概要
長月達平の小説「Re:ゼロから始める異世界生活」に登場するキャラクターである。既に故人。
プロフィール
出演作品 | Re:ゼロから始める異世界生活 |
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性別 | 女性 |
誕生日 | 不明 |
出身地 | 不明 |
身長 | 不明 |
体重 | 不明 |
特技 | 人の傷を治すこと |
好きなもの | 人助け |
嫌いなもの | 誰かが傷ついていること |
人物
素直な性格をしており、非常に初心。また、怒りっぽいがその怒りの対象は「涙を強要する世界に、戦いをやめない人々に、いつか必ず終わる命の理不尽に」に対してのものであり、誰かが傷ついていることを文字通り「赦せない」という異常な存在である。
初対面後のナツキ・スバル曰く、「新感覚暴力ツンデレ系癒しロリ巨乳」。
経歴
400年前に猛威を振るっていた「憤怒の魔女」その人である。死因は彼女を危険視したエルフたちによる謀殺。その理由となった彼女の能力だが、文字通り洒落にならない性質を持つ。
現在はエキドナによって魂を「蒐集」され、彼女の墓の中にその魂はある。
――女、一人の女がいた。
女は感情的だった。女は常に泣いていた。痛みに敏感で、常に泣き続けていた。
嘆き悲しむ理由は一つ、自分の無力が許せなかった。
女の周りには常に争いが、戦いが、奪い合いが満ち溢れていた。
何度声を上げても、どれだけ縋ったとしても、自分が泣こうと喚こうと、その悲しみは決して終わろうとしなかった。だから女は運命を呪った。
運命を呪って、呪って、呪った挙句に女は気付く。いくら泣いても無駄なのだと。
それに気付いた女が次に欲したのは、ただひたすら純粋な力だった。
他者を圧倒し、全てを薙ぎ払う力を欲し、女は自分を限界に投じて痛めつけ、得られる限りの力を得んと、求める限りの強さを極めんと奔走した。
必要なのは、傷付ける力ではない。奪う力、そんなものでもない。
誰も追いつけないほど、圧倒的な強さを求めた。それが戦いと止めると信じた。
涙を流し続ける女は、泣かずに済む力が欲しかった。
力と力がぶつかり合う戦いを、無力なままでは止められない。
声は届かない。願いは叶わない。嘆きは遠ざけられ、悲しみが空を覆っていく。
何故、平気でいられる。何故、他人を傷付けられる。何故、傷付けられたままで生きようと思える。何故、何故、何故、別の道があると思えない。
「子どもが泣いてる。お年寄りが泣いてる。男が泣いてる。女が泣いてる。みんなが泣いてる。なのに、どうして――!!」
それを止めるために、ひたすらに力を欲した。
己を鍛え上げ、どんな苦痛にも耐えて鋼の意志を貫徹した。
やがて女は到達する。無双の力に、他を寄せ付けない圧倒的な境地に。
戦場に立った女は、戦いをやめろと声高に叫ぶ。
全ての力を力でねじ伏せ、全ての嘆きを力で押し潰し、あらゆる悪意を力で叩きのめして、流れる涙を止めるためだけに奔走した。
剣を握るものを殴り、魔法に頼るものを蹴りつけ、牙を剥くものを砕き切り、戦いを求めるものたちを一人残らず粉砕する。
だが、女が抗えば抗うほど、強ければ強いほど、剣も魔法も牙も数を増す。
それはまるで螺旋、戦いの螺旋だ。
力に力で対抗する以外に、誰も自分を生かす答えを持っていない。
だから誰も、戦って勝ち取る以外の道があると知らないのだ。
「どうして――!!」
そう思う自分も、結局は暴力を振るっている。
血濡れの拳を下げて、返り血に塗れたまま天を仰いで、女は慟哭した。
戦いは止まらない。努力も奔走も全ては無駄で、彼我の涙は決して止まらない。
止まらず、走り続けてきた女の胸に、ついに絶望が去来した。
涙が流れた。溢れ出た。
止まらず流れ続けていた熱い涙ではない、冷たい無力と失望の涙が。
しかし、同時に、湧き上がる別の感慨があった。
胸の内をどす黒く染め、それ以上に視界が真っ赤に、頭が白くなるほどの激情。
その感情の正体を、泣きながら女は知ることになる。
その感情の名前を知って、その感情の始まりを知って、女は理解する。
自分はずっと、悲しくて泣いていたのではない。
ただただ、自分はずっと、怒り狂っていたのだ。
その感情の名前を、人は怒りと――否、これを人は『憤怒』と呼ぶのだ。
涙を強要する世界に、戦いをやめない人々に、いつか必ず終わる命の理不尽に。
――鉄拳を、喰らわせてやろう。
いつしか女は立ち上がり、汚れた膝の土を払い、再び走り出していた。
まだ戦いを続ける人々のど真ん中に飛び込み、その顔面を殴り飛ばし、叫ぶ。
戦いをやめろ。空を見ろ。風に聞け。花を嗅げ。家族と、恋人と生きろ。
女の声に、初めて戦場に動揺が走った。
大地が割れるほどの拳、空が唸るほどの蹴り、その全てが人を生かした。
傷が塞がり、悲鳴が止まり、温もりに膝が折れ、戦いに意味はなくなる。
命は日常に回帰し、泣き喚く声が戦場から消える。
人々の涙は止まった。人々は女に感謝した。声を上げ、手を振り、笑って。
だがそのとき、すでに女の姿はどこにもない。
当然だ。
女にはまだやるべきことがある。振り返る暇も、足を止める理由もない。
誰も泣かない、争いのない、何も奪われない、そんな世界を求めて。
走り、走り、走り続け、女は拳を振るい続ける。
いずれ全ての涙が止まるまで。自分の頬を濡らす、熱い雫が止まるまで。
――『憤怒の魔女』は悲しみへの怒りを燃やし、ずっとずっと走り続けた。
(Re:ゼロから始める異世界生活 第六章24『へそ曲がりの試験官』より)
能力
攻撃(関節技なども)した相手を「癒す」力。作中でスバルが彼女の力で治療を受けていたりする(詳細は本編で)。
400年前はこの力を使うことで世界中の戦場の負傷者たちを癒していた。
……が、超常の力には多くの場合何らかの代償が必要なものだということを忘れてはいけない。魔女が自己中心的存在の究極系といっても過言ではないように。
彼女の力を発揮するためのマナは、星のマナたるマナ・ラグナより引き出したものである。
このマナ・ラグナとは、作中でも何度か言及されているが星の力といえるもの。当然、星の環境を維持するためにその力は使われる。しかし、その力をミネルヴァは横取りすることによって人を癒している。
これにより、世界各地では様々な災害が発生。その死傷者は彼女の癒した数をはるかに上回るという。
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