概要
PC/PS4/XboxONE/NintendoSwitchにて発売中。
タイトルのBlasphemousとは「冒涜的」という意味である。
近年元気のいいインディーズゲームのダークソウルライクメトロイドヴァニアにおいても、制作側の地域性・宗教性を貫徹した尖った作風で突き抜けた一作。
制作チームは南スペインの出身であり、本作の美術デザインやストーリーラインは彼らのルーツであるアンダルシア地方の文化や、その地に根付くカトリックから強い影響を受けている。
主人公である「The Penitent One in Silence(沈黙の懺悔者)」のとんがり兜は、スペインでカトリック信徒がかぶる「カピロテ」という帽子が元であり、これをかぶって苦行を実践する人を「Penitent/悔悟者」という。
開発者曰く、スペインの画家フランシスコ・デ・ゴヤの絵画「鞭打ち苦行者の行列」から影響を受けているという。
BGMも強烈で、全編がアンダルシア地方名物のフラメンコギターをベースとしており、悲しげで切々たる旋律が陰鬱な雰囲気を強調する。
2019/12/19にNintendo SwitchとPS4で配信されたのと同時に日本語訳にも対応した。
本作は現代日本人には馴染みが薄い宗教用語・古い熟語が続出するため、ローカライズは難航が予想されたが、架け橋ゲームズが手掛けた日本語訳の品質は上々。
もっとも、難しい単語が容赦なく並ぶ上にテキストが膨大なため読み手は辞書が必要かもしれない。
ゲームシステム
サイドビューの任意スクロールアクションゲーム。
ステージの概念がない広大なひと綴りのマップを探索し、ボスを倒すなどのイベントを経て進行範囲を広げるいわゆるメトロイドヴァニア系である。
衝撃的でおぞましいデザインの巨大ボス、道中のザコに対する処刑アタック(いわゆるフェイタリティ)などのグロ要素が表面上の特徴。
全編を通じて価値感はロウフルであり、困っている人を助け、他者の業を肩代わりする事がよい結果につながる。
ストーリーは直接にはあまり語られないが、登場する人物の発言やアイテムに付記されている伝承を元にプレイヤー自身が独自に背景を読み取っていく事が前提になっている。
暗鬱な雰囲気の中で断片的手がかりを元に、未判明な物語と世界観を読み取る事を要求するそのスタンスはダークソウルの影響もあるとされる。
ストーリー
――敬虔にして残酷な神の意志、それは「奇蹟」と呼ばれた。
クヴストディアと呼ばれる世界に降り注いだ「奇蹟」は、すべての魂に潜む罪を具現化し、厄災となって人々に邪悪な呪いをかけた。
あなたは悔い改める者、「悔悟者」となってクヴストディアを旅することとなる。死と生の輪廻に閉じ込められたあなたは、たった一人で「奇蹟」の根源を突き止めなければならないのだ。
しかし、その道は困難に満ちあふれている。
異形なる恐ろしいモンスターや、ひどく荒れ果てた土地が行く手を阻むだろう。あなたの体を引き裂こうとするモンスターを打ち砕き、その手に持つ「懺悔の剣」を強化する償いの涙を手に入れよ。
(公式サイトより)
キャラクター
悔悟者
プレイヤーの分身たるとんがり兜の戦士。前日譚を描くコミック「Blasphemous:The Kneeling」の主人公でもある。
自らに沈黙の行を課しており、台詞は一切存在しない。
「『黙する悲哀』修道院」で大勢の死体と共に倒れていたが、『奇蹟』により蘇生。死ぬことのできない身となり、贖罪の旅に出る。
NPC
デオグラシアス
緑の装束と全身に縄を巻き付けた大男。『奇蹟』の証人を自称する。
悔悟者の行く先々に現れ、進むべき道を示唆する。
かつては『黙する悲哀』修道院に所属する書記だったが、各地で発現する様々な『奇蹟』を書き記す為に修道院を離れた。
ティルソ
「アルベロ」で病人を治療する「口付けの廉施者(Wound Kisser)」。
絶望的な状況下でも仲間とともに献身的に病人の世話をしており、悔悟者に軟膏の材料を見つけたら持ってきてくれるよう依頼する。
材料を入手後、ボス戦をクリアすると周囲の仲間が次々に死亡し、アルベロ郊外に墓が立つ。最終的にティルソ自身も倒れてしまう為、材料を入手したらボス撃破前にアルベロに戻って手渡す事が重要。全てクリアするとロザリオのスロット数を増やす結び目をくれるほか、実績が解除される。
モデルは聖人・アッシジのフランチェスコ。伝承によればフランチェスコは膿みただれたらい病患者に抱擁して口づけをし、恐怖が歓喜となり、献身的な奉仕を行うようになったという。
ルウドヴィコ
「アルベロ」の「真聖遺物教団(Order of the True Burial)」司祭。窓越しにのみ会話が可能。
人々が等しく「正しい形で埋葬されること」を目的とし、悔悟者に遺体を見つけたら持ってくるように依頼する。
奇蹟が発現した為に惨殺された少女・修練者テンチュディアの遺体の一部(遺肉・遺骨・遺髪)はクヴストディアの各地にあり、これを持ち帰ると感謝して報酬をくれる。
カンデラリア
クヴストディア各地に店を構える胡散臭い女商人。様々な品が入った巨大な壺を背負っている。
クエストに関連するアイテムもある為、見つけたら可能な限り購入したい。全ての店で全ての品を購入すると実績が解除される。
アイテムのフレーバーテキストによるとジプシーであり、「ある者には賢者、ある者には魔女」という謎の存在。
ヴィリディアナ
ボス戦前に佇んでいるうら若い女性。協力を要請する事ができ、ボス戦で悔悟者の体力を回復してくれる。
協力するごとにその姿は老化し、三度ボス戦をクリアするとその場に倒れて死んでしまう。
ジェミノ
「枯れたオリーブ畑」で木と半ば同一した男。教会による罰で、生きたまま徐々に木と同一化する呪いにかかっている。
悔悟者に「『焦貌の聖女』修道院」で使われる「煮えたぎる聖油」を持ってきてくれるよう依頼。これは時限イベントで、油を渡さずに別エリアのボスを倒すと完全に木と同化してしまう。「慈悲なる夢」の次に訪れ、ボス戦後に油を運べばクエストは完了する。
モデルは聖セバスティアヌスの殉教。
レデント
後ろ手に自らを戒めた老人。
巡礼者であり、行く先々で悔悟者と遭遇する。足止めを食らっている事が大概なので道を開くと、感謝の印に色々なものをくれる。
後述するクレファスと思いがけない形で面会する事が可能だが、双方のフラグ管理が必要。最終的に「万母の母」に到達するが、巡礼の目的を果たした後は死んでしまう。
クレファス
「万母の母」にて、永遠の苦痛に悶絶する聖女ソコロを前に祈っている修道士。かつては真聖遺物教団の一員であり、レデントの知己でもあった。
捧げものを3つ行う事でソコロは解放され、それまでの祈りが無為だったことに絶望。この時ルウドヴィコから事前にアイテムをもらっていればアルベロに戻る事になるが、そうでない場合は投身自殺してしまう。トロフィーに関連したイベントが発生する為、何気に管理が必要なNPCの一人。
アルタスグラシアス
三人の女が出たらめに融合し、長い顎鬚をたくわえた怪物。「怨嗟の縦穴」にてアイテムを捧げると謁見が可能。
かつては三姉妹だったが婚姻を拒み、決して結婚しないと誓いを立てた為に奇蹟により異形の姿となった。悔悟者に「奇形の卵」を授けるが、とある場所で孵化させる事で便利な聖遺物にトレードできる。
セビリアの伝承にある、聖ウィルジュフォルトがモデル。異教徒の家に生まれたがキリスト教を信じていた彼女は、シチリア王との結婚を強要。純潔の誓いを立てる為神に祈ったところ顎髭が生え、結婚は叶わなかった。激怒した父親により殺されたが、15世紀には解放者および女性の守護聖人として絶大な人気があった。
ホジネロ
「眠れる画廊」の、雄牛と月が描かれた巨大な絵画の中にいる、巨大な赤子。
クヴストディア各地で見つかる「月光の子ども達」の兄弟であり、救出した数に応じてアイテムと祈詞を授けてくれる。
元ネタはフラメンコの曲「雄牛と月(El Toro y la luna)」。また「ホジネロ」という名は
1862年に著名な闘牛士ホセ・ダマソ・ロドリゲス(ペペテ)を返り討ちにして殺害した雄牛の名前でもある。
ボス
おぞましい姿をした異形の存在。「奇蹟」の権化であり、神の側に立つ者からは聖なるものとされる。
黙する悲哀の番人(Warden of the Silent Sorrow)
鉄仮面をつけ、緑の典礼服を着た大男。最初のボス。
手にした燭台を叩きつけ、衝撃波を放つ。撃破後は傷口から流れる血を悔悟者が兜に注いで被るというイベントが発生する。
慈悲を施す者(Ten Piedad)
「慈悲なる夢」ボス。三試練のひとつ。
ミケランジェロの「ピエタ」を髣髴とさせる女性の像に抱かれているが、悔悟者と遭遇すると起き上がり、像の首をもいで叩きつけてから襲ってくる。広範囲攻撃と打撃を組み合わせてくるので、適切なパリィと回避を織り交ぜて戦う必要がある。
アイテムのフレーバーテキストによると元は人間で、眠っている間に「奇蹟」を受けて怪物化し、絶え間ない怒りと痛みに苛まれ続けているという。
焦貌の聖女(Our Lady of the Charred Visage)
「『焦貌の聖女』修道院」ボス。三試練のひとつ。
醜く焼けただれた巨大な顔。左半分は溶けた黄金に覆われ、額からは脳が露出している。
両手からレーザーや火球を放つため、適切な回避が必要。後半になると発狂弾幕になる為、かなりの難易度を誇る。
元はアウレアという名の美少女。あまりの美しさによって崇拝の対象となるが、男達から言い寄られる事を憂い、自らの顔に煮えたぎった油を注いだ。火傷は癒える事なく、この行いにより聖人とされた。修道院が設立するに至り、修道女達も進行の証として自らの顔を焼くならわしとなっている。
元ネタはセビリアの伝承。曰く、12世紀にマリア・フェルナンデス・コロネルという美しい女がいた。彼女は時の王ペドロ1世に執着されて家族を失い、王の追跡から逃れる為に自らの顔を油で焼いた。この行いにより王は恐怖して手を引き、マリアはサンタ・イネス修道院を設立して生涯をその地で追えた。後にその亡骸(不朽体)は掘り起こされ、同修道院の聖遺物とされた。
三苦悶(Tres Angustias)
「怨嗟の縦穴」ボス。三試練のひとつ。
黒いドレスとマスクをまとう三人の女性。一人は槌、二人は槍を操る。
徐々に炎上しながら上昇する空間での戦闘となる。段差を登りつつ適切に攻撃を交わして攻撃を入れると、三人は合体。巨大なレーザーを打ち上げるようになる。
アルタスグラシアスの苦悩を体現する存在である事がテキストで示唆されている。
ペルペチュア(Perpetva)
「ホンド」手前で遭遇する中ボス。
赤い翼を生やした女戦士。聖別軍(Anointed Legion)の団員で、エズドラス(後述)の妹。
雷を操るほか、剣での突進攻撃を行う。落雷には事前のモーションがあり、全体的に隙があるので合間に攻撃を入れる事が可能。
倒すと「ペルペチュアの防具」をドロップ。その後エズドラス戦にも後半に参加してくる。
デオグラシアス曰く、彼女は既に死亡しているのだが、エズドラスはその死を受け入れられずに狂い、いまだ傍らにあるかの如く「会話」しているのだという。
聖別軍 エズドラス(Esdras, of the Anointed Legion)
「三試練の橋」ボス。金色の鎧と槌を武器にする戦士。
聖別軍(Anointed Legion)の団員で、ペルペチュアの兄。
槌の攻撃に加えて雷を操る。横方向の回転攻撃や飛び道具など幅広い技を持つ。終盤になるとペルペチュアが参戦する為、隙がかなり少なくなる。下手をするとハメ倒されての死亡もあるため、中盤の壁敵である。
デオグラシアス曰く、兄妹ともどもある男の養子であり、彼および教会を守る為、贖罪と称して「奇蹟」を手にかける悔悟者を倒す為に戦うこととなる。
埋葬の大司教 メルキアデス(Melquíades, The Exhumed Archbishop)
「万母の母」ボス。
五本の手に支えられて横たわる巨大な骸骨。豪奢な法衣や冠で飾られており、教会の信者達によってその亡骸を飾り立てられ、生きているかの如く敬われていた。
手に支えられている間は攻撃できないので、雷や錫杖、手の攻撃を避けながら支えている手を攻撃し、降りてきた所に攻撃を加える必要がある。
ローマのカタコンベから発掘された古代キリスト教徒の髑髏は「カタコンブの聖人(Catacomb saints)」と呼ばれ、無数の宝飾で飾られ、聖遺物として扱われるものが多数存在する。
放棄の末裔 エスポシト(Expósito, Scion of Abjuration)
「眠れる画廊」ボス。
編み細工の女性に抱かれた赤子。両目は白い布で覆われ、血の涙を流している。また巨大な蛇のような怪物がこれに付き従う。
主に攻撃は蛇が行い、毒や炎、尾で攻撃してくる。また赤子が泣き出すと悔悟者の足元に円が生じ、地面にいる間に赤子に接触すると悔悟者を摑み上げてバラバラに引き裂くという即死攻撃を行ってくる。
フレーバーテキストによると、かつて母親が魔女として火炙りに処せられた際に赤子は引き離され、その様子を見ないようにと目隠しされた。母は最後の願いとして編み細工の人形を作り、赤子はそこに置かれてようやく泣き止んだという。また「エスポシト」は、スペイン語で「親がいない孤児」を意味している。
炎による復活者 キルセ(Quirce, Returned By The Flames)
「聖禁の壁」ボス。
赤いとんがり仮面を被り、炎の剣を操る男。アイテムを取ろうとするといきなり床下から襲いかかってきて戦いとなる。
回転する剣のほか、炎の柱や突進攻撃を繰り出してくる。落下攻撃などは隙が生じるため、攻撃を入れるチャンスとなる。
フレーバーテキストによると、かつて異端者として火炙りに処せられた男。凄まじい苦痛に苛まれるが「奇蹟」により蘇り、灰の中から復活したという。
拘束の苦悶 クリサンタ(Crisanta of the Wrapped Agony)
「大聖堂 屋上」ボス。
黄金の鎧に身を包んでおり、とんがり兜の仮面は自分の目をふさいでいるかのようなデザインになっている。
ほとんどの攻撃はパリィが可能で、離れて戦うよりも近接の方がやりやすい。ただしワープからの突進攻撃などを織り交ぜてくる為、油断は禁物。
前日譚にて悔悟者を殺害し、同胞と共に修道院に投げ捨てた張本人。倒すととどめを刺す演出が入るが、仕留めきれずに逃げられる描写がある。
聖下 エスクリバー(His Holiness Escribar)
ラスボス……の一つ手前。「教皇の回廊」にて戦闘。
赤い皮膚を持ち、銀色の法衣と仮面に身を包んだ男。手には宝飾された剣を持つ。
複数の遠距離攻撃をしてくるが、あくまでも前哨戦扱い。本番は彼を倒したその後になる。
「万母の母」教会の最高指導者であり、「聖別軍」を配下とする。「奇蹟」を否定する「『黙する悲哀』修道院」を襲撃させ、物語の発端を作った。
「奇蹟」により選ばれた末子にして、クヴストディアを覆う異変の根源。たびたびカットシーンに登場し、悔悟者に呼び掛けているが、その真なる願いは……
奇蹟の末子(Last Son of the Miracle)
ラスボス。巨大化したエスクリバー。
仮面が閉じている間はいかなる攻撃も通らない為、巨大化した剣を攻撃して仮面を開かせる必要がある。また高い位置にある為、様々な攻撃を掻い潜って足場に昇り、顔を攻撃しなければならない。
倒すと体が溶け崩れるが、五本の腕を持つ人物が「昇天」するさまが描かれる。この後エンディングとなるが、フラグを立てる事で2種類の終わりが迎えられる。