麦は泣き 麦は咲き 明日へ育っていく
概要
2014年9月29日から2015年3月28日にかけて放送された、NHK連続テレビ小説。
大正時代に日本で初めて本格的なウイスキーを作ろうとする酒屋の跡取り息子が、渡った先のスコットランドで一人の女性と出会い、当時はまだ珍しかった国際結婚をし、時にはぶつかり合いながら絆を深めていく物語である。本格的なウイスキー蒸留装置をセットに取り入れ、ジャパニーズウイスキーづくりもストーリーの一部に組み込んでいる。
またNHKの朝ドラヒロインとしては初の外国人を採用している(ただし採用条件があり、対象者は芸能事務所に所属するプロもしくはプロ志望者に限られた)。
主演は玉山鉄二とシャーロット・ケイト・フォックス(夫婦ともに主人公扱い)、共演者は泉ピン子、前田吟、西川きよし、堤真一など。
脚本は羽原大介(脚本協力には坪田文)。オープニング曲は中島みゆきが歌う『麦の唄』。音楽にはバグパイプが使われている。
登場人物
主人公とその家族
広島県・竹原の造り酒屋、亀山酒造の次男。醸造学を学びに出てウィスキーに魅せられ、本場のウィスキーを学ぼうと単身渡ったスコットランドでエリーと出会う。やがて恋に落ちた二人は周囲の大反対を押し切って結婚。日本に帰国した。何度も苦境に立たされるが、エリーの愛と明るさに支えられ、日本初の国産ウィスキーを造るという夢に生涯をかけていく。
愛称は「マッサン」。つまり番組のタイトルは彼の愛称である(カタカナ表記であるのはエリーからの呼称である意を含めているものと思われる)。モデルは、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝。
- 亀山エリー(かめやま えりー)/ 演 : シャーロット・ケイト・フォックス
政春の妻。スコットランド・グラスゴー出身。「政春さん」が言いにくい事から彼を「マッサン」と呼ぶ。ウィスキー造りを学びにスコットランドに来た政春と恋に落ち、母親の反対を振り切り、政春と一緒に日本へ渡る。来日後は「外国人の嫁」という理由から周囲に歓迎されず、文化や習慣の違いから良かれと思ってやったことが裏目に出て大騒動になってしまう。それでも持ち前の明るさで、どんなにつらい時も笑顔を絶やさず、政春の夢を支え続ける。政孝の妻である竹鶴リタがモデルとなっている。
政春・エリー夫妻の長女。生まれて間もなく身よりが無くなり教会に預けられていたところを夫妻の養女として引き取られた。名前は夫婦から一文字ずつもらったもの。
日本的な厳しい躾と、自分の意見をはっきりと言葉にするというエリーの教育方針に則り、自分の意思を主張することに躊躇がない。日常的に英話を用いるバイリンガルである。モデルは政孝の養女である竹鶴リマ。
亀山酒造
政春の母。亀山酒造の娘として生まれ、婿養子をもらって亀山家を守ってきた。政春がエリーを連れて帰国した際は激怒し、「この国で外国人と日本人が結婚しても幸せにはならない」とエリーとの結婚を認めず、政春にウィスキー造りをやめて造り酒屋を継ぐように迫る。
政春の父。亀山酒造に婿入りし、神戸の灘、京都の伏見に負けない広島の酒を生み出すために、杜氏達と魂をこめて酒を造り続けている。「酒は生き物じゃ」が口癖で、多くを語らない父に対し、政春の夢の原点は「父を超える酒を造ること」だった。
政春がエリーを連れ帰ったことで巻き起こる騒動の中、政春と胸中を語り合いその覚悟を問う。厳しさと深い愛情を持って、政春のウィスキー造りへの挑戦を見守り続ける。
政春の姉。亀山家の長女として生まれ、兄弟姉妹の面倒を見続けてきたしっかり者。すでに嫁いでいて、懐妊のため実家に一時帰省している。母・早苗とともに政春の結婚が上手くいくはずがないと考え、エリーとは距離を置いて接するが、文化の違いを超えて健気に奮闘するエリーの姿を見て、同じ女性としてエリーを尊敬するようになっていく。
- 岡崎悟(おかざき さとる)/演 : 泉澤祐希
千加子が作中で出産した第3子。成人後出征していたがシベリア抑留を経て帰還し、政春一家の元へ復員の挨拶にやって来てそのまま居候する。当初はシベリアでの過酷な環境から悪夢に悩まされ人間不信に陥っていたが、政春の後押しでウイスキー製造を手伝うようになると醸造に興味を抱き、家族の反対を押し切ってウイスキー製造を学ぶことを決意する。3級ウイスキー作りに悩む政春に自分の思いを語り後押しする。後に政春一家の養子となる。モデルはニッカの2代目社長となる竹鶴威でこちらは政孝の養子となっている。
厳しい母と寡黙な父のもと、天真爛漫で活発に育った末っ子。女学校に通い、教師になることを夢見ている。兄思いだが、母の猛反対にあう政春を見て面白がっている節がある。
好奇心旺盛で、猛反対する母を尻目にエリーを歓迎し積極的に交流。エリーも心を開き、生涯に渡る友情が続いていく。
亀山酒造の蔵人(酒造り職人)。一人称は「わし」。政春の小学校時代の先輩で、政春からは「俊兄(としにい)」と呼ばれている。天邪鬼でそそっかしいが、政志を尊敬し、水・米共に広島産の酒を作ることに情熱を持っている。はじめは政春に反発心を抱いていたが、ウイスキーづくりを通じて互いに理解を深め、信頼関係を築いていく。
大阪の人々
住吉酒造の取引先である鴨居商店の社長。社員や取引先などから「大将」と呼ばれている。人々に驚きと喜びを与えたい根底から、日本人の好みに合わせて洋酒を独自に加工し製造・販売して利益を上げる商売方法を信条とする。
初めて出会った時からマッサン夫妻を気に入り、エリーに親切に声をかけ悩みの相談に乗ったり、ワインの売り上げ回復のために協力した政春に鴨居商店への入社を誘う。入社した政春を創業した山崎工場の工場長に配属し、初の国産ウイスキー販売に向け共に協力していく。
サントリーホールディングスの前身である鳥井商店(寿屋)の創業者鳥井信治郎がモデル。
鴨居欣次郎の長男。大学に入学したものの、将来の目標も無く遊び歩いていることや、留学を志望していることから、父の指導で、政春に師事し エリーから英語を教わるため、亀山夫妻の家に下宿する。
亡き母や家庭を顧みず仕事に没頭してきた父を身勝手であると忌み嫌い、心を閉ざしていたが、亀山夫婦や近所の住民たちの温かさに触れ、心を開いていく。やがて、父の母への思いや偉大さに気づき、父の事業を支えていくことを決意。政春からウィスキー造りの技術を学ぶ。北海道に渡った政春を案じていたが、工場での作業中に心臓発作で急逝してしまう。モデルは信治郎の長男である鳥井吉太郎である。本来は2代目の社長になるはずだったが、若くして亡くなってしまった為に次男の佐治敬三が2代目をなる羽目となった。
住吉の聖アンドレ教会のイギリス人牧師チャーリーの妻。洗礼名であるキャサリンを名乗る。かねてから日本女性の立場の弱さや男社会のあり様に疑問を抱き、西洋の生き方や文化に憧れを抱いている。明るく社交的な性格で、マッサン夫妻が住む街のリーダー的存在となっている。エリーのよき相談相手として、生涯の友となる。
住吉酒造の社長。アルコールに甘味料や色付けを施した模造品だが、当時まだ日本に数少なかった洋酒工場を興した。国産初のウィスキー造りは町工場が下請けから脱却できる夢の事業で、ウィスキーに惚れ込んだ政春を全面的に支援し、本場のスコットランドに送り込んだ。
しかしその本音は、政春を将来娘の優子の婿として迎え入れて、会社の跡継ぎにさせようとしていたが、政春がエリーを連れて帰国したことにより、目論見は大きく外れてしまう。
- 田中優子/演:相武紗季
大作の娘。大作から、政春を婿に迎え入れると聞き、2年間政春を待ちながら花嫁修業を続けてきた。ところが政春がエリーと結婚して帰国。ショックと共にやり場のない怒りに苛まれ、ことあるごとにエリーをいじめていく。だが、エリーのひた向きさと、自分にはない真っ直ぐな生き方に憧れを抱いていくようになる。
北海道・余市の人々
ニシン漁の親方。豪胆で押しが強いが、その押しの強さが原因でトラブルを起こすこともしばしば。父親は元会津藩士で、もともとはリンゴ農家だったが、あることがきっかけで土地を離れ、ニシン漁に走るようになった。妻を亡くし、息子の一馬とは確執がある。苦労人で情に深く、余市に来て苦労するマッサン夫妻を支え、二人にとって北海道の"父"となる。
熊虎の娘。元々は教師をしていたが、熊虎がニシンの不漁で作った借金を返すために、教師を辞め、様々な職をしてきた。エリーを一瞬で気に入り、政春のウィスキー造りを家族で支える。
マッサン達と一緒に余市に来た俊夫とは口げんかばかりしていたが、やがて惹かれあい、結婚した。
熊虎の息子。父親の生き方に反発している。政春を大変尊敬していて、ウィスキー造りに自分の夢を重ねていく。エマから恋心を寄せられるが、太平洋戦争で出征し戦死してしまう。
需要の先食い
このドラマの影響で、にわかのウイスキーファンや終盤に差し掛かった時に旧正月において日本に訪れた中国人の爆買いによってジャパニーズウイスキーが飛ぶ様に売れまくったが、その為にウイスキーを作る為の原酒が不足してしまい、サントリーやニッカも高級品だけでなく廉価品のウイスキーを販売終了する羽目になり、その影響はドラマには登場していないキリンビール(こちらもジャパニーズウイスキーも作っている)も被害を被る事となった。
関連タグ
竹鶴政孝 … ニッカウヰスキーの創業者。主人公・亀山政春のモデルとなった人物。
クリストフ・ルメール … フランス出身のJRA騎手。JRA騎手免許受験に備え(二次試験は日本語での口頭試問)、本作を視聴して日本語を勉強したという。ちなみに後年、ルメールは『地球上の星』の意味を持つ二冠牝馬・スターズオンアースの主戦騎手を務めることとなる。