概要
クトゥルフ神話に登場する旧支配者の一つ。『イス(イース)の大いなる種族』とも。この場合の「旧支配者」とは神性のことではなく純粋に人類発生以前の地球を支配していた勢力の一つであることを意味している。
時間の秘密を解き明かした唯一の生物とされ、その功績から『偉大なる』を付けて呼ばれている。
彼らはとてつもない科学力を持ち、互いに精神を交換する装置を使って時間と空間を超越する。また、人類には解明不可能な原理で作動する電気銃を武器とする。
滅亡に向かう銀河系『イス(イース)』から十数億年前の地球に存在していた円錐形の生物の肉体を乗っ取って地球にやってきた。この円錐形の生物も虚空を渡って外宇宙から地球に渡った高度な生命体である。
超銀河世界「イース」の外縁空間を出生地とする彼らは本来的に肉体を持たない。
また、「イス」とは彼らの故郷の銀河の名前であり種族名ではない。書籍などでは「イス人」という呼称がよく使われる。
円錐形生物の肉体に宿ってからはその肉体によって繁殖をしたが、子供は偉大なる種族の精神を持って生まれてきた。このことは偉大なる種族達にとっても確かめるまではわからなかったらしいことが書かれている。
複数の惑星を支配する先住種族である「飛行するポリプ生物(盲目のもの)」を激しい戦いの末多くの犠牲を出しながら駆逐し、地下へ封じ込めることで地球の支配者となる。
四億年前頃から五千万年前頃まで栄えたが、再びポリプ生物が解き放たれ、滅ぼされそうになったため、かつてと同じように人類滅亡後の未来に栄えるカブトムシに似た生物の肉体へと逃亡した。
つまり彼らは人間の誕生以前と滅亡後の途方もない過去と未来の地球に存在している。その後地球の終焉が近づくと水星にいる球根状植物にやどることになる。
時間というものを解明できていない立場からはこう書かなければならないが、彼らにとってはすでに起こったことだろう。
古のものや、ユゴスよりのものたち、クトゥルフの勢力も同時代に地球にいてそれらとはそれらとも争いになることがあったが強力なテクノロジーにより、常に即応体制にあったため大きな問題とはならなかったらしい。
ただしクトゥルフは軍勢を率いて地球全土を支配しようとしていたとされることがあるので、この場合、大きな衝突を完全に回避できていたとは考えづらい。
彼らは知性というものを何よりも尊いものとし、高い価値を置いている。肉体を持つ生物と精神交換してはその生物の文化、知識を収集し続けている。
調査が終了した場合は元通り精神を戻して離脱し、その際に肉体の所有者が現地で得た記憶は抹消されるが、断片的に記憶が残っている場合は夢などの形で現れる模様。
文化や技術などは集めた知識から気に入ったものを採用している。
人間の教授の肉体を得て現代に来たときはとてつもない学習能力と知能の高さを見せた。
記憶障害と偽ってその人間の振りを続けるものの、周囲の人間には人外の存在だということがバレバレだった(単なる記憶障害では納得しきれないことを怪しまれていたし、オカルトを疑う人物もいたようだ)ことから誤魔化しは得意ではないのかもしれない(ある作品では、人体の構造と動かし方に慣れていない描写があって、それで怪しまれた事もある)。
また、帰還の時が迫るとそのことを惜しんでセンチメンタリズムにひたっていたこともあり、人間と共通する精神性も見ることができる。
ポリプ生物からの侵攻にあったとき逃亡したのは、この生物たちとは精神構造が違いすぎて精神交換ができなかったためであるとされており、つまりは人間との精神構造は少なくとも、交換可能な程度には似ているということでもある。
精神を入れ替えられ円錐形生物の肉体に精神を入れられた人間も、落ち着きを取り戻し、彼らに危害を加えないと判断されれば、どうやら拘束を解かれある程度自由に振る舞うことを許してもらえるらしい。
その代わり持っている知識をできる限り書物に書き記すことを命じられる。これによって彼らの知識を収めた図書館の利用や旅行の許可が出るようだ。
つまりかなり丁重に扱われるという事で、交換対象となる精神は知性溢れる人格ばかりなので、どうせ何時かは帰れるので大抵は状況を受け入れ、偉大なる種族が集めた驚愕の知識を知るために自発的に働くようになる。
円錐形生物の肉体に入った人間の教授は、しっかりと仕事を行い、他の時代の精神が入った円錐形生物との対談や、古代地球の旅行を大いに行っていたらしい。
頭のいい人にとってはある種のユートピアと言える。
とはいえ、人類に対して非人道的な調査や実験を行った例もある。犠牲者は頭部が綺麗に切り取られていること以外はまるで生きているかのようだった。
彼らの能力は神秘的なものではなく、飽くまで彼らが学習、研究によって開発した科学力のたまものである。
現在偉大なる種族の姿として知られるイラストは、円錘体生物に由来している。
ちなみに、意外にも彼らの文明における記録媒体は巻物であり、ペンを使っているらしい(但し、高熱を帯びた針をペン代わりにし、金属製の板に情報を刻む場合もある)。
偉大なる種族のテクノロジー
異界の種族で最も優れたテクノロジーを持つのはイス人と明言されている。それはすなわち、この世で最も優れたテクノロジーを持つと考えて間違いないだろう。
自分たちのテクノジーを積極的に使うミ=ゴやシャンとは違い、自分たちのテクノロジーを使うことに妙に気が進まない様子を見せる。これはイス人の人生に対する考え方によると思われる。記録媒体を原始的な紙とペンで済ませている理由もここにあるようだ。
必要に迫られた場合素早く巧に新たなテクノロジーを生み出す。しかし、それも継続的に使おうとはしないようだ。知性の収拾を何よりも優先するイス人だが、イス人の興味は彼らを発明へと駆り立てるものではないようである。
イス人の発明したテクノロジーの中で、判明しているものがいくつかある。時間に関する能力は大抵精神的なものだが、四次元に影響を与える装置も発明している。文明レベルに大きく差がある人類にとっては、簡単なもの以外は理解しがたく不可解なものに見えるようだ。
・電撃銃
盲目のものと戦うために創造した、イス人にしては珍しい武器。ミ=ゴの扱う電気銃とは全く違う。
・時間通信機
イス人の時間旅行に協力した人間に与えられることがある。取り付けられた宝石に対応するイス人と交信することが出来る。スイッチさえ理解できれば誰でも簡単に扱える。
また、最も特筆すべきなのはイス人は時間というものを完全に征服しているということ。どのようにしてなのかは分からないが、ティンダロスの猟犬に追いかけられたことがない。