特徴
直面する問題・課題を技術によって解決しようとする点は元同盟国と共通するが、日本の場合はひたすら磨く方向に進む。革新的な技術や発想を導入するのではなく、既存の技術・技能を、いわゆる“職人芸”でもって、精緻を極めていくところが特色。寸法とか質量とかコストとかの諸々を削る(ダウンサイジング)のも得意分野。クライアント(顧客、依頼人)からの要求には、嫌がらせ同然の無理難題にすら対応しビジネスとして成り立つ範囲までコストを抑える努力を惜しまない。
ゆえに、決められた枠内で優れたものを仕上げるのは得意であり、重巡洋艦や軽自動車、発泡酒や第3のビール……のように規制や各種制約を逆手に取る、レギュレーションの限界カツカツのものを作るなどして上級クラスや他の市場を脅かす存在を生み出すケースも後を絶たない。
軍事・防衛部門【大日本帝国陸海軍編】
軍事・防衛部門【自衛隊・防衛省編】
鉄道部門
乗り物部門
自動車・バイク・バス・トラック・船舶・航空・宇宙など。
その他部門
企業・文化・電気製品など。
日本面が世界を変えた例
独創性に乏しいとは言われながらも、実は日本が後の世界を変えた例も結構あったりする。意外にも、“娯楽部門”や“生活密着型”の品が多いのも特徴。
- 新幹線:「日本の代表」としてもはや説明不要の存在。「鉄道に未来はない、これからは航空機の時代」と言われていた60年代の常識を覆した世界初の本格的な高速鉄道にして、フランスがその意地をかけて開発したTGVに抜かれるまでは世界最速の営業最高速度をも誇っていた。山あり谷ありトンネルあり多雨あり豪雪ありの日本列島を時速200km以上(現在では一部営業運転300km/h超の路線も)で駆け抜ける路線にもかかわらず、「安全神話」と言われるほど事故は少なく、運行に起因する乗客の死亡事故は2021年時点で0にとどまっている。営業最高速度は2013年にTGVと同率の320km/hに達している。
- 電卓:「電子式卓上計算機」。特に前述のカシオが開発した『カシオミニ』以降の怒濤の小型化・低価格化は、計算機を企業から家庭、さらには個人の持ち物(必需品)にまで普及させ、そろばんや計算尺、機械式計算機などのアナログなアイテムをほぼ完全に淘汰してしまった。日本の“ダウンサイジング”芸が、もっとも力を発揮した製品かも。
- ウイスキー:「日本人は紙とペンだけでウイスキーの作り方を盗んでいった」と言わしめる程完成度が高く、スコッチ(イギリス)、アイリッシュ(アイルランド)、ケンタッキー・ストレートバーボン(アメリカ)、カナディアン(カナダ)の4大ウイスキーに日本のジャパニーズ・ウイスキーを加えて5大ウイスキーと称されることになった。その中でも特にサントリーの躍進は凄まじく、主力製品の山崎・白州・響は様々な品評会で賞を受賞し、老舗ウイスキーメーカー「ジム・ビーム」社を買収し、世界3位の酒造メーカーになる見通しである。
- ワイン:そのウィスキー以上の日本人の非常識さが発揮されたのがワイン。ヨーロッパでは糖度の低い、ワイン醸造専用のブドウの品種があり、それを使ってワインを醸造するのが世界的な常識であった。ところがこの系統の品種は病気に弱いという弱点があり、ヨーロッパではワインが安定して生産できない要因になっていた。日本でもワイン醸造用のヨーロッパ種ブドウが病気で壊滅。その時点で黎明期の日本ワイン醸造自体が消滅していておかしくない状況だったはずなのだが、そこは日本人、ヨーロッパ種のワイン醸造用ブドウが日本で育たないなら、日本固有種の食用ブドウでワインをつくればいいじゃないと、古典的日本種のブドウによるワイン醸造が始まった。ウィスキーに比べると長年評価は不当に低かったが、近年、有機酸塩含有量が低く食材とケンカすることが少ないという食卓酒としての高い潜在力を見出され国内で評価が急上昇、さらに海外にも攻勢をかけ始めている。さらに赤ワイン用の品種「メルロー」で白ワインを作ったり、アメリカ種の改良で誕生した近代日本種である巨峰でもワイン醸造を試みるなど日本人の雑食振りはとどまることを知らない。
- ウォークマン:「ポータブルオーディオプレーヤー」の元祖。“音楽を持ち歩く”という新たなライフスタイルを確立した。ちなみに開発のヒントは、「アメリカ人がでっかいラジカセを担いで音楽を聴きながら闊歩する姿」だったという。
- VHS:ビクターの窓際部署が作った、世界共通規格。これまた、放送機材だったビデオデッキを“家電”に変え、「テレビ番組を録画して、後で(あるいは繰り返し)観賞する」という新たな視聴スタイルを提供した。普及の決め手は録画時間。ちなみに最初の“録画時間2時間”というのは「映画や、野球中継を1本で録れる長さ」。後の“6時間(3倍速)”は「3時間前後のアメリカンフットボールの試合を1本で録れる長さ」。使い勝手にも配慮した規格だったのである。
- CD(コンパクトディスク):厳密にはソニーとオランダ・フィリップス社の共同開発だが、世界初のCDプレーヤーは日本の各メーカーからリリースされた。デジタルデータを“プレス”によって安価に大量にコピー、供給できる画期的媒体であり、レコードなどのアナログ媒体のみならず、フロッピーディスクのような一部デジタルメディアにも取って代わった。ちなみに90年代までシングルCDで主流だった8cmCDも日本の独自規格である。通信インフラの発展・充実によって、今では音楽などはダウンロード販売が主流となりつつあるが、CDが基礎を築いた“直径12cmの光学記録媒体”というフォームファクタはDVD、Blu-rayへと進化を続けている。
- カラオケ:様々な歌手の持ち歌を自分で歌って楽しむ、という新形態の娯楽ビジネス。最初は酒の席のお供で演歌中心の地味な商売だったが、騒音への苦情対策として立ち上げたカラオケボックスが若年層にスマッシュヒット。2004年には「人々に寛容になる新しい手段を提供した」功績により先述のイグノーベル平和賞を受賞。
- ユニットバス:今では海外でも定着しているユニットバスルームを開発。これが生まれた事情は1964年の東京オリンピックで来日した外国人の宿泊用施設を建てる際、人件費と工事費が追い詰められていた事から苦肉の節約策として生まれたアイデアだった。しかし、やってみるとコンクリートの“養生”や防水工事を大幅に端折れるというので、あっという間に普及。現在は宿泊施設だけではなく一戸建てや集合住宅でも一般的である。
- 過労死:日本(人)の悪しき習慣が海外に輸出されてしまった例。1980年代に日本企業の世界市場での台頭とともに日本人ビジネスマンの"異常な"働きぶりが驚嘆(あるいは揶揄)され、Karoshiは文字通り「死ぬまで働く」日本人を象徴する世界語となった。この頃の欧米人にとっては「ワーカホリック」(仕事中毒)は軽蔑の対象であり、病的なものと考えられていた。しかしグローバリゼーションの流れのなか、欧米をはじめとする世界各国では、1980年代後半からジャパナイゼーションとよばれる経営と労働の日本化が急速に展開しはじめたのである。今や、欧米でもビジネスマンのワーカホリックと過労死(過労自殺を含む)は珍しいものではなくなってしまった。
- 投稿動画:意外ではあるが、現在のアマチュアによる「投稿動画」のハシリは、どうやら日本らしい。1986年スタートのバラエティ番組『加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ』内の「おもしろビデオコーナー」では、視聴者からハプニング系から創作作品まで、様々なホームビデオが多数寄せられ、大好評を博した。この「投稿ビデオ」のフォーマットは『さんまのSUPERからくりTV』など他番組にも引き継がれ、さらには海外の番組にまで輸出された。その後、インターネットの普及によって動画投稿サイト、ソーシャルメディアで多数の「素人動画」が、世界規模で視聴されているのは周知の通り。ハシリとなった『ごきげんテレビ』は、 2013年、フランス・カンヌで開かれた国際番組見本市MIPTVで「世界のテレビを変えた50作品」の一つに選ばれた。なお、「ビデオコーナー」発案者の志村けんは、後にアメリカのTBS関係者から大変感謝されたとか。
- ゲーム実況:高橋名人の解説プレイが起源とされ、現在のゲーム実況形式は、開祖を自称する有野課長の『ゲームセンターCX』(2003年~)で確立された。海外のLet's Play動画が始まるのはYouTubeの開始(2005年)以降で、本格的に広まるのは2010年以降。2017年にLet's Play動画の視聴者は7億人と推計され、Netflix等主要動画サイト視聴者の合計人数より多かった。
- 中華テーブル:中華料理店でよく見る二枚重ねの回転式テーブルの発祥は実は中国ではなく日本の目黒雅叙園である。
- 線画:ピクシブ的に恐らく特に関係があるであろう部分。19世紀頃までの西洋画は輪郭線をはっきり描かず陰影などで境界を表す手法が多用されていたが、ロートレックなど浮世絵をはじめとする日本画に影響を受けた画家が世に出てくるようになってくると、日本画のように輪郭線をはっきりと描いた絵画も徐々に広まっていくようになった。他にも日本画による西洋画への影響(画面中央より高い位置に描かれる水平線など)は数多いが、きりがないのでこれらはジャポニズムを参照のこと。
- 絵文字:元々日本のガラケーとの相互運用性を確保することを目的としてUnicodeに追加された文字であるが、追加されてみたら急速に全世界に普及。しかも絵文字に対応しようとしたら必然的に多言語の文字に対応しなければならないような仕様となっているゆえ、これまでASCII文字にしか対応してこなかったラテンアルファベット圏に至るまで、(対応するフォントは必要だが)漢字・ひらがな・カタカナ・ハングル・キリル文字・アラビア文字等々が処理できる環境が一気に普及することとなった。因みにこの絵文字の開発者として有名なのが、当時のNTTドコモ社員でiモード開発者のメンバーだった現・ドワンゴ代表取締役兼ニコニコ代表の栗田穣崇氏(ニコニコユーザーの間では「しげたかもん」「お茶汲み係」「タマハッカ」等と色々とイジられてるがかなり凄い人です)で、絵文字は「新たな視覚言語の端緒」として米ニューヨーク近代美術館に常設展示され、栗田氏は同美術館の永久入館許可ライセンスを授与されている。