フライングパンケーキ(「空飛ぶパンケーキ」の意味)とは、米国ヴォート社が開発した空飛ぶ円盤である。
型番はXF5U。
概要
海上戦闘の主力が航空機に移りつつあった時代、「STOL(短距離離着陸)性能を強化すれば偵察機を積むのがやっとな普通の巡洋艦でも戦闘機積めるんじゃね?」と云う無茶な発想によって生み出された試作機。
あくまでもSTOL機で、VTOL(垂直離着陸)ではないが、艦船に積むというところがミソ。母艦の移動に伴う「向かい風」を受ければ、事実上VTOLに近い離艦が可能になるという、それなりには理屈に合う目論見もあった。
恐らく日本軍なら「艦上機」ではなく「艦載機」に分類しただろう。
幅広の翼は低速でも失速せずに飛ぶことができる→だったら機体の全長一杯まで翼にすればよくね?と考えた結果、主翼が存在しない円盤状の胴体から尾翼とコクピットが飛び出したウミガメの如き奇怪な構造になってしまった。
一見すると主翼が無い円盤だが、見方を変えれば胴体そのものが翼と化した所謂リフティングボディとも云える。こんなものが飛びそうに見えるかどうかで、航空力学を理解しているか否かが判別できるとも。
上述の通り非常に野心的なコンセプトであったが、結局は開発中止となる。要因は様々で、
- 発注は1944年7月だったが、あまりに尖った構造のため、製作に手間取った(試作機の完成は終戦後の1945年8月)
- ヴォート社がF4Uの製造で手一杯だった。
- ジェット機やヘリコプターの実用化に目処が付き、優位が失われた。
- そもそもプロペラがデカすぎて、翼下にロケット弾などを積めない。
- アメリカ軍が何食わぬ顔で空母を量産した(普通の艦上機でいいじゃん)
などなど。
結局、検討モデルのV173が飛んだものの、XF5Uは初飛行前に廃棄命令が下されて、ただの一度も空を舞うことなく終わってしまった。従って、その飛行特性やSTOL性能の実力は、確かめられぬままに「幻」となったのである。
皮肉にも、円盤状の頑丈な機体構造や、ヴォート社考案のメタライト(ハニカム構造のバルサ材をアルミニウムでサンドイッチした、一種の複合素材)がわざわいして、解体には大変な手間がかかったという。せめてもの抵抗だったのだろうか……
日本かイギリスあたりが開発して戦中に実戦配備していたら、普通に艦隊防空戦闘機として意外と役に立ったのかもしれない…
関連イラスト
名前の所為か、料理に見立てた投稿が目立つ模様・・・
別名・表記ゆれ
登場作品
結局は一度も飛ぶことがなかった機体だが、奇抜な形状から登場作品は多い。
「F5Uフライングパンケーキ」として登場。空飛ぶ円盤であることを意識してかレーザー兵器らしきものを搭載していることがほとんど。
敵機として登場。
アメリカで試作された最新鋭機として登場。2機が運用されている。
- 鋼鉄の咆哮シリーズ
PC版で「F5Uスキマー」として登場。20mm機関砲とロケット弾を装備している。
一方コンシューマ版ではPC版の移植版である初代を除き一切登場していない。
ともに装備として運用できる艦載機として登場。