戦時標準船とは、主にごく大規模な戦争における貨物需要の急増に対処するために産み出された船舶。
一般的に短期間に多数の船を製造できるように、各部の設計を共通化(規格化)・簡略化し、低コスト化と工期の短縮化を実現できる構造・製造手法が採用される。
一方で船質、つまり安全性や冗長性、長期間の使用に対する耐久力は平時に設計された船より低くなる事が殆どである。
これは、世界大戦レベルの戦争が勃発すると輸送量が急増し、数百から数千隻の船が必要になることや、敵の攻撃によって損失した分を速やかに補填しなければならないためである。
一例
例えば、アメリカで第二次世界大戦中に用いられた10,000㌧級の戦時標準船 通称「リバティ船」の場合は、1941~45年までの僅かな間に ばら積み船やタンカーを含めた総数で2700隻以上が製造された。
これは、想定する運用期間を5年程と短く設定し、製造方法も予め部位ごとに組み上げたものを船台やドックで船の形に組み立てるブロック工法が採用されたためで、製造手法が現場に周知された大戦後期には平均建造日数が42日、最も短かった船では起工後わずか4日と15時間29分で進水している。
しかしながら、大量生産の為に大部分を溶接工法としたものの、当時のアメリカでは完全に信頼できる工法として確立しておらず、複数の船で「船体の自然崩壊(攻撃や座礁等が原因ではない瞬間的な船体折損)」という普通の船では考えられないような事故が発生している。