江戸川乱歩の長編推理小説。昭和4年1月から翌年2月まで連載された。
同作家の作品の中では評価が高い方で、長編の代表作としてしばしば取り上げられる。
同性愛要素を前面に出している点が他の長編作品とは異なる特徴。
前半は密室トリックの推理が中心となり、後半は乱歩独特の怪奇幻想風味が加味された冒険活劇風の物語となっている。
あらすじ
時は大正十四年、東京。
商社で事務員として働く主人公・蓑浦金之助は、
同僚の木崎初代と恋に落ち、二人はめでたく恋人同士となる。
しかし結婚を間近に控えた頃、初代は突然何者かによって殺されてしまう。
殺人は完全な密室の中で行われており、警察による捜査は難航を極めた。
恋人の仇を討つため、犯人への復讐を誓った主人公は、素人ながら優秀な探偵である友人・深山木幸吉の助力を得て犯人探しに乗り出す。しかし有力な手がかりを掴みかけた所で、彼もまた謎の変死を遂げてしまう。
恋人に続き友人までも失い、絶望する主人公を助けたのは、
同性愛者で、古くから主人公に思いを寄せている医学者の諸戸道雄であった。
諸戸の登場によってようやく犯人に辿り着いた主人公だったが、
それは更なる難事件、背筋が凍るような大犯罪計画への入り口であった──。
本作が収録されている文庫
創元推理文庫
春陽文庫
光文社文庫
角川ホラー文庫