研究不正
けんきゅうふせい
概要
実験データの改ざんや捏造、または他の論文からの剽窃、研究費の不正流用などを指す。また金をもらって結果を歪めて発表するなどのケースもある。また「ギフトオーサーシップ」といい、直接研究に関与しなかった者の名前を著者名に記すのも不正とみなされる場合もある。
こうした行為に手を染める動機は様々だが、日本では2004年の国立大学法人化を契機に不正が急増しており、研究者同士の競争の激化や限られた任期中に成果をあげなければいけないというプレッシャーが不正の大きな原因になっていると指摘される。
科学の研究結果は、学術誌に論文として発表される前にその分野の専門家による査読が行われ、研究の妥当性が問われるが、査読を潜り抜け掲載された論文に不正の疑義が持ち上がるのは珍しいことではない。不正が疑われる論文は研究者の実験ノートが検証され、必要なら追試が行われる。
不正な論文は取り消されることになり、悪質な場合は不正に関わったものは職場を追われる。刑事事件に発展することもないわけではないが非常に稀(下記の藤村新一は偽計業務妨害の疑いで告発されたが不起訴になっている)。
理系だけでなく、人文系学部でも剽窃などの不正行為が発覚した場合、学位取り消しなどの処分が行われ著書の絶版等の社会的制裁が降ることがある。
有名な研究不正事件
- 旧石器捏造事件
毎日新聞のスクープをきっかけに在野の考古学者藤村新一のでっちあげが2000年に発覚。日本における前期旧石器時代の存在が白紙に戻り、教科書を書き換えるほどの騒動になった。
- 黄禹錫事件
韓国の生物学者黄禹錫の研究に多数の不正や倫理的な問題が見つかり、黄は逮捕された。
- iPS細胞臨床応用事件
2012年に東京大学医学部附属病院特任研究員の森口尚史が、iPS細胞の世界初の臨床応用となる心筋移植手術を実施したと発表したが他の研究者から疑義の声が続出し、森口は弁明の場をドタキャン、東大を懲戒解雇された。この件を大々的に報道した読売新聞も誤報を認め、謝罪した。
- ディオバン事件
2013年、日本の5つの大学で行われていた高血圧治療薬ディオバンの臨床実験で、メーカーのノバルティスファーマが有利になるデータ操作が発覚した。200億円以上の損失が出たと試算されている。
- STAP細胞事件