概要
新明和工業が開発し、2007年より海上自衛隊が運用する救難飛行艇で、US-1Aを近代化した後継機。非常に高価な機体で、2016年時点で4機が調達され、岩国基地に配備されている。
新明和工業は戦前・戦中に二式大艇等を開発した川西航空機の系譜に連なる企業である。
救難飛行艇にはヘリコプターで行けない遠距離での救難に対応し、船舶よりもはるかに高速という利点があり、それらを最大限活用した機体となっている。
操縦系統にはフライ・バイ・ワイヤや自動操縦装置が導入され、コンピュータ制御によりパイロットの負担軽減を図っている。
PS-1、US-1同様、圧縮した空気を翼上面に吹き出して境界層剥離を防ぐ境界層制御(BLC)システムを備え、STOL性能に優れ(最低飛行速度90km/h)、波高3mでも着水可能である。
ターボプロップ4発機だが、BLC用のターボシャフトエンジンも1基積まれている。
特徴
当初は「US-1A改」と呼ばれ、外見上はあまり違いは無いが、チタン材や炭素繊維による軽量化が為され、操縦のデジタル化で航法士は通信士を兼任するようになった。フライ・バイ・ワイアは三重化され、更には油圧系も一系統残され、冗長性が配慮されている。
乗員室前半は与圧されて高高度飛行が可能になり、患者にかかる負担を軽減できる。このため胴体がやや太くなっている。
プロペラも6枚ブレードのR414となり、推進効率が良くなり性能が向上した。
離着水距離は短くなり、最高速度も90km/h優速となったが、燃費はUS-1Aと変わりない。
純然たる救難機であり、武装はない。
但し今の所型式証明が軍用機基準であれば全く問題ないのだが、後述の輸出など民航機(国内でも小笠原向けなど需要の見込める地域はある)として転用改設計するにはこんどは機動性が高すぎて離着陸(水)の降下率が激しすぎるとか(但しそうするとUS-2の特色である、狭い水面でも離着水可能とかの長所が活かせない)。今の航空機の基準がSTOL機を考えていない所為もあるのだが。
輸出
US-2は非常に高価な機体のためセールスは果々しくない。
2016年11月7日、インド国防省が12機を調達することになったが、2019年、取得費が高額なため売買契約の締結可能性が「限りなく低い」と報じられた。
2017年には後継機の開発が報道された(報道内ではUS-3と名称を予想)。US-2の教訓を活かし、性能は維持向上しつつも、輸出の足枷となっていたコスト削減をめざすとのこと。
ライバルとの比較
小型飛行艇を別にすると、現在生産中の飛行艇は新明和・US-2(日本)、ベリエフ・Be-200(ロシア)、ボンバルディア・CL-415(カナダ)の3機種のみとなっている。
Be200
旅客輸送(乗客はエコノミークラスで64人)、消防、捜索・救難機、対潜哨戒機を想定し、1998年に開発された。
高バイパスの省エネ型ターボファン・エンジン2基を機体後半上部に設置し、主翼は高翼配置で、T字尾翼。
着水可能波高は1.2mで、離着水に要する距離も1,000m以上だが、港湾でのみ離着水するのであれば問題にならない。
飛行速度は速く、悪天候でも雲海上を飛行し、素早く目標海域に到達できるという強みもある。
広大な国土と、比較的穏やかな内海、湖の多いロシアに最適化した機体と言える。
調達コストはUS-2の半額程度。
CL-415
CL-215のレシプロ・エンジンをターボプロップ・エンジンに換装した、消防用の飛行艇で、1993年に製造が始まった。
肩翼配置の主翼の上にエンジンが設置されている。
森林火災現場近辺の水を汲み上げ、化学消火剤と混合して投下でき、基地へ帰還せずに消火活動を続けることが可能である。
調達コストはUS-2の1/4程度。
近年、中国でも新型飛行艇「JL-600」の開発が進められている。
関連タグ
飛行艇 海上自衛隊 新明和工業 川西航空機 PS-1 US-1
小学館:ビッグコミック増刊号で漫画「US-2救難飛行艇開発物語」(作:月島冬二)を連載。