてはフジテレビが放映権を取得していたため、これも没収されるかと思われたが、第3戦の中継元であるテレビ西日本がフジテレビとは別会社ということで、放映権の没収は見送られた。
- 実は、シリーズの開幕直前に解説者達が毎年恒例の勝敗予想をしている。多くの解説者が4勝1敗か2敗でソフトバンクの優勝を予想していた(田尾安志氏のみ4勝3敗)。DeNAが勝つと予想した解説者もいたものの、全員が4勝3敗で優勝するという予想だったため、結果として、予想を的中させた解説者は誰1人いないという結果となった。