概要
第一次・第二次両大戦で本場と対峙した(かつての)宿敵だが……本場にも負けず劣らずの奇妙奇天烈な発想と現物はメカマニアや多感なお年ごろのハートをがっちりと掴んで離さない。
但しイギリスと決定的に違うのは、
ところだと言われている。まあ要は、ドイツは技術革新先行型の変態、イギリスはアイデア先行型の変態という事だ。
但しどちらも理屈の上では決して間違っていないがそんな事は普通やらない事を何食わぬ顔で、しかもノリノリでやってしまう点では共通している。
因みに、陸戦、海上兵器では、(計画倒れも含めて)無闇矢鱈と巨大・巨砲化する傾向があるのが特徴。
因みに
- 日本:ある問題を既存技術を変態的に極める事で解決しようとする
- ロシア:ある問題を既存技術を変態的に組み合わせる事で解決しようとする
- フランス:ある問題を明らかに変態的な方法で解決しても「合理的」と判断すれば誰も止めようとしない
と為る。また、アメリカはイギリスから独立した国だがゲルマン系の移民が多い為両方が合併症と為って発症する。
独国面・ナチス第三帝国編
軍用航空機編
- 急降下爆撃に対する拘り:大体国家元帥殿の戦友で、アメリカで急降下爆撃機を見て惚れ込んだ後の航空省技術局長エルンスト・ウーデットのせい。双発のJu88ばかりか四発のHe177にまで急降下爆撃が望まれダイブブレーキ設置。このせいでナチスドイツは最期まで大型戦略爆撃機を作る事が出来無かった。
- ハンス・ウルリッヒ・ルーデル:現在確認されている世界最新の魔王。詳細は項目を参照されたし。
- 妖怪双子航空機の数々:主力戦闘機を航続距離の延長などを目的に双子化するのはアメリカもやったが、ドイツは爆撃機や開発中の機体まで双子化しようとしていた。 尤も後述のブローム・ウント・フォスのカオスな機体に比べたら(比較的)マシな外見だが・・・
- ハインケル He111Z:後述のMe321「ギガント」牽引用に製造された機体。爆撃機He111を2機横に連結した。 その凄まじい見た目で連合国兵士を「妖怪双子飛行機だ!!!」と恐れ慄かせたとかなんとか。(Zとはツヴィリンク=双子の意) 因みにこの機体を作るまではあろうことか3機のBf110に牽引させていた。
- メッサーシュミット Bf109z:Bf109を二機横に連結。 此方は実用化されなかった様だ。
- メッサーシュミット Me609:採用されなかった単発戦闘機を双子化して提案。
- ドルニエ Do635:双発串形の戦闘機Do335の偵察機化計画。主翼で二機横に繋げた結果、計画では最高速度720km/hの4発機に為る予定だった。
- フォッケウルフ
- フォッケウルフ Fw42:1930年代にしてエンテ型(震電と同じ形状)の双発爆撃機の設計案。
- フォッケウルフ Fw190:Bf109のサポート用の筈が、意外過ぎる高性能を発揮して終戦まで活躍。スペック厨なきらいの有ったメッサーシュミット博士に対抗し、実用性一点張りの設計を行ったクルト・タンク技師の発想の勝利と言った所だろうか。
- フォッケウルフ Ta283:元は「スーパーロリン」という設計案だった、尾翼にラムジェットエンジンを取り付けロケットエンジンで初速を得るジェット戦闘機の計画。斜め後ろから見ると完成度高けーなオイ。
- フォッケウルフ トリープフリューゲル:テイルシッター(立てた状態で地面に置かれるタイプの機体)式のVTOL戦闘機。テイルシッター機をフェアリーロートダインの「ジェット推進で回転するローター」であるチップジェットと組み合わせたという、イギリス人も真っ青の比類無き発想の機体。
- メッサーシュミット
- ヴィリー・メッサーシュミット博士:メッサーシュミットの主力技術者兼名物社長。設計時期でスピットファイアに不利なBf109が最後の最後まで互角に戦えたのは、間違い無く基礎設計を担当したこの人が天才だったから。但し、あまりそりの合わ無かった女房役、ロベルト・ルッサーに去られてからは「とんとさっぱり」だった。
- メッサーシュミット Bf110:双発戦闘機の流行っていた戦間期に開発された重戦闘機。『駆逐機』として敵機をバッサバッサと叩き落とすと期待されたがバトル・オブ・ブリテンで運用を間違え大敗北。 しかし設計もエンジン周りも旧式だったにもかかわらず、その後も戦闘爆撃機・夜間戦闘機・迎撃機として終戦まで戦い続けた。
- メッサーシュミット Me163 コメート:迎撃戦闘機。なのだが動力はレシプロでもジェットでも無くロケットエンジン。ロケットエンジンの爆発的な上昇力、加速力で爆撃機を迎撃する。筈だったが航続距離が極端に短く基地の周辺でしか迎撃出来ず結局、迂回されて会敵すら出来無く為った。尤も武装の30㎜はジャムを良く起こし、着陸時もソリが出ない等で撃墜されるよりも事故で死亡する搭乗員が多く、しかも燃料の液体は非常に危険でパイロットが溶けてしまう恐れが有ったのだからパイロットには良かったのかも知れない。でもこれも日本に流れて…
- ヤークトファウスト:Me163に搭載する計画だった空対空無反動砲。
- ゾンダーゲレート500 イェーガーファウスト:機体に対して上向きに取り付けた空対空ロケット弾。試作のみ。
- メッサーシュミット Me209:元はドイツ(というかメッサーシュミット)の技術力を宣伝する為に開発した高速記録専用機。実際に当時のレシプロ機最高速度記録を更新したが、軍が「そんだけ速いなら戦闘機にしようぜ!」と言ったのでやってみた結果、改修すればするほど低性能化してしまった。
- メッサーシュミット Me210:Bf110の後継として開発された戦闘攻撃機。初期の段階で操縦性や安定性に欠陥が在り、テストパイロットから「胴体を延長して安定性を上げた方が良い」と言われていたのにガン無視した結果、実戦で事故が多発して生産中止に。後に素直に胴体延長したMe410を開発し、其方は普通に良好な仕上がり...どうして始めからそうしなかった。
- メッサーシュミット Me262 シュワルベ:世界初の実用ジェット戦闘機。しかし総統閣下が「電撃爆撃機が誕生した!」と勘違いしたせいで戦闘機なのに最初の三か月は爆撃機型がメインに成ってしまっていた。後、30mm機関砲4門は当時の双発機としては相当な重武装でも在ったり。
- Me262 A-1a/U1:30mm機関砲6門を搭載した火力バカ仕様。試作1機のみ。
- Me262 A-1a/U5:同じく6門だが、2門ずつ装弾数が違うという奇妙な仕様に。
- Me262 A-1a/U4:此方は50mm機関砲1門を搭載した一撃必殺仕様。試作2機のみ。
- Me262 A-2a:爆撃機型。爆弾搭載の為に重心が変化した為余計操縦が難しかったとか。
- Me262 B-2:30mmシュレーゲムジーク機関砲を搭載。シュレーゲムジークとは機体に対し上向きに取り付けた機関砲であり、敵爆撃機の防御機銃の死角(斜め下部後方)から攻撃できた。
- Me262 HG1~3:大幅な改設計を行った計画案。レーシングキャノピーと呼ばれる小型・流線形キャノピーに45度の後退角をつけた新型翼、機首に加えシュレーゲムジーク機関砲も2門搭載する予定だった。
- Me262 ロリン:速度性能を求めたゼンガー博士が主翼上にもラムジェットエンジン2基を追加した4発エンジンジェット戦闘機。見た目がものすごく無骨。
- メッサーシュミット Me321:物資輸送用グライダー。その独特な見た目も然ることながら、巨大な機体を飛ばすために色々と苦労を強いられたことでも知られる。
- メッサーシュミット Me323「ギガント」:Me321にエンジン6基を搭載し、自力で飛行出来る様にした機体。独特な見た目から宮崎作品に登場する大型機(バカガラス、ギガント等)のモデルともなる。一度に100人の武装兵士を収容して飛行できた他、重量25tのIV号戦車を運搬できたとも言われているが、巨大かつ鈍重な機体は連合軍機からの襲撃を受ける事も多かった。
- 但し元がグライダーなのでスチール製の枠組みに羽布張りという構造の都合上、初期の頃はどっかの剣魚みたくエンジンかコックピットを撃ち抜かない限りなかなか墜落しなかったとか。(荷物はハチの巣にされるが……)また機体によっては13mm・20mm機関砲を含む20門近い機銃で武装した対空ハリネズミ仕様もあり、襲って来た敵機を弾幕で返り討ちにする事も在った。
- メッサーシュミット P.1106:ジェット迎撃機計画。尾翼のすぐ目の前にコックピットがあり、どう考えても前方視界が最悪。
- ユンカース
- ユンカース Ju187:Ju87の後継として開発していた急降下爆撃機。基礎設計は流用したまま引き込み式のランディングギアにするまでは普通の発想だが、「垂直尾翼が後部機銃の射線上だと邪魔だなぁ」と考えた結果、離陸後にギアを格納すると連動して垂直尾翼が胴体下部に移動するようにした。しかしそれ以外の設計は元のJu87からあまり変わっておらず、Fw190を戦闘爆撃機にする方が簡単かつ高性能だったのでボツに。
- ユンカース Ju287:技術実証も兼ねた前進翼爆撃機。機体の大部分は敵のものを含む他の航空機の廃物利用で構成されていたという。
- ユンカース Ju322 マムート:Me321と同じ目的で開発された物資輸送用グライダー。これも宮崎作品に出てきそうなSFチックな見た目が特徴。
- ユンカース Ju388:高高度において戦闘機を振り切る速度を叩き出したレシプロ爆撃機。偵察機型や夜間戦闘機型も開発されたが、なんとM型はV1飛行爆弾を搭載する計画だった。空中発射式巡航ミサイルも同然。
- ハインケル
- ハインケル He119:エンジンを機体中央に置き、コックピットを貫く延長軸でプロペラを回す試作偵察機。明らかに延長軸が邪魔だった上にエンジン冷却にも問題があり開発中止。
- ハインケル He177"グライフ":アブロのマンチェスターとまったく同じ失敗。これに搭載されたダイムラー・ベンツ製「DB606」エンジンはV型12気筒「DB601」エンジン2基で1基のギアを共用してプロペラを回していた。エンジン本体もタイトだわエンジンナセルに余裕ないわでエンジンが壊れまくり。しかもこれで、急降下爆撃をしようとしていた。マンチェスターは後に普通に4発化、「ランカスター」として大成功を収めたが、He177の4発化は戦況の悪化により頓挫。どうして最初からそうしなかった。
- ハインケル P.1078:ジェット迎撃機計画。A、B、Cの三種類が計画されたが、このうちB型とC型は無尾翼、B型に至っては左右非対称だった。
- ハインケル レルヒエ:テイルシッター式VTOL機計画その2。原理的に言えばダクテッドファンの中心軸に胴体をぶっ刺した設計。しかも計画値では超過禁止速度が1,282km/hという超音速のバケモノ。
- アラド
- ブローム・ウント・フォス:重工業メーカー。本業は造船業だが、1934年にハンブルガーを傘下に収め航空機製造に進出。以下に挙げるような奇怪な機体を幾つも世に送り出した。第二次大戦後、航空機部門はメッサーシュミット・ベルコウに売却されてMBBとなり、VFW(旧フォッケウルフ+ヴェーザー+ハインケル)との合併、ダイムラー・クライスラー傘下を経て現在はエアバス・グループ(の系列会社)となっている。製造者コードは「Ha」→「Bv」。
- Bv40:迎撃用戦闘グライダー。試作のみ。
- Ha139:機体のサイズに見合わずカタパルトを使っての発進が可能な大型水上機。
- Bv141:前代未聞の左右非対称の偵察機。試作のみ。
- Bv144:取り付け角が可変式の主翼を装備した旅客機。試作のみ。
- Bv155:元々メッサーシュミットで艦上戦闘機として開発されていたが、搭載予定だったグラーフ・ツェッペリンが建造中止になったので急降下爆撃機になり、そんな事をしていたら戦局の悪化で要撃機としてB&V社に委託されて開発された高高度戦闘機。散々試行錯誤した結果はラジエーターが主翼の下にある、機体は全長12mに対し全幅20mと幅広という具合に。
- Bv163:キャビン(搭乗員の席)が主翼の両端にある航空機。
- Bv P163:恐らく世界で一番ぶっ飛んだ見た目の左右非対称の飛行艇。これが飛ぶとか言われてもとても信じられない。
- Bv P188:4発爆撃機。W字型主翼という異様な形の主翼を採用。計画のみ。
- Bv P202:可変斜め翼機。当時どころか今でも早すぎる代物。計画のみ。
- Bv238:二式大艇すら上回る第二次世界大戦で最大の飛行艇。
- リヒャルト・フォークト博士:ブローム・ウント・フォス社の技術者。左右非対称機大好きの変態。つまり先述のゲテモノ機たちはだいたいこいつのせい。ちなみにブローム・ウント・フォスに入社する前の10年間を日本で、第二次大戦後はアメリカで過ごしており、その(変態の)血は川崎重工業とボーイングに流れている。
- アメリカ爆撃機計画:大戦前の1938年頃から考えられていた計画。大西洋のアゾレス諸島を拠点にアメリカ本土を爆撃できる爆撃機の開発・運用を目指した。技術的に決して不可能ではなく、メッサーシュミット、ユンカース、ハインケル、フォッケウルフおよびホルテン兄弟(Ho229の開発者)に開発を依頼したが、それが裏目に出てただでさえ戦争のために不足している資源を競争して奪い合う羽目になり、結局計画自体が頓挫してしまった。
- フォッケウルフ Ta400:ドイツ版富嶽。
- アラド E.555:戦略爆撃機計画。しかも全翼機。非常に高価かつ野心的過ぎると考えられ中止された。
- ホルテン H.XVIII:長距離全翼爆撃機。意図していたかは不明だがステルス性も高く、まさにB-2を40年ほど先取りした設計だった。
- ゼンガー(ジルバーフォーゲル):言わば「大陸間弾道爆撃機」とも言うべき爆撃機。一旦宇宙空間に飛び出した後、大気の層の上を飛び跳ねるように飛行してアメリカ上空に到達、大気圏に再突入し降下した上で爆撃を行うという計画であった。XB-70をある意味数十年早く先取りした。後の弾道ミサイルにつながる発想といえば決して間違ってはいないのだが。なお、帰還時は同盟国の日本が占領している南洋の島に着陸する予定で、その点においては富嶽と似ている。ただし富嶽と違って搭載できる爆弾は少なかったので、化学兵器や開発中の原子爆弾を使う予定だった。ちなみに打ち上げ時のGや再突入時の空力加熱といった問題については研究記録がなく、戦後にアメリカで再計算した結果そのままの設計だったなら再突入時に機体が耐えられず空中分解すると判明。
- アグリガット10 アメーリカ・ラケーテ:こっちは本物のICBM。計画止まりではあったが。
- 肩車計画:ラムジェットエンジンを追加したHe177で双発爆撃機Do217を運搬する計画。ただし航続距離の関係でDo217もアメリカ東海岸にポイ捨てする。そもそも前述の通り、He177自体失敗作だったのだが。
- ...なおこの計画、ジルバーフォーゲルと同様に搭載できる爆弾の量が少なかったので開発中の原子爆弾で威力を補う予定だった。これだけはある意味完成しなくてよかったかもしれない。
- その他
- ヘンシェル Hs129:重装甲のコックピットに、WW2中に量産軍用機に搭載された中で最も重くて強力な前方発射砲を装備…と書けば一見完璧そうだが運動性が劣悪にも程があったりとか装甲が分厚すぎてコクピットがとんでもなく狭いとかエンジン関係のメーターはよりにもよってエンジンナセルに直付(つまりコクピットの外)とかいろいろ突っ込みどころが多い機体。自国製のアルグスAs410エンジンでは出力不足のため、フランスから接収したノームローヌ14M星形エンジンのおかげでなんとか実用化。しまいには只でさえ重すぎる機体に75mm砲を搭載するというロマン兵器と化していった。
- フィーゼラー Fi167:正規空母グラーフ・ツェッペリンに搭載予定の艦上雷撃機だったが、どういうわけか複葉だった。日本の同盟国じゃなかったのか?……とはいえ、仮想敵だったイギリスの海軍航空隊の飛行機が大人の事情でことごとくアレだったので、これでいいやと合理的に考えたのかもしれない。また、クロアチアに売却された9機のうち1機が後に相討ちとはいえP-51(イギリス軍のMk.III)1機を撃墜。おそらく複葉機最後の撃墜記録を持っている。(非公式では零観のF6F未確認撃墜が最後)ちなみにSTOL能力は非常に高かったらしい。
- ホルテン Ho229:実戦投入一歩手前だった、ジェット推進の全翼戦闘攻撃機。詳しくは当該記事参照。
- フォッケ・アハゲリス Fa269 コンヴェルティプラーノ:ティルトローター実験機。 ただし有名なオスプレイとは異なり推進式プロペラで、離着陸時はエンジンを下に向ける。
- ドルニエ Do335 プファイル:双発串型のレシプロ戦闘機。 といっても意味がわからないので説明すると機首と機尾にエンジンが一つずつ搭載されている、つまり機体の前後にプロペラがある戦闘機。 ついでに言うと垂直尾翼も機尾の上下に二つある。 単発機ぐらいの機体にエンジン二つなので最高速度770km/hを誇るが、脱出時に後部プロペラにパイロットが巻き込まれる危険があるため脱出時には垂直尾翼と後部プロペラを爆砕し圧縮空気式の射出座席でパイロットを脱出させる。 なお前後いずれかのエンジン停止時でも飛行は可能。試験飛行の記録によれば、速度・加速・旋回の性能が高く、双発機にしては信じられないほど運動性が良かったと伝えられている。
- ゾンボルト So344:爆撃編隊攻撃機。特別に改造された爆撃機により戦闘空域まで運ばれ、ヴァルターロケットにより飛行、近接信管と500kgもの炸薬を搭載した機首を切り離して敵爆撃機を編隊ごと爆砕する計画だった。
- バッヘム Ba349 ナッター:ロケットブースターで離陸してロケットエンジンで爆撃機に接近し、機首に搭載された24発(又は33発)のロケット弾をぶちまけて攻撃。その後機体は使い捨ててパイロットとエンジンだけ脱出・回収して再利用する。あまりに単純なので後に連合軍からは『有人対空砲』と言われたとかなんとか。
- リピッシュ P.13a:恐らく世界初のデルタ翼ジェット機(迎撃戦闘機)...なのだが、その見た目は上下逆にした紙飛行機。コックピットは尾翼と一体化。しかもラムジェットエンジン駆動だが燃料は粒状の石炭。試作グライダーを製作中に終戦。ちなみに、その試作グライダーは(設計者のリピッシュ博士共々)米軍が接収し、本土で試験した結果は非常に希望の持てるものであり、経験から学んだことはNASAの1950年代の航空機研究へ取り入れられた。
- ヴェーザーフルーク P.1003:ティルトローター機、つまりドイツ版オスプレイ。しかも設計開発は1938年である。技術的問題で没になったがオスプレイですら手こずったんだから当たり前だ。
- ザック AS-6:ドイツ版フライングパンケーキ。単発機で短い翼巾だったためプロペラのトルクに対抗できず、機体が傾いて安定させられなかった。因みに設計者は軍関係者ではなく農民出身の飛行機モデラーだとか。
- P.II:尾翼をエンジン排ガスから守るために、コックピット後方からV字型に棒を伸ばして先端にエンジンを搭載。普通に主翼上ではダメだったのだろうか...。
- ラインメタル・ボルジッヒ製VTOL:テイルシッター式VTOL機計画その3。このタイプには珍しく着陸時は普通の飛行機のように滑走路に着陸するが、そのランディングギアはまさかの二輪。まぁラインメタル社って普段は火砲作ってる会社ですし。
- ゾンダーコマンド・エルベ:神風特攻隊に刺激され、以前から体当たり攻撃を思案していたヘルマン大佐の主張もあって発足したドイツ式神風特攻隊。ただし目標は敵の戦略爆撃機。必中の体当たり攻撃を集中的に繰り出し、軍・生産設備の爆撃を(一時的にでも)低下させ、その隙に自軍の戦力を回復、反撃のきっかけにするという、(一応は)合理的な目論見もあった。Bf109とFw190の合計200機で編成され、1945年4月7日の大空襲時に迎撃部隊の一部として出撃したものの、(米軍側の報告によれば)体当たりによる撃墜たったの8機と戦果を上げられず、結局空襲も阻止できなかったので10日後に解散。(体当たり攻撃自体の問題もあるが、攻撃対象のB-17が堅牢な防御を誇るのである意味仕方ないといえば仕方ない)
- ツェッペリン ラマー:まさかの体当たり攻撃機。と言っても機体を相当頑丈にする予定だったので理論上は生還できる。(ソリで平地に着陸するらしい)爆撃機に懸架され、空中で切り離されて発進するところまでは桜花と同じで、敵爆撃機に14発のロケットをぶっぱした後、ロケットエンジンで加速して頑丈な機体と機体先端に取り付けられた"棒"で突撃、敵爆撃機(狙えればその尾翼)を破壊する計画だった。
- フリジェンデ・パンツァーファウスト:「空飛ぶパンツァーファウスト」の意。戦闘機に牽引されて作戦空域まで移動するロケット迎撃機の計画で、牽引されるために上向きに反った機首に設計されていたという。
- ミステル:特殊爆撃システム。有人の小型機(主に戦闘機)と特殊な改造を受けた無人大型機が連結され、目標付近まで飛行した後に、無人機を分離・突入させる。重量バランス的には普通小型機を無人化して分離・突入させると思うんですがそれは...
- ダイムラーベンツ プロジェクトC&E:超巨大軍用機計画。全幅54m、全長35.8m、エンジン6発の巨大な母機と、それに懸架された5機の小型ロケット戦闘機から構成される。母機のエンジンがレシプロ水冷エンジンでどう考えても馬力が足りていない。
- DFS 346:ロケット実験偵察機。爆撃機から発進しロケットエンジンで音速を突破、滑空しながら写真偵察をするつもりだった。戦後ソ連が作りかけの機体を接収して完成させ、実験飛行を行っている。問題は構造で、ノーズコーン部分にコックピットがある。それ何てレドゥク?ただしロケットエンジンでエアインテークがないため脱出は容易で、実際先述の実験飛行中に制御不能になった際パイロットは普通に脱出している。
- マウザーMG213:簡単に言えば全自動射撃機能を持つ大型のリボルバー銃。バランスに優れた20mm型と対重爆撃機用の30mm型が存在する。当時の20mm級航空機搭載機銃と比べると大型で重いが、それらを大幅に上回る性能を持っていた。しかし終戦に間に合わず実用化はされなかった。終戦後は連合国に成果を接収され、同様の方式の機銃が各国で製造されている。リボルバーカノンの元祖。
- ヴェルファー=グラナーテ21:ネーベルヴェルファーを改造した口径21cmの空対空ロケット。連合軍爆撃機の密集編隊(コンバットボックス)を崩すために使われた。
- SG104 ミュンヒハウゼン:対艦攻撃用に試作された口径356mmの無反動砲。恐らく無反動砲では世界最大。Do217に搭載され試験されたがバックブラストがでかすぎて機体が損傷してしまい、フリッツXなどの方が使いやすいという理由で開発中止になった。
- クルト:イギリス軍のチャスタイズ作戦によりダムを破壊された後、進路上の森から見つかった反跳爆弾「アップキープ」の不発弾を分析して開発したドイツ流反跳爆弾。本家と違い爆弾本体にバックスピンをかけないため、投下した航空機と同じ速度で爆弾が跳躍して危険であるとされ、対策としてイギリスとは逆にロケットブースターで強引に加速させたがうまくいかず開発中止に。
- 太陽砲:航空機ではないがこれも。1929年に物理学者ヘルマン・オーベルトが提案した兵器で、上空8,200kmの低衛星軌道上に巨大な鏡を設置し、太陽光を反射して地上を焼き払う衛星軌道兵器の計画。役人「どれくらいでできそう?」→ 研究者「ざっと50年から100年かな」
戦車・陸戦兵器編
- 大口径火砲とそれを搭載した兵器の数々:そもそも陸に限った話じゃないが、戦車大国だったこともあってか陸戦兵器に特に多い傾向にある。
- 80cm列車砲:もう言わずもがな、ドイツで開発・製造された史上最大の火砲。詳細は当該記事にて。
- 12.8cm FlaK40:口径128mmの巨大対空砲。しかも連装。
- 15cm Flak50:口径150mmの巨大対空砲。しかも弾倉式の自動装填装置付き。
- 40.6cm SK C/34:アドルフ砲とも呼ばれた沿岸砲台用の超大型砲。元は後述のH級戦艦に搭載予定の主砲だった。アドルフ弾と呼ばれる専用砲弾を使えば56kmもの射程を得られたらしい。この長大な射程を生かしてフランス沿岸に設置された砲はイギリス海峡を通る船団を直接砲撃していた。
- I号自走重歩兵砲:I号戦車の砲塔を外して15cm榴弾砲をそのまま乗っけて防弾版で覆っただけの自走砲。本当にそのまま載せただけなので射撃の反動で動かないよう車止めと駐鋤で車体に固定している。車輪の分背が高くなってしまったが、市街戦で特に有用とされ以降ドイツ軍は15cm榴弾砲を搭載した自走砲を多く開発していくことになる。
- IV号突撃戦車ブルムベア:歩兵支援用にIV号戦車に密閉戦闘室と15cm榴弾砲を搭載した突撃戦車。しかしこれでも火力不足とされたため作られたのが...
- シュトルムティーガー:これである。修理のために後送されたティーガーⅠを改造して38cmロケット臼砲を前面150mm(傾斜あり)の密閉固定戦闘室ごと搭載した突撃戦車。ロケット臼砲のあまりの破壊力に対峙したM4シャーマンが至近弾だけで行動不能に陥った。
- ベア突撃戦車:密閉式固定戦闘室に30.5cm榴弾砲を装備した突撃戦車の設計案。
- ゲシュッツワーゲン・ティーガー:紙装甲化したティーガーⅡの車体に戦闘室を設け、21cm榴弾砲を搭載する自走砲の計画。
- カール自走臼砲:マジノ線攻略のために開発された124tのロマン砲、もとい自走砲。ドイツ流グランドスラム。しかも最近とある映画で...
- 重(すぎる)車両の数々:旧日本陸軍が「軽くする病」なら、こっちは「重くする病」。
- ヤークトティーガー:ティーガーⅡ車体に前面装甲250mmの戦闘室と12.8cm対戦車砲を搭載した重駆逐戦車。その火力はすさまじく、建物ごとM4シャーマンを撃ち抜いて撃破した記録まであるが、ティーガーⅡ以上に重量過多になってしまい機動性は劣悪に。そして長大で重い12.8cm対戦車砲は振動で砲架ギアが磨耗して照準が狂うのを防ぐ為に、行軍中は車体前面のトラベリングクランプで移動中は固定する必要があるが、いざ戦闘で砲の仰角をつける為に銃弾飛び交う前線で戦車を降りてトラベリングクランプを外すのは誰?
- レーヴェ:ティーガーⅡの後継として設計されていた戦車。中央配置の砲塔に15cm戦車砲を搭載し前面120mmの傾斜装甲で重量は92.6t、なのにエンジンはティーガーⅡと同じ。どう考えても出力不足である。こいつよりもっとスゴイ戦車を作るために計画は打ち切られ、完成したのが...。
- 超重戦車マウス:これである。陸の戦艦をコンセプトに開発された重量188tの超重戦車。二両が完成しうち一両がベルリンに迫る赤軍を迎撃すべく出撃したが、機関の不調と燃料不足で立ち往生して自爆処分された。
- ラーテ:だが上には上がいた。そのマウスをも超える28cm連装砲搭載、1000t級の超大型戦車として計画されたのがこいつである。 主砲はシャルンホルスト級巡洋戦艦の三連装砲を改造したもので、副砲塔がそのままマウスの砲塔。
- P1500 モンスター:そしてそのラーテをも上回る1,500t級の自走砲、もとい戦車。その実態はかの80cm列車砲に台車の代わりにキャタピラを履かせてレール以外も走れるようにするという代物。
- E-100:上述のマウスとは別に「標準化計画」に基づいて計画されたEシリーズのうちの超重戦車。こいつもレーヴェの時点で言及されていた15cm砲を搭載する。同じ口径の砲を搭載した重戦車はKV-2ぐらい(しかもE-100のは初めから対戦車設計)こちらは一応車体までは完成した。
- E-100駆逐戦車:E-100の車体に17cm対戦車砲を搭載した重駆逐戦車。お前絶対オーバーキルどころか一発で戦車2両をブチ抜くつもりだっただろ。
- ミーネンロイマー:重地雷処理車。二種類あるがどちらも妙な仕上がりに。
- アルケット社製:検索に引っかかるのは大体こちら。鋼製のブロックがくっついた巨大な車輪が特徴的な車輛で、見た目通り地雷を踏み潰して進む。自衛用にI号戦車の砲塔が乗せられている。
- クルップ社製:こちらは実車両が残っていないためかあまり知られていない。鋼鉄製の車輪でやはり地雷を踏み潰して進むようだが「『重』ってつくなら重くてもええんやろ?」といわんばかりに重量は130t。お前は超重戦車か。
- クーゲルパンツァー:日本に輸出され、旧満州国で鹵獲された文字通り謎の戦車。直訳すると「玉戦車」、見た目もまさにそのまんま。WW2時代の兵器でありながら、開発・運用に関するデータがドイツにも日本にも残っておらず、何のために作られ、何故日本に輸出されたのかも一切不明という古代遺跡じみた逸品。
- VK4501(P):所謂ポルシェティーガー。駆動系がガス・エレクトリック方式に電動式無段階変速機という時代の先を行く設計だったが、先を行きすぎてエンジン周りが追いつかず頻繁に故障してしまう結果に。独自開発の車外配置の縦置きトーションバーサスペンションも大重量車両には不向きであり、車体を流用したエレファント重駆逐戦車では頻繁に部品交換が必要だったとか。
- ラムティーガー:ポルシェティーガーの車体に傾斜装甲カバーを付けた車両の計画。これで走り回って邪魔な瓦礫を(必要であれば敵が潜む建物も)体当たりで耕すつもりだった。
- ラントヴァサーシュレッパー:上陸作戦などを想定して開発された水陸両用大型トラクター。これで小型艇や車両を曳航してイギリス上陸作戦を行うはずだったが、試作型が出来てから量産されるまでに2年もかかってしまいその間に上陸作戦は断念されてしまっていた。
- パンター偵察戦車:パンター車体に装甲車の砲塔を搭載したアンバランスすぎる重偵察戦車。こんなの作るよりパンター作れよという話になり中止に。
- ゴリアテ:遠隔操縦式の自走爆弾。有線式だったためケーブルが切れて動けなくなったり、誘導装置が振動に弱く砲撃の至近弾で動かなくなったりした。無線式も開発していたようだが詳細は不明。
- なお、ノルマンディー上陸作戦においても投入されたらしく、擱座したゴリアテに米兵が面白半分に手榴弾を放り込んで誘爆、数十名の死傷者を出す「大戦果」を挙げたとか。
- シュプリンガー:ケッテンクラートの車体を流用した自走爆薬。要はデカくなったゴリアテ。
- ボルクヴァルトIV:こちらも目的は同じだったが、爆薬を置いて車両は撤退し再利用する計画だった。
- ミドガルドシュランゲ:リアル地底戦車。地中から先頭部のドリルで敵基地に潜入し爆弾を仕掛けるという計画だった。奇しくも複数のユニットが連結して構成されるという点で、「空想科学読本」で書かれた"現実的な地底戦車"に近い姿になる予定だった。
- SK13:大戦末期、チェコスロバキアに『ガソリンないからガソリンを使わない戦車を造れ!』と言ったらエンジンを蒸気機関にしてきた。ドイツ版スチームタンク。
- ティーガーフィーベル:言わずと知れた重戦車ティーガーⅠのマニュアル本。その内容はティーガーⅠを「エルヴィラ・ティーガー」というコミック調に描かれた女性に擬人化、彼女を口説くという体裁でふんだんに散りばめられたイラスト(ヌードもあるよ!)と共にティーガーⅠの取り扱いを解説していくというもの。いわば「萌えよ!戦車学校」に通じるノリを半世紀以上前、しかもドイツ軍そのものがやらかした(本書はかのハインツ・グデーリアン公認である)罪深い(褒め言葉)逸品である。
- V3砲:報復兵器3号。フランス沿岸からロンドンを直接砲撃するために開発されていた多薬室砲。専用砲弾の研究や側面薬室の点火タイミングの計算、発射の圧力に砲身が耐えられないなどの問題に苦戦しているうちにノルマンディーに上陸されてしまい使用できなくなってしまった。
- シュティルグラナータ:大戦初期の時点で使い物にならなくなった3.7cm対戦車砲の火力増強を図った専用の対戦車擲弾。簡単に言うと対戦車砲の砲身からぶっ放すパンツァーファウスト。
- フリーガーファウスト:携帯用対空ロケットランチャー。ただし無誘導なので照準器があるとはいえ当たるかは運だった。
- Hs 297 フェーン:設置式のデカいフリーガーファウスト。
- 風砲:酸素と水素の混合気体を爆発させ、その圧力で高圧の水蒸気と空気を頑丈な鉄パイプから噴射、敵爆撃機を迎撃する対空兵器(要は巨大空気砲)。180m先の木の板の破壊には成功したが、数千メートルも上空まで届くはずもなく立ち消えに。
- 竜巻砲:モルタル製の樽に石炭の粉と酸素を混合して打ち出し、空中で燃焼させることで人工的に竜巻を作り出し敵機を撃墜する対空兵器。実際に竜巻自体の生成には成功したが、数百メートルしか影響範囲がなかったうえにすぐ消滅してしまうため計画中止に。
- ツィンメリット・コーティング:磁力で戦車にくっ付く吸着地雷を開発したのはいいが、敵に使われたら大変だと思ったので戦車を非磁性体でコーティング。結局連合軍は使わなかったが。因みに被弾時の剥離防止などのために表面に細かなギザギザのパターンが刻まれたが、具体的な施工方法が現在も不明。そして『細かなギザギザ』という立体模様は連合軍よりも後年の戦車モデラー達を大いに苦戦させている。
- ヘーネル StG44:事実上世界初のアサルトライフル。というか実際アサルトライフルとは突撃銃(StG=Sturmgewehrの意味)を英語で言っただけである。戦局の逆転こそならなかったが設計思想はあのAK-47に受け継がれ、またStG44自体も自由シリア軍が現在も運用しているらしい。
- モーゼル StG45:StG44の後継として開発されていた、ローラー遅延式ブローバック機構のアサルトライフル。先進的かつStG44よりも安価だったが、終戦までに30丁が生産されたのみで終わった。しかし終戦後も技術者たちはフランスへ移って同型銃の改良・開発を続け、セトメモデロAとして完成、その系譜はH&K G3へと連なっている。
海戦兵器編
- ネガー:ドイツの開発した人間魚雷(特殊潜航艇)。丸いキャノピーを付けた魚雷の下に魚雷がぶら下がっている、という日本やイタリアの似たような兵器に比べるとやっぱり独特の形状である。ちなみに日伊の人間魚雷と異なり、潜水はできない(半潜水で航行する)。さらに魚雷射出装置が故障しやすく、しかも故障した状態で発射するとネガーもろとも敵艦に突進していく(しかもハッチが内側から開けられない)という致命的な欠陥もあり、初期型は乗員死亡率80%という笑えない事態に...。ただし、どんどん“やっつけ”気味になっていった日本とは逆に、あとになるほど本格化し、最終的には鹵獲したX艇の技術も相まってミゼット・サブマリン“ゼーフント”まで進化する。
- ゼートイフェル:大戦後期に計画された特殊潜航艇。当初こそゼーフント似のものになる予定だったのだが、何を考えたのか履帯を履かせて(理論上は)海底走行も可能な水陸両用潜航艇に大変身。このため潜航艇なのに機銃や火炎放射器も搭載する予定だった。しかし試作艇を建造できる段階になった頃には上陸作戦を行える場所などなく、開発中止に。
- H級戦艦:ビスマルク級戦艦の後継として建造を計画していた戦艦。一度中止してからも設計を続けていたが年を追うごとにいろんなものが膨れ上がっていった。詳細は当該記事参照。
- G7魚雷:魚雷バカなのは何も日本だけではない。日本が酸素魚雷による航続距離の延長を図ったのに対し、ドイツは命中精度で勝負に出た。その方法と言うのが、音響観測によるホーミングと特殊機構を利用した蛇行潜航というもの。前者はソナーを採用した手前、時速を25kt未満に制約する必要に迫られたものの、後者はFaT(Flächen Absuch Torpedo/バネ式魚雷)・LuT(Lageunabhängiger Torpedo/位置自律魚雷)という蛇行しながら敵艦に当たりに行くという変態航行で命中率を伸ばすことに成功した。ただ音響追尾式が顧みられるようになると、FaT・LuTはそのまま姿を消していった。また音響式も実戦投入時期が遅く、本格的に成果を上げ始めたのは戦後となった。
その他
- フォルクスワーゲン ビートル(タイプ1):言わずと知れた名車。戦前に伍長閣下の「高性能で低価格な車を作れ」という困難な要望にフェルディナント・ポルシェ博士が応えてしまった(価格以外はポルシェ博士が温めていたコンセプト通りだったとも)。量産されたのは戦後だが当時の自動車からは考えられないフォルムのため米英が価値を理解せず戦後賠償としての接収から逃れられたりより古い設計の車が接収されたりと多数のエピソードを持つ。その設計はポルシェ911へと受け継がれている。
- 芸術へのこだわり:モダンアートを“退廃的”と非難し迫害した。一方で上記のリヒャルト・フォークト博士みたいなのが活躍したことを考えるとどこまで本気だったのかはわからない。
- 制服の見た目へのこだわり:実際の着心地はイギリス軍のそれに、防寒性はロシア軍のそれに比べて悪かったらしく、しばしば分捕ったイギリス軍やロシア軍の軍服を作業着として着用していた。
- 巨大兵器・ロマン砲へのこだわり:上述の超重戦車や大口径火砲の数々、H44・H45など。大体総統閣下と某リアル有澤重工のせい。
- オカルトへのこだわり:そもそもナチス思想自体が戦前に流行ってた復興異教運動の流れを汲むカルトし(ry
- オリンピックの聖火リレー:聖火リレーが始めて行われたのは1936年のベルリン五輪のとき。その後のドイツの侵攻ルートがリレーと酷似していた為「侵攻ルートの確認だったのでは?」という説も。
- ヨーゼフ・メンゲレ:収容所の囚人を用いて人体実験を繰り返し行った。ナチス人種理論の信奉者であったが、それとは全く異なった独特の持論も持っていたという。
- 19.10型蒸気機関車:小型の動輪四軸それぞれに二気筒の小型蒸気機関を取り付けた試作高速蒸気機関車。静粛性と高速性に優れていたものの複雑すぎ、また開発時期が第二次世界大戦に重なっていて後述のBR52を大量産するべき状況だったため、量産化はされず試作どまりに。戦後アメリカが持ち帰ってテストしたが引き取り先が無くスクラップになってしまう。
- シーネンツェッペリン:戦間期に開発された、航空機用ガソリンエンジンで推進式プロペラを回してかっ飛ばす高速列車の試作車。速度性能は優秀だったものの後部にプロペラを持つため多数をつないでの編成運用が運用上困難だったことなどから試作どまりに。名前の由来はツェッペリン飛行船に形が似ていたからとか。
- BR52蒸気機関車:ドイツ版戦時設計貨物蒸気機関車。大戦後半に大量生産され、台枠の肉抜きをバーナーで焼き切って跡を整形しないなど量産性第一で乱造…かと思いきや、戦前設計の優秀貨物機BR50をベースにし、性能を落とさずに量産性を上げるべく設計段階で徹底的に突き詰めたので、「第三帝国が勝つまで数年持てばいい」はずが数十年に亘って走り続ける耐久性を発揮。ドイツの鉄道車両メーカーが総力生産したせいでドイツ向けだけで6000両以上が竣工、しかもドイツだけでなくフランスやチェコスロバキアなど周辺諸国やソ連でも戦後も運用した。そればかりか占領されていた国の工場が、解放後に残っていた仕掛品を完成させたり、ポーランドやトルコなどではコピー生産もされたため、正確な生産数は不明だが最終的に各国総計で9000両以上生産されたと言われる。鉄道機関車としては9000両という数字は群を抜いた世界最多量産機で、東西両ドイツやフランスやオランダ、東欧諸国などドイツに占領された諸国の復興を文字通り支え、保存機もドイツや旧ソ連圏、東欧諸国、オランダなど合計で200両以上が存在する。
独国面・東西分割編
- ドルニエ Do28:双発多用途機。主翼の下のコックピット両サイドにエンジンがあり、そこから固定脚が生えているという独特な外見をしている。
- ドルニエ Do31:冷戦期に開発されたVTOL輸送機。搭載量たったの3.5tな上にエンジン10台搭載のため燃費は極悪。さあドルニエの関係者は正直に答えるんだ、こいつを考えたのはイギリス系の技術者だと……というか実際エンジンはイギリス製である。
- VFW 614:フォッケウルフとヴェーザーが合併して発足した新会社の手になるローカル路線向け旅客機。滑走路が未整備な空港への離着陸を想定して、エンジンが普通のジェット旅客機とは真逆の主翼上にある。STOL性の強化やエアインテイクへの異物混入防止に強みがあったが、オイルショックにぶつかったせいもありほとんど売れなかった。
- バーデ 152:東ドイツが開発したジェット旅客機。3機が試作されたが、1機は墜落事故で失われ、生産型4機も中途で放棄された。東側の盟主ソ連が自国開発の機体を推したという側面もあったが、爆撃機の設計を元にした扱いづらい自転車式(タンデム式)降着装置、なによりスマートさに欠ける個性的な外見(きれいな言い方)では、売れるわけがなかった。結局、東ドイツでの航空機産業再興の夢は、この1機種で潰えた。
- F-104G ZELL:アメリカのF-104を最も多く輸入した西ドイツ軍では、F-104を国防の要としていた。そして来たる第三次世界大戦に向け、滑走路全滅も視野に入れて行った改造とその戦術が、ロケットブースターをくっつけてゼロ距離発進し、敵地上部隊にB43水素爆弾による核攻撃を敢行するというもの。ただし航続距離が短く西ドイツから国外へ長距離進出することができないため、最大限進出しても元同胞である東ドイツに、最悪の場合自国領内で核攻撃しなければならず、また攻撃できたとしても帰る基地がないためベイルアウト必至という大きすぎる難点があったが、この難点は黙殺されて試験まで行われた。結局「核爆弾の分散配置というセキュリティ上の問題」で中止になるも、F-104GにB43を搭載すること自体は続けられ、自国内で核を使う事は現実的なシナリオであり続けた。
- EWR VJ 101:ZELLと同じく滑走路が使えない状態で核攻撃を行うために試作されたVTOL実験機。主翼の両端にジェットエンジンがあり、垂直離着陸時は上を向く。
- VFW VAK 191B:こちらは実験機ではなく本格的なVTOL核攻撃機。エンジンは胴体内に収まり設計としてはハリアーに近いものになったが、リフト用エンジンがデッドウェイトになってしまい、性能でハリアーに勝てず中止に。
- パンター駆逐戦車:ヤークトパンターのことではない。地形に隠れつつミサイルを撃つために設置位置を高くという発想自体は普通なのだが、パワーショベルのようなクレーンアーム(高さ12m)の先に連装ミサイルランチャーを付けている。こんなものでも開発優先度が高かったらしいが、冷戦終結で開発中止に。
- レオパルト1C案:レオパルト1の試作案の一つで、ボルクヴァルト社の自己資金開発。無人砲塔・履帯を外せば装輪走行可能・エンジンを車体前部に4基搭載・油気圧式サスペンションなど、1960年代初頭とは思えない野心的かつ先進的な試作案...だったが、1961年にボルクヴァルト社が経営破綻し、試作が作られることは無かった。残当。
- フェアズーフストレーガー(VT)1戦車:レオパルト1の後継として試作された、主砲を2門搭載した主力戦車。ただし砲塔は無い。
- VTS-1:VT1と同世代の技術実証戦車。この時代の戦車は対戦車攻撃を防げるだけの装甲を施すことが無理と思われていた(実際レオパルト1は機動力で対戦車ミサイルを回避するコンセプトで開発された)ので、車体正面に全ての装甲を集めるために砲塔を無くして主砲をむき出しにした。無人砲塔の発想自体は間違っていなかったが複合装甲の登場で戦車としてはお払い箱に。
- IDAS:潜水艦の魚雷発射管からぶっぱなす対空ミサイル。元々対潜ヘリコプター攻撃用に開発された。だが、開発元は「対空攻撃だけでなくて敵艦の艦橋にぶち込んで対艦攻撃にも使えるよ!」と宣伝していたり、母艦から光ファイバーケーブルによる手動誘導が可能だったりと、何だか紅茶に毒されていると思わしき面もちらほら・・・。
- MW-1 STABO:クラスター弾ディスペンサー。小型爆弾から対車両地雷までいろいろあるが、STABOは滑走路破壊用のクラスター弾という珍しい仕様。ただし使うには滑走路上空を低空で飛ばねばならず、搭載機(トーネードIDSやF-104など)やはその為に敵軍滑走路周辺という対空兵器の巣窟へ突っ込まねばならない素敵仕様。
- ラインメタル製戦車砲用サプレッサー:ラインメタル社と音響工学研究所が共同開発した大型砲用サイレンサー(実戦向けではなく、砲の試験用に開発された)。同様のものは他所も持っているが、これはあまりにも強烈な形状をしている。完成度高けーなオイ。
- メッサーシュミット KR200:第二次大戦後、航空機の製造を禁じられたメッサーシュミット社が製作した3輪自動車。前身となったKR175では後進が出来ず、実用性に難があった。改良型のKR200ではリバースギアを追加すると思いきや、エンジンを逆回転可能にして前進用のギアを使用して後退を行う。もちろん搭載しているギアは4速とも後退時に使用可能で、世界一速く後退の出来る車となった。
- ハインケル カビーネ:ハインケル版イセッタ。開発のいきさつは航空機の製造を禁じられた為で上と同じ。
- SIBAS32:シーメンス社製のVVVFインバータ。要するにドレミファインバータである。「インバータの磁励音を小さくするのに四苦八苦するくらいなら逆に心地の良い音にしてしまえばいいだろ!」という逆転の発想で非同期音が音階状になるようにした。尚、この音階は設定で止めることもできる(E2系新幹線など)。
- H&K MP5:ドイツ連邦軍制式のG3ライフルをベースにしたサブマシンガン。G3同様のローラーロッキングディレイドブローバック機構を持ち、軍用銃としてはトップクラスの命中精度を持つG3と同等の命中精度を確保した。信頼性もG3譲りで高い。登場当時サブマシンガンは「安価で精度の低い弾丸バラ撒き器」として見られており、超簡素な構造を持つ当時のサブマシンガンと比べ、信頼性に不安があると見なされ、軍では採用されなかった。しかし、1977年のルフトハンザ機ハイジャック事件で活躍すると評価は一転。世界各国の特殊部隊がこぞって装備する武器に変わった。ただお高い。
- H&K MP-2000:「これじゃあ発展途上国じゃ買えないだろう」と開発していたMP5の廉価版。が、これは売れずにMP5の方が普通に発展途上国でも採用されている。
- H&K G11:「薬莢って熱いし重いし散らかるし何より排莢機構つけないといけないし邪魔なんだけど...」「じゃあいっそ薬莢の出ない銃を作れば?」という発想で開発された、ケースレス弾という薬莢のない専用弾薬を撃ち出すアサルトライフル。しかし発砲による熱を排莢で排熱できないため、連射すると装填された弾薬が過熱されたバレルで自然発火してフルオート射撃が止まらなくなる、本体はともかく50連マガジンが一本で五万円とお高いことなどから採用されず。ケースレスにしたら需要レスになっちゃったのだ...。
- ゼンガー/ゼンガーⅡ:大戦中に計画された「大陸間弾道爆撃機」と同じ名前のドイツ版スペースシャトル計画。こちらは二段式であり、滑走路から発進して分離後に一段目も自動操縦で帰還する計画だった。
独国面・東西再統一以降編
- MBB ランピリダエ:80年代にメッサーシュミット・ベルコウ・ブロームで開発されていたステルス戦闘機。ステルス性を手に入れたドイツの判断は...ミサイルで一撃離脱すればいい。ドッグファイトなど無用。しかしどういう訳か計画は謎の中止に。
- ブランデンブルク級フリゲート:ハンブルク級駆逐艦、ブレーメン級フリゲートの後継艦として建造されたフリゲート。全体的に見ると、フリゲートとは思えない重厚感かつステルス性能。排水量も4900tとかつての軽巡洋艦に匹敵する重量となった。
- ザクセン級フリゲート:上記よりもさらに排水量が増したフリゲートの艦級。防空性能を施したステルス軍艦で、その外見からミニ・イージスとも呼ばれている。しかも、上記以上に大幅重量が増え、結果的に5420tの排水量となってしまった。ステルス艦なのに...。
- バーデン・ヴュルテンベルク級フリゲート:だが上には上がいた。前級のザクセン級を超える排水量とステルス性能。その重量はなんと、脅威の7420t!!これは海自のあきづき型を凌ぎ、今まで建造してきたフリゲートの中で世界最大である。主砲に至っても、64口径127mm砲を1門搭載され、イージス艦に匹敵する攻撃力を手に入れた。もはや、フリゲートの定義とは一体・・・・。
独国面・ワイマール共和制以前編
- ハノーファー選帝侯ゲオルク・ルートヴィヒ:ニーダーザクセン州ハノーファー(ハノーヴァー)が産んだ現イギリス王室の祖。
- ランツクネヒト:「中世最後の騎士」と呼ばれる神聖ローマ帝国ドイツ王マクシミリアン1世によって編成された、当時最強と呼ばれたスイス傭兵を教師にして編成した傭兵団。 要は「安いスイス傭兵」という便乗商売。 中世最後の騎士が編成したこの組織が騎士の戦争価値を失わせるきっかけになったのは歴史の皮肉か。 相手がスイス傭兵だと商売敵だったために特に悲惨な戦いになった。
- モーニングスター:トゲトゲのついたメイスを初めて作ったのはドイツ人。「どこが独国面?」と思うかもしれないが、これを旧ドイツ語読みすると「モルゲンシュルテン」とやたらかっこいい名前になる。
- 巨人連隊:軍隊・兵士大好きなプロイセン王フリードリヒ・ヴィルヘルム1世が作らせた、やたら長身な兵士だけを集めた連隊。しだいにエスカレートしてプロイセンどころかヨーロッパ中から長身の男を連れてきたり、他国の大使がそれを聞いて外交儀礼の贈り物として自国の長身の兵士を引き渡したりしていたが、『長身』にこだわりすぎて知的障害者など兵役に向かない人まで兵役につかせたせいで戦闘能力がイマイチ、しかも他の兵士より待遇をよくしたせいで部隊維持費用が膨大になる、外国から拉致してきた兵士に反感を買って暗殺されかけるなどあったが、王は死ぬまで部隊を解散させなかった。...王は多分一生反省していない。なお息子は跡を継いですぐに巨人連隊を解散させた。
- セロンカバード・フォッカー EIII:傑作戦闘機フォッカーEIIIの改良案(?)の一つ。 「布張りじゃなくて透明な繊維張ったら光が透けて見つかりにくくなるんじゃ?」という、ある意味世界初の光学迷彩的な発想で作ってみたらしい。結果は透明なフィルムに太陽光が反射しまくって逆にものすごく目立った。
- フォッカー V.8:三葉戦闘機フォッカーDr.Iが格闘戦で良好な性能を見せたので、「じゃあ主翼もっと増やしたら機動性上がるんじゃね?」と思って開発した五葉機。 ただしDr.Iの時点で前方視界が悪かったので、上に積むのではなく後ろに二枚を追加配置してタンデム複葉機にした。結果、期待外れの性能だったためボツに。
- DFW T-28フロー:一次大戦中の試作戦闘機。極端に縦長で短くずんぐりとした、「リアルたまごひこーき」とでもいうかのような機体が特徴(ただし横幅は狭い)。「フロー」とはノミのことで、他にも正面から見るとラジエーターの形が人の顔にみえるため「笑う中国人」というあだ名もあった。ギャグのような外見だが、これも構造材の削減による軽量化、流線型による空気抵抗の削減などを突き詰めた結果であり、実際に最高速度180km/hという1915年当時としては異例の高速機となった。しかし操縦席から前下方が見えないなど、操縦性の問題から正式採用はされなかった。
- ローゼンジ迷彩:第一次大戦中のドイツ軍機によくある、様々な色の亀甲型を連ねた迷彩。一見カラフルだが遠くから見るとぼんやりとした灰色に見えたり、また地面を背景にすると同系色が溶け込んで輪郭が分かりにくくなったりと、迷彩の機能はちゃんとあったらしい。ただ黒十字の識別マークが目立ってしまうことも多かったようだ。なお、当時の飛行機は布張りがほとんどだったので、最初からこの迷彩をプリントした布を使っていたのだが、当然ながらプラモデルではそうはいかない。塗装で再現するには凄まじい手間がかかるため、キットには大抵デカールが同梱されているが、翼や胴体といった広い面積全体にデカールを貼るのもそれはそれで技術が必要。張り線と並んで複葉機模型の敷居を高くしている……かもしれない。
- パリ砲:またの名をヴィルヘルム皇帝砲。 第一次世界大戦で用いられた最も大きな列車砲であり、空気が薄い高高度では空気抵抗の影響が激減することを利用して120km先のパリを砲撃した。(最大有効射程は130km。どれくらいの距離かというと名古屋から大阪を砲撃できるぐらい)発射された砲弾に関しても人類が作った物体として初めて成層圏に到達したという記録を持つ。(ちなみに二番目は30年後に開発されたV2ロケット)命中精度は『狙った都市のどこかには落ちる(最大で前後800m、左右2kmもずれる)』程度しかなかったが心理的効果は大きかったらしい。しかもあまりにでかすぎて発砲のたびに砲身内部が削れるため、砲弾の直径がだんだん大きくなっていく。敗戦によって現物は破壊され、資料も散逸。正確な図面もなく、半ば伝説化している謎多き巨砲でもある。
- マウザー M1918:世界初の対戦車ライフル。シングルショットで口径は13mm。Mk.Ⅳ戦車以前の戦車なら貫通可能。だが、反動吸収機構を一切持たないため、「一発撃つだけで構えた方の肩が脱臼、一人二発しか撃てないことから二連発銃と呼ばれた」という冗談が出来るほど反動が強烈。2~3発ほど撃った後には多くの兵士が頭痛やめまいを訴え、未熟な射手では鎖骨を折ることもあったそう。
- Kワーゲン:一次大戦期の試作『超重戦車』。13mという長い車体にマークⅠ戦車の倍の30mm装甲を全周に施した結果、重量120tに膨れ上がった(これでも計画時の160tから軽量化された結果である)。因みに試作車が2輌完成したが大戦終結に間に合わず。アレ?どこかで聞いたような...
- ツェッペリン・シュターケン R.VI:一次大戦で用いられた複葉機。260馬力×4発で2トンの爆弾を運ぼうとした結果、横幅42mというサイズだけならB-29と同等にまでデカくなってしまった伝説の巨大複葉重爆撃機。
- ガスト式機関砲:カール・ガストが開発していた機関砲。2つの銃身をシーソーてこで繋いで交互に装填と発砲を行う多銃身機関砲だが、開発中に第一次大戦が終わってしまい間に合わなかった。なぜかドイツでは顧みられなかったが、ソ連では実用化されており現在のロシア軍機にも搭載機がある。
- ドルニエDoX:1929年に初飛行した旅客用飛行艇。別名空飛ぶ豪華客船。全長40m、全幅48m、最大離陸重量56t、乗客150人(デモフライトは乗員10名、正規の乗客150名、密航者9名、合わせて169名を乗せて行った)という当時としてはあまりにもデカ過ぎる巨体。そのくせエンジンは600馬力。12基も搭載したが全く足りず、100m以上への上昇さえ不可能。(というか地面効果なしじゃ飛べない)飛行中も付きっきりで調整を行う必要があるなどというポンコツ具合であった。デモフライトでは当時は難しかった大西洋横断飛行も行ない故障や不調続出で片道9ヶ月、到着先では修理に7ヶ月を要するなど無茶しやがって...と言いたくなる有り様。そのため3機しか製造されず1機は博物館に収蔵されるも空襲により破壊され2機は世界史上初めて航空戦力(飛行船・飛行機)を戦場に投入した国が買うも飛行艇としてのの仕事はあたえられず空軍に転用され、さらに使えないことから解体された(この時エンジンが600馬力のフィアット A.22Rに換えてあった。なぜ馬力を強くしなかったのか...)。ある意味世界初のエクラノプラン。内部は3階建て構造で、ダイニングバーやラウンジ、喫煙スペースなど空飛ぶ豪華客船の名に恥じない設備が整えられていた。ちなみに北海道の新千歳空港ターミナルビル一階に復元模型が展示されている。
独国面が世界を変えた例
我がドイツの科学技術は世界一ィィィィーーーーッ! できんことはないイイィーーーーーーッ!!
たまには(?)脱線したり踏み外しても、元々は凝り性で生真面目な性分なのだから、本気出せばざっとこんなもんなのよ。
- 自動車:「車(ガソリンエンジン車)を作ったのは日本人ですか、アメリカ人ですか? ジョーダンじゃない我々(ドイツ人)です! 本家ですよ!」カール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーに始まり、今に至るまでドイツの基幹産業。世界の有様をどれほど変貌させたかについては、もはや解説不要だろう。先述のフォルクスワーゲン・ビートルは、累計生産台数“2152万9464台”という、未だ破られぬ世界記録を持つ。
- ディーゼルエンジン:上記のダイムラーやベンツが開発したエンジンは燃料と空気を混ぜた混合気を爆発させるのに点火プラグを必要とするが、これを「面倒臭え! 圧縮で加熱した空気に直接燃料をブチ込んで爆発させりゃええんや!」と斬って捨てたのがルドルフ・ディーゼル。低回転で大出力の特性から、搭載対象が大型になればなるほど威力を発揮し、鉄道や船舶から蒸気機関を駆逐。戦車や産業機械、大規模非常電源まで幅広く使われている。一方で近年では小型化も進み、一部の飛行機やバイクにも搭載され始めている。(まあ、例のフォルクスワーゲンや三菱自動車がミソつけた件はおいといて……)
- 戦争:褒められた話ではないかもしれないが、クラウゼヴィッツの『戦争論』に始まり、陸の“電撃戦”、海の“無制限潜水艦作戦”など、常識を覆す新たな理論、戦術を数多く編み出した。鉄道の兵站における有効性を見出したのもドイツ統一戦争期のプロイセン。ただし、肝心のドイツが20世紀以降はほとんど勝ったためしがないというのは内緒の方向で……。
- ポケット戦艦:敗戦によって水上戦闘艦の排水量を1万トンに制限されたドイツ海軍が捻りだした装甲艦。就役前は「政治によって造られた艦」「弩級戦艦に砲力で、巡洋艦に速力で劣る艦」とひどい言われようだったが、建造してみれば列強は「え、1万トン強で28cm三連装砲二基も積んでるの?しかも航続距離長いじゃん、海防戦艦叩き潰して通商破壊十二分にできるじゃん、えっ」と予想外の性能に大慌て。フランス・イタリア・イギリスで旧型戦艦の近代化改修や新型艦建造の予算が通るきっかけになった他、世界中で中型戦艦のブームが巻き起こり、高速戦艦の整備に拍車がかかるなど、実はコンセプトで列強軍備の隙間を的確に突いたものだった。(ただし当のドイツは陸戦支援要員としていたらしいが...)後の第二次世界大戦では列強の恐れていた通商破壊で活躍した。
- 電撃戦:一般には機動力の高い部隊によって戦いの主導権を掌握してそれを活用していく戦術を指す。成功すれば非常に短期間で侵攻可能で、実際フランスを一か月半で敗戦に追い込み、ユーゴスラビアを僅か10日で制圧。しかしその後のバルバロッサ作戦は広すぎる戦線とソ連軍の撤退戦術によって失敗、後のバグラチオン作戦で逆電撃戦とでも言うべき大敗北を喫してしまった。ちなみに戦後のイスラエルが体得し、中東戦争に活かしていたり。
- 戦略爆撃:第一次大戦で、初めて前線ではなく、後方の都市を爆撃したのがドイツ。この時の主力は飛行船で、命中率も低く、敵の士気をくじく“恐怖爆撃”の側面が強かったが、後に航空機と戦術の発達により、スペイン内戦での悪名高き“ゲルニカ空爆”などで、戦略爆撃の威力(と恐怖)を示した。ただ、肝心のドイツはイマイチ有効性を理解しておらず、“精密爆撃”にシフトしてしまったあげく、手痛いしっぺ返し、倍返しを……
- 高高度航空機:戦争における高高度の有用性を最初期に示したのも実はドイツ軍。1940年に投入されたJu86Pは高度12,000mを飛行する高高度偵察/爆撃機で、当時この高度まで飛行できる迎撃機がなかった連合軍にとって「あの高度を飛べる戦略爆撃機が完成したらヤバい」と高高度戦闘機の開発を急ぐ要因となった。もっともドイツ軍は先述の通り精密爆撃(急降下爆撃)に力を入れすぎてそもそも戦略爆撃機自体完成しなかったのだが。
- 無制限潜水艦作戦:これも第一次大戦でドイツが実行。海上輸送を遮断し敵国(イギリス)を一時窮地に追いやるものの、中立国にまで犠牲を広げてしまった結果、アメリカの参戦を招いてやっぱり手痛いしっぺ返し。第二次大戦でもUボートが猛威を振るったが、敵にもまんま手口をパクられ、地球の裏側で同盟国が「餓死寸前」まで追いやられるとか……そこ、「ヤブヘビ」とか言うな。
- 各種ミサイル:連合軍の度重なる空襲と戦況の悪化に悩まされたドイツ軍が、一発逆転の秘密兵器として開発したのがこれ。結局開発が間に合わず実戦投入されたのは一部のみ、成果も限定的だっだが、X-4、ヴァッサーファル、ラインボーテの三つは戦後の米ソ両国におけるミサイル開発の大きな基礎となり、V2は戦後各国の宇宙ロケット・弾道ミサイル開発に生かされることとなった。
- ヘンシェル Hs 298:空対空ミサイル。誘導方法はFuG 203電波誘導。
- ルールシュタール X-4:空対空ミサイル。誘導方法は操作手による有線誘導とクラーニッヒ音響式近接信管。
- Hs 117 シュメッターリング:地対空ミサイル。誘導方法はMCLOS。
- ヴァッサーファル:地対空ミサイル。誘導方法はMCLOS。
- ライントホター:地対空ミサイル。誘導方法は不明。ちなみに炸薬がミサイル本体の後部にあるという英国面らしさを兼ね備えている。
- ラインボーテ:地対地ミサイル。誘導方法は不明だが性能は限定的。戦後ソ連で開発されたFROG地対地ロケットシステムはこれが元になっているとされる。
- フィーゼラー Fi103(V1):地対地巡航ミサイル。誘導方法は機首のプロペラの回転数が一定を超えるとエンジンが停止、目標地域に落下するというもの。
- フィーゼラー Fi103R ライヒェンベルク:有人型。目標都市の上空までパイロットが操縦し、突入前に脱出する計画だったが、脱出した真後ろにはエンジンの吸気口が...。さすがに設計段階で気づいて中止になった。
- V2:液体燃料弾道ミサイル。誘導方法は慣性誘導、後期型には電波誘導のものもあった。
- Hs 293:空対艦ミサイル。誘導方法はジョイスティックを利用したMCLOS。戦果は44万トンとされているものの、誘導滑空爆弾フリッツXとの混同も多くはっきりしていない。
- 航空機関砲:第一次世界大戦では初めてプロペラ同調装置をつけた同軸機銃を搭載した"フォッカー アインデッカー"を量産。(これ以前の戦闘機はプロペラ内固定銃がプロペラもろとも射撃してしまうため、その部分を鉄板で補強するなどしていた)第二次世界大戦では小型・大火力を誇るMG151 20mm機関砲が猛威を振るった。また、先述されているガスト式機関砲やリヴォルバーカノンは開発当時こそ間に合わなかったが、同じ動作機構の機関砲がロシアやヨーロッパで現行戦闘機の機銃として採用されている。
- ユンカース J.I:世界で初めて量産された全金属製航空機。重量増加により機動性は低くなってしまったものの、増え始めた対空砲の攻撃に対してなかなかの防御力を発揮し、さらに胴体の主要部分とエンジンを装甲で防御しているため、搭乗員の生存性も高いとパイロットからは好評だった。
- ドライジーネ:ドライス伯爵、木馬に車輪2つをつけたような乗り物を発案。…しかしこの妙なオモチャにペダルが付き、後の世に於いて最も身近な乗り物の一つとなるとは伯爵含めて誰が思っただろうか。
- サブマシンガン:拳銃弾を使う小型の機関銃。WW1終盤に世界初の短機関銃MP18を実用化。塹壕戦で投入され、猛威を振るった。WW2期にはMP38を開発。生産性に優れた簡易な武器としてのサブマシンガンの使用を世界に先駆けた。戦後は、G3ライフルをベースにしたMP5を開発。ドイツが先駆けた「弾丸バラ撒き器」としてのサブマシンガンの概念を破り、精密な射撃が可能な武器に進化させた。