飛行艇
ひこうてい
『こんなの飛行機じゃないわ! 羽の付いたカヌーよ!!』
『だったら漕げばいいだろ!!』 ――映画『コマンドー』より
概要
胴体が船舶としての機能を持ち、水上を滑走して離着陸(水)を行う飛行機。
主翼下に機体の水平を図るためのフロートが取り付けられる。
また、通常の航空機と同じ機体を持ちながら、車輪の代わりに機体下部に外付けしたフロート(浮き)に頼って水上に浮かび、離着水を行うものは水上機(フロート水上機)とも呼ばれる。二式水上戦闘機(A6M2-N)などが飛行艇とされることが少ないのは水上機という呼び方があるからというのもあるだろう。
映画『紅の豚』をご存知なら、前者はサボイアS.21を、後者はカーチスR3C-0を思い浮かべていただければよい。
あるていど凪いだ水面であれば、どこでも離着水できるのが最大の特徴。
また水面(特に海面)は事実上「無限の長さを持った滑走路」であり、大量の積荷を抱えていてもしっかり速度を得てから離水できることなどが利点である。つまり滑走路の都合で積載量か限られたりしないため、機体が許すならいくらでも物を積んで飛べる。
単純な移動、輸送手段としては比較的優秀だが、飛行機と船と両面での維持管理が必要なのが難点である(フロートにはカキ防止加工を施したり、エンジンには海水塩に耐えるための処理が必要だったり)。
日本は大戦期の二式大艇、戦後はPS-1やUS-2など、優秀な飛行艇を生み出してきたことでも知られている。大戦中にも大小多くの飛行艇を運用し、成果を生んだのだが、それは飛行場の整備をすすめる事ができない土木技術の低さの裏返しでもあった。
だが、現代日本が世界一の土建国家となった現在でも、飛行艇の開発は続いている。
それなりにメリットがあるからなのか、それともやはり漢のロマンがそこにあるからだろうか……。
それなりのメリット
ご存知のとおり日本は島国であるが、単に島国であるというだけではなくやたら離島が多い。
中にはまともな滑走路や港が整備できない場所も存在し、日本で水上機や飛行艇が発達したのもこうした地理的な背景によるところが大きい。つまり必要が生んだ結果と言える。
現在はヘリコプターの発達に伴って需要を減らしているものの、ゼロにはなっていない。なぜなら、ヘリコプターでは速度が出ないからである(軍用ヘリコプターですら、第二次大戦のレシプロ機に勝てない。まあ当たり前なのだが)。また、航続力の面でも飛行艇のほうが有利である。
そんな訳で、緊急時(急患の搬送など)には「そこそこ速くて遠くに行ける、滑走路のいらない飛行機」が必要になり、その答えとして飛ぶのが飛行艇なのである。
さらには、水面に降り立つことが出来るため、海難に遭った船や離島の近くに着水し、ゴムボート等を用いた要救助者の運搬、収容が可能であることも強み。山林火災においては着水しながら水の補給を行い、空中から散布する消火活動も海外ではよく報道されている。「船舶よりも速く現場に到着し、他の航空機よりも安全に対象に直接接触できる」のは飛行艇だけであり、それらの利点と日本の国土・領海事情から、現在でも一定の需要を持っているのである。
関連タグ
『紅の豚』…スタジオジブリによる飛行艇映画。飛行艇以外にもカッコイイものがたくさん。
もしかして:
飛空艇…『ファイナルファンタジー』シリーズに登場するのはこちら。作品によっては飛行艇さながらに水上航行・離着陸可能な物も存在する。
騎空艇…『グランブルーファンタジー』に登場するのはこちら。長らく不明だったが、アニメ版で着水・水上離着陸シーンが描写された。