概要
1937年にウォルト・ディズニー社のスタッフ、ジョー・グラントがアメリカン・コッカー・スパニエルの犬種の犬を主人公とした原案を作製。
そしてウォルトの「2匹の犬の物語にしたい」という提案を基に、ウォード・グリーンが原作となる小説を制作。試行錯誤の末、およそ20年の歳月を経て完成をみた作品である。
原題の『Lady and the Tramp』は直訳すると「お嬢様と風来坊」という意味である。
当時の日本の映画雑誌には「貴婦人と浮浪者」と記載されている。
本作は長編アニメーション映画初のシネマスコープ作品であり、この点も公開前から大きな話題になっていた。
それまでのディズニー映画は『白雪姫』や『ピノキオ』といった童話が原作となっているものが多かったが、本作は完全オリジナルストーリーである。
続編に『わんわん物語Ⅱ』がある。
レディーとトランプが、ミートボールスパゲティを食べるシーンは印象に残ってる人が多いのではないだろうか。
あらすじ
ディア夫妻の家にて夫・ジムが妻のダーリングへのクリスマスプレゼントとしてやってきたアメリカン・コッカー・スパニエルの女の子のレディ。夫妻の愛情を一身に受けていたが、やがて二人に子供が生まれる。レディは変化に戸惑いつつも赤ん坊を見守る。
ある日、夫婦の旅行中にベビーシッターとして猫好きで犬嫌いのセーラおばさんがやってきたために家を飛び出したレディは野良犬のトランプに助けられる。
生まれも育ちも異なる2匹であったが、やがて互いに惹かれ合うようになる。
しかし、レディが保健所に捕まってしまい…。
キャラクター
※吹き替えは左が1956年版、右が現在の声優。
バーバラ・ルディ(日本語吹き替え:宝田薫/藤田淑子)
裕福な家庭で飼われる血統書付きのアメリカン・コッカー・スパニエルの雌。
飼い主の夫婦の留守中に町へ飛び出し、そこで出会った野良犬のトランプと恋に落ちる。
トランプに自由に生きることを薦められるが、「赤ちゃんが心配」と家に帰ることを望む。
しかしトランプの失態で保健所に連れて行かれ、そこでトランプにかつて沢山のガールフレンドがいたことを知り腹を立てるが、後にトランプと仲直りをしてめでたく結ばれ、4匹の子犬が生まれた。
自由を愛する雑種の野良犬。機転が利き、勇敢。
また、いたずら好きで、ニワトリを追いかけるのが好き。
捕まった野良犬仲間を逃がしているため、保健所に目を付けられている。
さまざまな名で、曜日ごとに人間の家を渡り歩いて暮らしている。「赤ん坊が生まれると、人間は犬を愛してくれなくなる」との体験談を語るところから、飼い犬の経験もあると思われる。
レディと恋に落ちるが、他の野良犬たちの証言によると可愛い女の子に弱く、それまでにも幾つかの色恋沙汰があった。レディとはそれが原因で喧嘩別れになってしまうが、ディア家に侵入した大ネズミから赤ちゃんを守ったことでめでたくレディと結ばれ、ディア家の飼い犬になる。
- ジョック
ディア家の近所に住む山の手育ちのスコティッシュ・テリアで、血統にこだわりを持つ。
長い眉毛と鬚が特徴である。ある程度の老犬であることが窺えるが、トラスティと共にレディにプロポーズしようとする場面も。レディのよき友人であり、先輩としてよき相談相手でもある。
全体のしわが特徴的なブラッドハウンドで、ジョックとは近所での古い付き合い。
祖父のリライアブル爺さんを慕っており、その武勇伝を何度も語ろうとする。
また、よく利く鼻が自慢だが、その能力は既に…。
- ディア夫妻
夫はジム、妻がダーリング。レディを実の娘のように可愛がっているが、ダーリングが妊娠した際には、初めての子ども故に舞い上がっていたため、蔑ろにしがちとなったことがある。
しかし、赤ちゃんが生まれてからはレディにも変わらない愛情を注ぎ、旅行に出る時は赤ちゃんの世話や後述のセーラおばさんの手伝いを頼んだり、旅行から帰ってきた矢先にトランプが赤ちゃんの部屋に忍び込んだ大ネズミを追って家に入り込んで騒ぎを起こした時は、それを伝えようとしたレディを一番に信用するなど、絆が深いことが窺える。
セ-ーラおばさん
ジムの伯母。夫妻の旅行の間のベビーシッターとしてディア家にやってくる。犬を毛嫌いしているため、後述の飼い猫であるサイとアムに濡れ衣を着せられたレディは猛犬のレッテルを貼られ、口輪を付けられる羽目に。
セーラおばさんに可愛がられている飼い猫で、シャムネコの双子。
コミカルな持ち歌「シャムネコの歌」に乗って、ディア家でやりたい放題のいたずらをする。
ずる賢く意地悪で、レディにとって厄介者。
- トニー
ジョージ・ギボット(日本語吹き替え:中村哲/熊倉一雄、歌:池田直樹)
トランプが贔屓にしているイタリアン・レストランの主人。
トランプに対する呼び名は「タフガイ」。トランプがレディを連れてきたことを喜び、スパゲッティを振舞う。バンドネオンを演奏し「ベラ・ノッテ」を朗々と歌い上げる場面は本作の名場面の一つ。
- ジョー
ビル・トンプソン(日本語吹き替え:市村俊幸/はせさん治、歌:加賀清孝)
レストラン「トニー」の従業員。主人には頭が上がらない。
マンドリンを弾いてトニーの歌を盛り上げる。
ペギー・リー(日本語吹き替え:北原文枝/天地総子)
トランプの野良犬仲間の一匹、序盤で1度保健所の車から助けられているが、再度捕まったのか、保健所でレディと対面する。
保健所の野良犬達をまとめあげるなどのリーダーシップもある姉御肌と色気を持つ雌犬。
過去に犬の一座にいたという発言から、サーカスに所属していたと思われる。
- ブル
- ダクシー
ビル・トンプソン(日本語吹き替え:逗子とんぼ/山崎哲也)
- ボリス
- タフィー
- ペドロ
補足
映像・デザイン
様々な工夫が凝らされている。基本的に犬の視点からのアングルで描かれている為、人間の登場人物はその顔や表情が映されることが少なく、多くが腰から下の映像である。
特にジムとダーリングは主人公の飼い主であるにもかかわらずはっきりと顔が映る場面は皆無に等しい。一方、犬達の表情や仕草は人間のそれを投影する手法(レディの垂れ耳を女性の長髪に見立てる等)を使っている為、非常に人間臭さが出ている。
その結果、視聴者はさながら犬の世界に飛び込んだかのような感覚で物語に入り込むことができる。また、当時シネマスコープに対応した劇場が少なかったこともあり、各々の画面幅に合わせた2種類の映像が存在する。よってDVD版を観ると以前とは違った印象を受ける可能性もある。
ベラ・ノッテ(Bella Notte)
レディとトランプが一緒にミートボールスパゲッティを食べる有名な場面を初め、随所で使われる挿入歌。イタリア語で「きれいな夜」という意味である。
作詞・作曲はペギー・リーとソニー・バーク。メロウでドリーミーな曲調と、ロマンティックなその歌詞は多くの音楽家からも愛され、日本では山下達郎や本田美奈子らが彼らのアルバムにその歌を吹き込んでいる。とりわけ山下は本作を「幼少時代に初めて観たディズニーアニメで、強い思い入れがある作品」と語っており、彼の冬用企画アルバム『SEASON'S GREETINGS』に収録された山下版はのちに「わんわん物語II」の日本版主題歌となり、ビデオクリップが収録されるまでに至っている。
ラジオドラマ
昭和31年(1956年)9月にはラジオ東京にてラジオ番組版も放送された。
製作陣はディズニー映画の日本語訳を担当していた永六輔や三木鶏郎。
総指揮はディズニー技術部長のジョン・カッティング。
一度黒柳徹子が配役されたが、ジョンがそれを変更した為、出演交渉をした永六輔は赤いハンドバッグを土産に謝罪している。この作品ではブルドッグを社会党書記長の浅沼稲次郎が演じている。
わんわん物語Ⅱ
あらすじ
レディとトランプとその子どもたちはディア家で幸せに暮らしていたが、やんちゃなスキャンプは外の世界に憧れていた。
スキャンプは家の中を泥だらけにしてしまい罰として庭で鎖に繋がれる。そんな時、自由に生きる野良犬たちと出会い、鎖を抜け出し外の世界に飛び出してしまう。
キャラクター
- スキャンプ
スコット・ウルフ、歌:ロジャー・バート(日本語吹き替え:秋山純、歌:岡崎昌幸)
- エンジェル
アリッサ・ミラノ、歌:スーザン・イーガン(日本語吹き替え:山田まりや、歌:日野しおん)
- トランプ
ジェフ・ベネット(日本語吹き替え:中尾隆聖、歌:小西教之)
- レディ
ジョディ・ベンソン(日本語吹き替え:藤田淑子、歌:前田引美)
- バスター
チャズ・パルミンテリ、歌:ジェス・ハーネル(日本語吹き替え:山路和弘)
- ムーチ
ビル・ファッガーバッケ(日本語吹き替え:島香裕)
- スパーキー
ミッキー・ルーニー(日本語吹き替え:石森達幸)
- フランソワ
ブロンソン・ピンチョット(日本語吹き替え:龍田直樹)
- ルビー
キャシー・モリアーティ(日本語吹き替え:一城みゆ希)
- ジュニア
アンドリュー・マクドノー(日本語吹き替え:川田妙子)
- アネッタ
キャス・スーシー(日本語吹き替え:木藤聡子)
- コレット
デビ・デリーベリー(日本語吹き替え:こおろぎさとみ)
- ダニエル
デビ・デリーベリー(日本語吹き替え:石川寛美)
実写映画
劇場公開はなくDisney+のサービス開始と同時に配信された。
監督はチャーリー・ビーン。トランプ役には殺処分寸前だった保護犬のモンテが起用された。
撮影終了後には出演した全ての保護犬に里親が見つかった。
関連動画
Ⅰ
Ⅱ
実写版