概要
ドイツの自動車メーカー「ポルシェ(Porsche.A.G)」が、1964年より製造・販売しているスポーツカー。
それまで製造していた「356」に代わる同社の看板モデル。
時代に応じて水冷エンジン化など大規模なモデルチェンジを重ねながらも、水平対向6気筒、リアエンジン、2ドアファストバックボディと愛嬌のある顔という伝統を守り続けている。
最も初期のモデルは空冷自然吸気エンジン、水平対向6気筒で総排気量1991ccだったが、2代目となる930型(1974年~)ではターボチャージャー付きのモデルが、3代目となる964型(1989年~)では4WDモデルが登場し、現在でも色褪せない「ハイパフォーマンスカー」として不動の地位を築き上げた。
Pixivでは、単に「911」というタグが付けられることが多い。
主なモデル
911は年式によって細かい改良が加えられたり、グレードの構成が大変複雑なので、記載しているのは各モデルの概要のみである。
901型
通称 ナローボディ。初めは「ポルシェ901」として売り出す予定だったが、プジョーが「間に0が入る3桁の数字全部」を自動車の商標として登録していたため、やむなく「ポルシェ911」として売り出すことに。
最初に発売されたモデルは、 水平対向6気筒 SOHC 総排気量1991cc(130PS)の空冷 自然吸気エンジンが載せられていた。
このエンジンは諸元こそ控えめであったが、実際には排気量を2700cc近くまで拡大できるよう予め余裕を持って設計されており、実際にモデルチェンジを経るごとに2.2L、2.4L、2.7Lと拡大された。
限定モデルでは3Lのエンジンを載せたモデルも存在した。
930型
1975年に発売された2代目。2994ccに拡大されたエンジンにKKK製のターボチャージャーが載せられ、最大出力280PS、最高速度280km/hを誇った。
最終的にターボ車のエンジンは3.3Lまで拡大され、最も高出力のモデルは330PSを発揮した。
一方で、NAエンジン車は1977年まで901型のまま生産され、翌年から930型となった。
964型
1989年発売の3代目で4WDモデル(カレラ4)が設定された最初の911。
エンジンは3.6Lまで拡大されたが、依然空冷エンジンである。
ターボ車の登場はやや遅れて1991年に発売された。
993型
1993年発売の4代目。最後の空冷ポルシェ。
外観に(歴代モデルと比較して)大きく手が入り、901型から延々と続いたデザインを継承しつつもモダンな外観に。
リアのサスペンションが改良されたため、ハンドリングに安定感が出た。
1995年から発売された「ターボ」は4WD+ターボを実現した最初の911である。
996型
1997年に登場した5代目。ポルシェのトレードマークだった空冷エンジンは、年を追うごとに厳しくなる排ガス規制に対処するために他社同様の水冷エンジンとなった。
エンジン以外の部分も刷新されたが、水平対向6気筒エンジンをリアに配置する構造や、ファストバッククーペのボディといった伝統は継承された。
ライトは1996年登場の下位モデル「ボクスター」同様の涙線形。
他の部品、それも外装部品にボクスターとの共用品があった為にユーザーから大顰蹙を買ったため2002年にマイナーチェンジ。2004年には997型へ席を譲り渡した。
GTレース向けの高性能モデル「GT3」の登場はこの代から。
997型
2004年発売の6代目。先代で大顰蹙を買ったボディデザインを一新し、丸型のヘッドライトに回帰した。
991型
2011年登場の7代目。車体の材質に軽量合金を多く使用し、従前の同グレードのモデルと比べて軽量化が成された。
992型
2018年登場の8代目。基本的なシルエットをそのままに、車体デザインが見直された。
テールランプが細長く左右が繋がった意匠のものに、エンジンのルーバーの格子が空冷時代からの横基調のものから縦基調になるなどリア周りの変更点が目立つ。
モータースポーツ
901型こと初代911以来、世界中のモータースポーツで活躍した。
ポルシェは専用のレーシングカーを用いるクラス(プロトタイプレーサーやシルエットフォーミュラ)でえげつない強さを誇っていたために、911は改造範囲が狭い市販車クラスで用いられた。
活躍の場はサーキットに留まらず、ラリーやヒルクライムレースなど、一般道や未舗装路の競技でも大活躍した。
ワークス/プライベーター、或いはプロ/アマ問わず使用され、3Lを超えるクラスの競技では「大体のレースに1台は居る」定番のマシンである。
評価
リアエンジン・リアドライブというスポーツカーとしては採用例が少ない構造であるものの、初期のモデルから現在に至るまで高い評価を受けている。特に駆動輪にトラクションが掛かりやすいため、悪条件には強いと評判である。
また実用性(ベースモデルは4人乗り)と性能のバランスが良いため、同世代のスポーツカーを批評する際のベンチマークとして使用されたり、或いは設計段階でターゲットにされる。
一方で、独特なエンジン配置に由来するハンドリングは、世代を重ねるとともに改善はされるものの神経質な傾向であったと言われる。
絶えず改良が行われているためか現在でも同クラスのライバルと渡り合える実力こそ失っていないものの、動力性能では911より下位のモデルと位置づけられた「ケイマン」がミッドシップレイアウトという素性の良さを武器に下剋上の様相を呈しつつあり、やむなくメーカーが旗艦モデルである911の性能を上回らないようデチューンするなど開発・販売面で苦労が多いようである。