ダフネ(リゼロ)
りぜろのだふね
「……みんなぁ、『暴食』を安く考えすぎてないですかぁ?」
「そもそもぉ、食欲ってぇ、生きる上で一番大事な欲求なんですよぅ? だって、それが満たされなかったらぁ、生きていけないじゃぁないですかぁ」
「安らぎがなくてもぉ、愛されなくてもぉ、感情を吐き出せなくてもぉ、自我を保てなくてもぉ、欲しいものが手に入らなくてもぉ、なにに憧れることがなくてもぉ、人は死んだりしないじゃないですかぁ。でも……」
「食べれなかったら、人は死んじゃうんですよぉ?」
プロフィール
性別 | 女性 |
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イメージカラー | 紫、黒 |
能力 | 『暴食』の魔女因子 |
概要
身長はおおよそ150cm前後。灰色がかった肩ぐらいまでの髪を二つくくりにしている。色白で華奢、ちなみに胸は小さい。
一見すると13,4歳ほどの子どものように幼い容姿をした人物であるが、問題なのはその出で立ち。
棺桶のようなものの中に入れられて、拘束具に全身をがんじがらめにされた上に、その両目を固く固く黒の目隠しで封じられているのである。
まるで彼女の存在を封じているかのような異形の様相を呈しているが…
400年以上もの昔、大罪を背負い、世界に災厄をもたらした7人の人物、魔女。
その中でも『暴食の魔女』として名を馳せていた人物である。
目の前に映る全ての生き物に襲いかかる貪食の権化「魔獣」を産み落とし、世界中に害意をまき散らした張本人。
それ故に一般人から見た世界への脅威度はかの最悪の存在、『嫉妬の魔女』サテラに次ぐ。
しかし過去に討伐されており、物語開始時点では既に故人。
現在では『強欲の魔女』エキドナによって魂を「蒐集」されており、エキドナの精神世界でのみ再現されたものとしてスバルの前に現れる。
人物
気の抜けるような間延びした喋り方に違わず、性格はおっとりしておりマイペース。
更に話し続けていると息が続かなくなり、直ぐにバテてしまうほどスタミナがないため、暇さえあれば寝てしまう。
これは彼女が常に空腹で力が出せないためであり、本人曰く「存在するだけで疲れる」とのこと。
『暴食』の名に違わず食いしん坊な様子で、食べ物のこととなると敏感に反応する。それ故か嗅覚に優れているらしく、目隠しされた状態にもかかわらず匂いで食べ物の位置や数、他人の状態まで察知できる。
恐ろしい肩書きと悍ましい経歴に反して本人は非常に温厚。
他の魔女達をあだ名で呼んでいたり、初対面のスバルに対しても「すばるん」と呼んだりとフランクで、むしろ他の魔女に比べてもかなり接しやすいタイプ。
…が、問題なのは彼女の根本にあるのは「この世は食うか食われるか」の『弱肉強食』のみであるという事。
彼女にとって自分以外のものは究極的には「食べ物」であり、他者の存在を飢えを満たすために喰らうもの、あるいは増やすものとみなしている。それ以外のことには殆ど関心がなく、全て些事。
この世界は喰うか、喰われるかの自然の摂理のみでできていると考えているのである。
とはいえ、全く自身のことしか考えていないわけではなく、飢えの苦しみを知っているからこそ「世界に飢えをなくす」目的で「魔獣」を生み出した、という一面もある(もちろん自身の食欲を満たすためでもあったが)。
現在でこそ世界で悪名を轟かせている「魔獣」であるが、彼女なりに「いっぱいたべれるように」と特徴をもたせて創られた存在なのである。
…といっても、現在では多くの人を含む生き物達を喰らいまくっており、人々は飢えを満たすどころか喰われる恐怖に怯えているという有り様となっているが、
彼女曰く
「……? 相手を食べようとするのにぃ、自分が食べられる可能性を考慮しないのってぇ、ちょっと勝手すぎませんかぁ?」
魔女の中では温厚で接しやすい、という事には間違い無いのだが、その価値観故に他者とは相容れない。
エキドナは「スバルと相性が悪い」と評していたが、そういう意味では彼女と相性の良い人物などいないだろう。
その異常な在り方の裏には、彼女を常に苛む強烈な「飢餓感」が関係している。
スバルは後述するが彼女の飢餓感を体験する事になる。その時のスバルの有り様を見れば、あるいは彼女の一端は理解できるのかもしれない。
大罪における暴食、とは必要以上に食欲を求めることであるが、彼女のそれは大罪の暴食とは異なる。
が、大罪の中で唯一生命に関わる大罪を冠し、世界に大量の食害を齎し、世界を喰いちらかした彼女はまさしく『暴食』の名にふさわしい「魔女」であるといえるだろう。
劇中では自らが作り出した傑作の一つである「白鯨」を打ち倒し、次は「大兎」を絶滅させると啖呵を切ったスバルに興味を持ち、
自らを苦しめ続けてきた「飢餓感」を投影させた「大兎」をどのように終わらせるのか、それを見届けるために期待をかける。
「たかだか、ニンゲンが」
「やれるものならぁ、やってみたらいいですよぉ」
≪一般人目線の魔女の危険度スケール≫
嫉妬>暴食>>色欲>傲慢>>>強欲>怠惰>>>>>>>>憤怒
能力
魔女因子に適合しており、『暴食』の権能を行使できる。
ちなみに同じ因子をもった大罪司教とは使える能力は異なる。
エキドナから彼女と接する際には「目を合わせるな、触れるな、体の拘束を解くな」と念を押されているが、これは彼女の能力に関係している。
権能によるものかどうかは不明だが、「左目」を見た相手に自身の「飢餓感」を植え付ける『飢餓の魔眼』をもつ。目を見てはいけないのはこのため。
劇中では実際にスバルが左目を見た瞬間、最早痛みとしか思えないほどの猛烈な苦痛と、自らの指を無意識のうちに食いちぎる程の圧倒的な飢餓感を味わった。
この時点でも相当凄まじいが、エキドナ曰く「彼女が恐ろしいのは『右目』と『喰われてから』」とのこと。
ちなみに目の色は金色。オッドアイではない。
またこちらも権能によるものかダフネの「気分とか意思とかで」「魔獣」を発生させるという能力をもつ。
生み出せるのは魔獣のような獰猛な生物限定なのかは不明だが、ダフネが抱くのは「飢え」とそれに関連する感情くらいなのでわからない。
ちなみに魔獣は『第三の口』なるものから産まれてくる模様。第一、第二の口もあるようだが、こちらも現時点では不明。
食事行為はもちろん口から行うが、それ以外にもその肌や髪なども含む「全身」でも行なわれる。これが「触れてはいけない」理由と思われる。
ちなみに身体が棺に拘束された彼女であるが、なんのことはないこの拘束は彼女自身によって付けられたもの。
彼女は常に空腹に苛まれているため体力がなく、無駄なカロリー消費を抑えるために自ら付けているのである。その気になれば普通に自分で動くことも可能。
彼女の棺も実は移動式。
「百足棺」というダフネが生んだ魔獣であり、普段は大人しいようだが彼女の意思で側面から文字通りムカデのような脚が生え、高速で移動する。
「そうそう、それぐらい警戒しなきゃダメですよぅ。だぁって、この世は食べるか食べられるかの関係でしかないんですからぁ」
彼女の最期は、「砂の海で枯れ死」であったという。
魔獣
魔力を持つ人類の外敵。人類に仇為すため、魔女が生み出したと言い伝えられている。
…というのが通説であるが、実際はダフネが世界から飢餓をなくすための食料として創造した存在。
「主食がマナなので生息地域を選ばず餌も不要」「食肉効率を上げるため個体をどんどん大型化させる」というダフネなりの配慮によってえらい強さの化け物となってしまった。
こちらの世界の動物と同じように世界中に存在しており、色々な種類が生息している。
三大魔獣
ダフネ曰く「自信作の中でも傑作」の3種。
ダフネ視点では食いでのある餌ではあるが、人類にとっては最も脅威度の高い別格の化け物共である。
はくげい。
巨大なクジラのような姿をした空飛ぶ白い魔獣。
神出鬼没で、出現した際には『消失の霧』と呼ばれる触れたものを周囲の記憶ごと存在から抹消する霧を口から吐き出す。
単体ですら厄介な存在だが、激しい攻撃を受けると分身を出現させ、本体は攻撃の届かない上空へ逃れるという行動をとる。相当な強敵。
現在では『暴食』の魔女因子をもつライ・バテンカイトスのペットとして従っている様子。
「白鯨、おっきかったですよねぇ? あの子、食べたらたくさんの人、お腹いっぱいになると思いませんかぁ?」
- 大兎
おおうさぎ。
大きい長耳を持つ握り拳サイズの小さなウサギのような白い魔獣。
名前に反し一見するとちっこい可愛らしいウサギさんだが、万を超えるレベルの夥しい数の群れを成す。「多兎」、転じて「大兎」。
常に猛烈な飢餓感に理性もなにもかも蝕まれており、周囲の生物を喰らい尽くすと群れの中で共食いをしながらエサを求めて移動する。
単体では非力だが、一匹残らず殲滅しなければ残った一匹から単体で分裂増殖を始める。
ダフネ曰く自身の飢餓感を投影させて創り出したらしく、彼女の狂気が垣間見える悍ましい魔獣である。無限に増える、という特性も、彼女自身の尽きることのない食欲を表しているのかもしれない。
「大兎もぉ、いくらでも増えるんですよぉ。だからぁ、あの子がいればぁ、放っておいても増えるんだしぃ、永遠に食べ物に困ることとかないかなぁって」
- 黒蛇
こくじゃ。(作者曰く「くろへび」とは読まない模様)
触れるだけで百の病に生き物を浸し、這った土地は呪いを帯び、魔獣以外は住みつけない死の土地へと変貌させる「病巣の魔獣」。
舌が這った後は赤黒い火傷のような傷跡が刻み込まれ、ある者は首から上の肌が赤黒い斑点に覆い尽くされ、あらゆる顔面の器官からどす黒い血を垂れ流し、ある者は水を吸い尽くされた大地のように身体が枯渇していき、動かすことができないどころか触れただけで崩れて散ってしまいそうな状態となる。
魔獣の中でも異常な存在であり、白鯨や大兎以上に制御できない災禍中の災禍。
ダフネ曰く他の魔獣とは異なり「増えすぎた人間の口減らし」として創り出された魔獣。
ちなみに彼女はこれら3種はぺろっと一口で食べれるらしい。
おまけ
- 百足棺
むかでひつぎ。
行動に不自由したダフネが移動用として創り出した黒い棺型の魔獣。
普段は棺桶だがダフネの意思により下部から蟹の足のような爪が無数に生え、高速移動を可能にする。
余談
- あだ名
友人同士である魔女達をあだ名で呼んでいるが、呼び方がちょっと特殊。
エキドナ→ドナドナ
ミネルヴァ→ネルネル
セクメト→メトメト
テュフォン→テュテュ
カーミラ→ミラミラ
サテラ→テラテラ
スバル→すばるん (バルバルとかじゃないのか)
- 体質
過食気味な彼女であるが、同時に拒食症も併発しているらしく、大量に食べた後は大概全て吐き出してしまう。
- 魔獣達
生み出された魔獣達はダフネのもっていた『暴食』の魔女因子に従っているとのこと。魔女因子はのちに大罪司教に移譲されるが、ダフネ亡き後、魔獣達はその大罪司教に従って動いている。
また、「魔女」によって作り出された魔獣は「嫉妬の魔女」に敵意を向けているが、これは創造主たる暴食の魔女を滅ぼした相手だからなのかもしれない。
- お茶会での意味深な発言
『強欲の魔女』エキドナの精神世界で開かれる魔女たちによる会合、『お茶会』。このお茶会に招かれたスバルを、ダフネは「賢人候補」と評している場面がある。
この発言はどういった意味なのだろうか…
- 美声
意外と美声で、魔女たちの中で一番歌が上手い。
※第6章のネタバレを含みます!※
その正体は人工的に産み出された存在であったことが仄めかされている。
厳密に言うと人の子としては産まれたが、他者の禁忌の術法によって結果的に「魔女」として産み出されてしまった存在と思われる。
もともとは不治の病に侵されたとある一国の王の延命のために、術法の贄として使われるはずだったのだが、なんらかの手違いで失敗。
原理は不明だが彼女自体にこの禁術が適用されてしまう。
彼女はこの時より忘我にすら至るまでの極限の飢餓に苛まれるようになり、同時に「死ねない体」となってしまう。
死ぬほどの飢餓に蝕まれながら、それでも死ぬことのできない存在となってしまった。
彼女は辺りにあるものを片っ端から喰らい尽くし、そして魔獣を産み出し、産み出しては喰らい、喰らっては産み出しを繰り返し、
やがて外の世界へ魔獣とともに解放された。
――『暴食の魔女』は魔獣の群れを産み落とし、尽きぬ飢餓に飢え続ける。