概要
室町時代ごろに成立したと見られる御伽草子の中の一つ。作者は不明。
人間の姫君に恋したキツネが、彼女のそばに居たいがために人間の女性に化けて仕えるという物語。
擬人化異種間恋愛百合というある意味時代を先取りした作品でもある。
玉水物語を研究する人は少なく、教科書で見ることもないためほぼ無名の物語だったのだが…?
あらすじ
ある宰相の元に産まれた姫君が外に遊びに出かけたところ、それを見かけた狐は彼女に恋してしまう。
狐は姫と同年代の人間の女性に化け、とある家の養女になり姫の元に仕えることとなる。
狐は玉水の前という名前をもらい姫の寵愛を得る。
しかし姫はやがて宮中へ上がることとなり、狐はある決断をする。
センター試験
2019年度のセンター試験国語の古文問題として、本作が出題され大いに話題となった。
試験中に萌えてしまった受験生の悶絶もtwitterなどで報告された。
受験の年代をすでに超えた年代からもこの題材選びには驚きの声が多かったが、同時に「これを読んでエモいと言えるくらいの受験生はよく勉強していたということ」(勉強していなければ何を書いているかそもそも理解できないので)「このような掘り出し物に出会うためにも古文の勉強は大事」という教訓を述べる大人もちらほらと現れた。
余談
狐の性別については様々な見解があり、
定説では狐の性別は雄である。なぜ男ではなく娘に変化したかについては
「狐は男のまま姫と合うと禁忌を犯すことになるため、それを避けるために娘に変身した」という解釈が一般的。
しかし原文では単に「きつね」としか書かれておらず、狐の性別は明言されていない。
つまり、雌の狐が娘に化けてまで姫君を愛そうと考えた。等の解釈が出来ないわけではない。
作者があえて明言しないことで物語に趣を深め、想像の余地を深めているということも考えられている
しかし500年ほど前の日本人がこの物語を書いたとするなら改めて日本人の業の深さを感じざるを得ない。
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外部リンク
挿絵とあらすじで楽しむお伽草子 第1話 玉水物語(京都大学公式サイト)現代語訳あり。ただしラストまでのネタバレになっているので要注意。
平成30年度センター試験古文問題(朝日新聞公式サイト)問題文に使用された原文。