公爵令嬢の嗜み
こうしゃくれいじょうのたしなみ
公爵令嬢に転生したものの、
記憶を取り戻した時には既にエンディングを迎えてしまっていた…。
私は婚約を破棄され、設定通りであれば教会に幽閉コース。
私の明るい未来はどこにあるの?
概要
カドカワBOOKSより書籍化、ヤングエースUPよりコミック化されている。
イラストは双葉はづき氏、漫画は梅宮スキ氏が担当。
既刊はそれぞれ、書籍版が全8巻、漫画版が7巻。
「悪役令嬢」ものの作品。中世ヨーロッパ風の世界を舞台に「乙女ゲームの世界に転生した主人公が悪役令嬢になってしまった」「婚約破棄により地位が危うくなったため挽回しようと奮闘する」という導入部分は他の「悪役令嬢もの」作品と同様だが、本作品は「ヒロインが悪役令嬢から婚約者を勝ち取ったエンディング」のその後を描いているため、「ゲーム知識により事前に危機を回避する」といった要素はなく、代わりに主人公による領地運営や商会経営、また権謀術数渦巻く政治外交を主軸に据えた群像劇となっている。
あらすじ
アイリス公爵令嬢は婚約者であるエドワード第二王子とその取り巻きに糾弾される。その直後に自身の前世の記憶を思い出し、自身が乙女ゲームの世界で転生したこと、自分はそのライバルキャラクターの令嬢であり、今まさにエンディングシーンであることに気が付く。シナリオ通りに進めば自身は教会に幽閉されることになることも思い出し、冷静にその場を切り抜け、実家へと帰宅するのだが、待っていたのは実の父親からの謹慎処分……とは名ばかりの、領主代行としての領地運営だった。
登場人物
- アイリス・ラーナ・アルメリア
本作の主人公。アルメリア公爵令嬢。婚約者であるエドワード第二王子より婚約を破棄されるが、直後に前世の記憶を思い出したことで、取り乱すことなく冷静に対応することが出来た。本来のシナリオであれば教会に幽閉されてしまう筈だったが、父親との面談で素質を見出され領主代行として領地運営を任せられる。
公爵令嬢として十分な礼儀作法、そして教養を身に着けており、前世の記憶から政治や経済についても明るい。『アズータ商会』を立ち上げ現実世界で大きな利益を挙げた交易品を取引することで成功を収め、また現代的な政策の数々を打ち立てることで領地運営も徐々に軌道に乗せていく。
アイリス本人である『私』と、前世の人格である『ワタシ』の意思が混じり合った状態になっており、意思決定を下す際に対立することもある。またその影響からか記憶を取り戻す前もゲーム程悪辣な性格にはなっておらず、スラムから子どもたちを救い出すなど人道的で思いやりのある性格をしている。
アイリス親衛隊
アイリスが幼い頃にスラムから救い出した7人の子どもたち。アイリスの領地運営や商会経営に献身する。
- ターニャ
アイリス専属の侍女。家事は当然のことながら、有事の際の護衛や秘書もこなす。情報収集のための諜報員としても活躍し、本職の人間からもその能力を評価されるほどになる。
- ライル
アイリス専属の護衛。騎士然とした性格で礼儀正しく、護衛隊の報告書等のデスクワークもこなす。力に任せた強力な剣撃が持ち味。
- ディダ
アイリス専属の護衛。飄々とした性格で、アイリスにもフランクに接するため、よくライルに諌められている。素早く隙を見せない戦い方が得意。
- レーメ
アルメニア公爵家使用人で主に図書室の管理を行っている。王宮図書館にも匹敵すると言われるアルメニア図書室の本を全て読了しており内容を記憶しているため、その幅広い知識からアイリスに有益な助言を行う。
- モネダ
商業ギルド副会計士。アイリスが商会を立ち上げる際に勧誘する。優秀な商人で金の流れには敏感。
- セイ
アルメニア公爵使用人にして執事見習い。アイリスが商会を立ち上げた後は、商会運営に尽力し、王都支店の支店長を務めるようになる。
- メリダ
アルメニア公爵家のお抱え料理人。アイリスが商会を立ち上げた後は、喫茶部門に配属される。
ゲームの登場人物達
この世界の元となった乙女ゲーム『君は僕のプリンセス』の本ヒロイン及び攻略対象たち。舞台となるタスメリア国の王子や貴族などが中心で、次代を担うとされる人々。
- ユーリ・ノイヤー
ノイヤー家男爵令嬢。ノイヤー男爵家当主の父と平民の母親の間に生まれた庶子。非常に愛らしい恵まれた容姿を持ち、また人好きのする性格をしている。エドワード第二王子と協力して王都の貧民たちへの炊き出しを実施するなど庶民や貴族に人気はあるものの、そういった行動は王国の財政を圧迫しており、宰相や文官からの評判は悪い。親しくしていた友人であっても、利用価値がなくなった場合はあっさり切り捨てるなど存外に腹黒い一面も見せる。
- エドワード・トーン・タスメリア
タスメリア王国第二王子。アイリスの元婚約者。オレ様な性格の持ち主で、短慮かつ思慮の足りない言動が多く、アイリスでさえ呆れていた。ユーリと婚約してからは完全に骨抜きにされており、彼女のお願いやオネダリを、権力を振りかざし何でも叶えようとする。
- ドルッセン・カタベリア
騎士団団長の子息。熱血漢で負けず嫌いであり日々鍛錬に明け暮れていたが、ユーリにその様子を褒められ、彼女に恋心を抱くようになる。騎士としての名誉と誇りを重視しており高潔であろうとしているが、ろくに調べもせずにアイリスの糾弾に加担し、彼女に暴力を振るったことを両親に咎められ、徐々に自身の騎士としての在り方に疑問を抱くようになる。
- ヴァン・ルターシャ
ダリル教教皇子息。次期教皇とされている。
- ベルン・ターシ・アルメニア
アルメニア公爵家嫡男にしてアイリスの弟。学園の座学では常にトップの成績を修めていた秀才。ユーリに惚れており、彼女がエドワードの婚約者となった後も付き従っていたため、内心で見下していたアイリスの糾弾にも加担した。両親に失望され強く叱責されたことと、アイリスの領地運営の手腕を見学したことで自身の愚かさに気が付き、改心する。