ロイ・アルファルド
ろいあるふぁるど
「僕たちは魔女教大罪司教、『暴食』担当、ロイ・アルファルド
───まァ、俺たちが恨みを『食ってる』のはよくあることだけどさ」
「その気遣い、たまんなく嬉しいなァ!なんせ、俺たちは満腹感優先の『悪食』だからねぇ」
「いいさ、いいよ、いいとも、いいかも、いいじゃない、いいだろう、いいじゃないか、いいだろうさ、いいだろうともさ、いいだろうからこそッ! 暴飲ッ! 暴食ッ! 美食、悪食、飽食、過食ッ! 大味、薄味、美味、珍味ッ! 根こそぎ全部喰らってやるさッ! 面白味のない人生もまた、俺たちの知らない味わいだッ!」
魔女教大罪司教『暴食』担当。
ぼさぼさの長い焦げ茶の髪に、布を体に巻き付けただけのような粗雑な格好をした、10代前半か半ばほどの窶れた少年。
一見するだけでは貧相な子供だが、その瞳はこの世に存在するあらゆる毒を煮詰めたような腐り切った輝きを放っているとされ、見たものが一発で邪悪な存在と気づくほど。
「ライ・バテンカイトス」とは別の『暴食』担当。
彼とは兄弟の関係であるらしく、劇中では彼の弟とされている。
兄弟ということもあって身体的特徴はバテンカイトスと似ており、少なくともWeb版では服装含めて見た目すらほとんど変わらない様であるが、
書籍版で公開されたデザインでは、チャイナ服の様な袖と裾の長い緑色の服装を見にまとい、髪も長くはあるが三つ編みにし、前髪もセンター分けにしているなど、ところどころ違った特徴が盛り込まれている。
デザイン担当者曰く「拳法使いのイメージ」とのこと。
また、使用する武器も兄のように魔女教の短剣ではなく、「虎爪(バグ・ナク)」と呼ばれる暗器を用いて戦う。
ユリウス・ユークリウスの弟、ヨシュア・ユークリウスの『記憶』と『名前』を喰らい、ヨシュアの存在を忘れたユリウスとの戦闘中、彼を頻繁に「兄様」と呼び混乱させる。
挙句、ユリウスの『名前』を喰らうことに成功。周囲から存在を忘れさせた。
性格や目的に関してもバテンカイトスとほぼ同じであり、他者から人生を奪い尽くし「自分たちが幸せになる」という酷く独善的で身勝手な人生目標を掲げている。
行使する権能についても彼と全く同じものだが、奪った記憶や経験は彼と共有しているわけではない様で、アルファルドだけが扱える技もあったりする。
スバルが放ったムチの一撃を口で受け止めるなど、その実力はバテンカイトスと同様に高い。
自身を『暴食』の中でも「悪食」と称しており、バテンカイトスと違い「質より量」として区別せず片っ端から他者の人生を喰らい尽くしている。
喰らう記憶に拘り厳選する「美食家」の彼とはその辺りが相容れないらしい。
それ故に『暴食』担当の大罪司教としては一番被害者を出している人物。
主義こそ異なれど他の兄弟と同じく他人の人生を踏み躙り冒涜する悪意に満ちた外道である。
また、詳細は不明だがとある人物を『ママ』と呼び、その人物に従っているような描写が仄めかされている。作中で『ママ』と呼ばれている登場人物と言えば彼女ぐらいしかいないが…
作中での行動もよく見ると、一時的に彼女と行動を共にしている描写もあるから、恐らく何らかの関わりがあることはほぼ間違い無い模様。
『ママ』の教育方針は「恐怖による支配」である事から、アルファルドも恐怖に縛られている可能性もあるが、関係性は不明。妹からは「兄様はあの女の言いなり」と呆れられているような物言いをされている。
ちなみに、兄の方は『ママ』と関わっているような描写が無い。
- 三大魔獣との関係
三大魔獣の一角、「白鯨」をペットにしているというバテンカイトスは「くじら座」の恒星の一つを名前の由来としているが、アルファルドの名前の由来は「うみへび座」の恒星から来ている。
へび、といえば三大魔獣の内には「黒蛇」がいるが…
- 担当声優
2024年10月から放送されたアニメ3期では、CVはバテンカイトスと同じ河西健吾氏が担当している。
同じ双子だから声帯も似ている、という事だろうか…
ただ、両者の間ではしっかり演じ分けがなされており、アルファルドは弟ということもあってかバテンカイトスより少し高めの声で演じられている。
大罪司教:
『怠惰』担当 | ペテルギウス・ロマネコンティ |
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『強欲』担当 | レグルス・コルニアス |
『暴食』担当 | ライ・バテンカイトス(美食家)、ロイ・アルファルド(悪食)、ルイ・アルネブ(飽食) |
『憤怒』担当 | シリウス・ロマネコンティ |
『色欲』担当 | カペラ・エメラダ・ルグニカ |
ユリウス・ユークリウス、ヨシュア・ユークリウス - 彼の被害者
※第5章以降の内容を含みます※ |
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初登場は第5章。
他の大罪司教達と共に『水門都市プリステラ』を襲撃した。
プリステラに侵入する際、玄関口を守っていた衛兵を文字通りペシャンコに圧殺。そして、その凄惨たる現場でたまたま通りがかったオットー・スーウェンと接触した。
「前菜」代わりと言わんばかりに彼にも容赦無く襲いかかったが、近くにいたプリステラの衛兵『白竜の鱗』に阻まれ、あと少しのところを逃している。
(ちなみに、アニメ版ではこのシーンがライ・バテンカイトスと差し替えられている。この後しばらく現れないバテンカイトスの印象を強めるためかもしれない。)
立ち向かってきた『白竜の鱗』を喰らった後、福音書の指示に従って二番街の制御塔を襲撃。
アナスタシアの使いで制御塔から手紙を受け取っていたユリウス・ユークリウスの弟ヨシュアと、プリシラの従者シュルトと遭遇する。
ヨシュアの決死の覚悟によりシュルトは逃してしまうも、ヨシュアの『名前』と『記憶』両方を喰らってしまった。
この時、「ママと約束した時間が近い」と話し、その場を去っているが……
その後は都市中心にある庁舎を『色欲』と共に占拠。
庁舎を『色欲』から奪還するつもりで侵入してきたスバル達に奇襲を仕掛ける形で登場した。
ここで会ったが100年目と因縁深い『暴食』に復讐心を燃やすスバルだったが、
庁舎の人命を優先するため、やむなく対応をユリウスに任せ、人質のいる最上階へと急いだ。
余談だが、何気にスバルと初接触した『暴食』が彼だったため、「レムとクルシュの記憶を奪った者は『暴食』」という情報だけを知っていたスバルは彼を真犯人と勘違いしていた(実際はバテンカイトス)。
ユリウスと戦闘になるも、とある人物が一番街の水門を一時的に解放したため濁流が押し寄せ、『色欲』と共に庁舎から撤退。
そして福音書の記述に従って二番街の制御塔を占拠し、都市の人々に『人工精霊』を差し出すよう脅迫した。
制御塔奪還の対抗馬としてアナスタシア陣営のリカードと、再びユリウスが応戦したが、ユリウスの弟であるヨシュアの『記憶』から、彼らの戦闘方法を読み圧倒。
ユリウスもその場で編み出したアドリブの技で対処するものの、アルファルドは今まで喰らってきた『記憶』から剣技、武技、魔法全てにおいてユリウスらを上回る技術を有しており、徐々に彼らを追い詰めていく。
更に戦闘中、ヨシュアの兄弟愛の裏に隠れていたであろう暗い劣等感をユリウスに吐露することで、彼の心を掻き乱す。
「覚えているかい、子どもの頃のことを! 病気がちな僕たちが調子を崩して、兄様に庭の木に生ったリンガをねだったときのことをッ!」
「まだ俺たちも兄様も小さかったし、兄様は最初は無理だって、諦めろってそう言ったんだよッ! 覚えてる? 覚えてないかなァ? でも僕たちは、兄様が拒否したら拒否した分だけもっとリンガが欲しくなったッ! 兄様が無理だって言ったことができたら、俺たちの方がすごい! 自信が持てる! そう思ったからさァ!」
「兄様はリンガを取ってくれた。だから僕たちは、兄様が憎かったのさ」
冷静さを欠いたユリウスの隙を突き、強烈な一撃を叩き込むアルファルドだったが、咄嗟にリカードが庇ったために致命傷は免れた。
しかしこの時、リカードの片腕は吹き飛ばされ、この事に動揺したユリウスは、アルファルドにまんまと『名前』を喰らわれてしまうことになる。
その後、アルファルドは福音書の記述に従って要求を放棄。プリステラから撤退した。
他の大罪司教達も『強欲』と『憤怒』を除いて撤退。都市奪還は成されたが、大罪司教達によって齎された被害は大きく、特に周囲から忘れ去られてしまったユリウスは精神的に大きな傷を負うことになる。
時は流れ、第6章。
プリステラを襲撃し好き放題に蹂躙した『暴食』達。
スバル達はユリウスを含め、人生を奪われてしまった犠牲者達を救うべく、『プレアデス監視塔』へ赴いた。
紆余曲折あり、監視塔にてスバルは彼らの妹、ルイ・アルネブと接触。
アルネブからスバルの『死に戻り』の存在を知ったバテンカイトスとアルファルドは、その権能をいただこうと大量の魔獣と共に監視塔を襲撃した。
バテンカイトスと分離して別行動をとり、バテンカイトスはエミリア、ラムと交戦、一方のアルファルドは…
塔の第二層『エレクトラ』の試験官として顕現したかつての初代剣聖レイド・アストレアと接触した。
如何に「悪食」の彼であろうと、最早伝説上の存在であるレイドはまさしく極上のご馳走。早速レイドに対し物理的「交渉」を持ちかけ、記憶を喰らおうとするが…
当然レイドにはボッコボコにされ、あえなく半死半生の状態になってしまう。
しかし、レイドは彼の醜悪な権能に興味を持ったのか、あろうことか自らを喰わせるように挑発。
ならば遠慮なく、と言わんばかりにアルファルドは挑発に乗りレイドの『記憶』を喰らうことに成功した。
これでアルファルドはレイド・アストレアの記憶を我がものとし、最高の存在となった
かに思えたが…
「あァ、すっごいなァ。あんな味が、こんな味が、どんな味がするのか、たくさんたくさんたっくさん想像してたけど……予想以上だったッ!」
「あァ、見てたろッ!? 喰ったとも! 喰ってやったとも! いいなァ、最高だなァ、これが想像だにしない味わいッ! 『悪食』なんて言われてる僕たちでも、こいつの豊潤な味わいにはなるほどッ! ライの言い分がわからなくも――」
「――んあ? あ、あ、あー、あー、ああああー?」
「ま、ま、まー、待って、ひへ、ぎひ、ぎひひッ。おかし、おかしいって、おかしいじゃないかッ! だって、こんなの……オメエ、変だろ?」
「変なこたねえよ、オメエ。喰うか喰われるか、それが生きるっつーことだろうが」
喰った相手を再現する『暴食』の権能を逆手に取られ、ロイ・アルファルドは
レイド・アストレアという規格外の自我に精神を乗っ取られた。
これによってもともと精神体のみであったレイドは生きた肉体を収得。完全なる死者蘇生を果たした。
あまりにも荒唐無稽なハプニングから、アルファルドはあっけなく自己を喪失する事となってしまった。
スバルは監視塔においても『死に戻り』でループを重ねているが、このアルファルドとレイドの「交渉」というイベントは、さも運命で決定づけられているかのように発生しており、
「アルファルドの自己喪失」は確実なものとなってしまっている模様。
ただ「幸せに生きたい」という目的を果たすため、自分勝手に他者の人生を強奪し、我がものとして振る舞った最低の外道は、
喰らった相手に胃袋を食い破られ、逆に喰らい尽くされるという皮肉にも、しかしお誂え向きの末路を辿ることになるのだった。
過去の『暴食』の魔女因子の適合者であるダフネが言っていた「相手を食べようとするのに、自分が食べられるのを考慮しないのはおかしい」という考えを体現した結果となっている。
…アルファルドを新たな肉体として手に入れたレイドとユリウスの決闘は熾烈を極めていくことになるが、
戦いの最中、レイドは突如として身体の崩壊を迎えた。
どうやらその規格外の魂にはアルファルドの肉体は不釣り合いであった様で、戦いで消耗していく過程でとうとう耐えきれずレイドは自壊していく事となる。
戦いには負けたが結果的には勝利となったユリウス。
レイドが崩壊した場所には、元の姿に戻ったアルファルドが横たわっていた。
ただしアルファルドの肉体はユリウスとの戦闘に酷使された結果、致命傷の域に入るまでボロボロになっており、
意識も無く、生きているのか死んでいるのかも分からない状態となってしまっていた。
ユリウス達がプレアデス監視塔に訪れた目的は『暴食』によって奪われた『記憶』と『名前』の奪還方法の模索。
元凶である『暴食』を殺害すれば全てが丸く収まる…なんて保証はどこにも無く、仕方なくユリウスはアルファルドの身柄を「世界で最も有名な封印」と同様の方法で拘束、生け捕りにし、王都へ移送する事とした。
とはいえ返還方法を素直に話したとしても、極刑を免れる事はないだろう。
因みに、その拘束方法とは鎖でがんじがらめ、などと言う生易しいものではなく、相手の意識を強制的に切り離す陰魔法「シャマク」で固めるというもの。
規模こそ違うがかの『嫉妬の魔女』サテラの封印と同じ方法である。
相手は大罪司教。用心するに越したことは無いということである。