必殺口上
二つの眼を閉じてはならぬ
この世のものとも思われぬ
この世の出来事見るがいい
神の怒りか 仏の慈悲か
怨みが呼んだか 摩訶不思議
泣き顔見捨てておかりょうか
一太刀浴びせて一供養
二太刀浴びせて二供養
合点承知の必殺供養
必殺シリーズのターニングポイントとなった早すぎた名作
本来ならもっと長い放映期間が用意されていたのだが、あまりにも他の必殺シリーズとはかけ離れた内容であったために視聴率が上がらず、シリーズ唯一の打ち切りと言う憂き目にあってしまった。
だが、一般受けしなかったというだけであり、その完成度は*紛れもなく本物である*。
そのレベル、強烈な個性がどれほどかといえば、他シリーズで名を知られたライターや監督が脚本・撮影を担当した回が、むしろレベルが低いと言われてしまうほどの代物。
後半のメインライターとして、東映アニメや円谷特撮(これも担当した)山浦弘靖氏が起用されたことも、この作品の異質さを表していると言えるだろう(ちなみに山浦氏は必殺シリーズは本作を除くと、後番組の「仕事人」初期の数話しか手掛けていない)。
登場人物
先生(演:中村敦夫)
霊能力がある、怪しい行者。超能力の持ち主(後述)であり、身体能力もかなりのもの。
行者という立場からか、お金を受け取る事は基本しない上、極端な下戸(一滴飲んだら意識不明状態に陥る)。
若(演:和田アキ子)
男装の麗人だが、料理・裁縫が得意。だが体格の立派さと怪力故に女性扱いしてもらえず、結果、女性である事をあきらめている。
おばさん(演:市原悦子)
記憶を失った殺し屋。自分の子供を引き取って育ててくれている夫婦を守った結果・・・・・・。
正十(演:火野正平)
一行の情報収集役。お調子者だが、経済概念が(悪い意味で)しっかりしている。中村主水とは面識があるらしい。
おねむ(演:鮎川いづみ)
一行に何となくついて行っている旅の巫女。
必殺
うらごろし、その仕置きはあまりにも強烈である。
太陽信仰の行者という先生の設定と太陽の光を浴びて超人パワーを発揮するという超能力の特性上、白昼堂々……というか朝っぱらから殺しに行く上、若の殴って殴って殴り殺したり首が180度回転するほどの打撃を加えたり、竈の中に放り込んだり、いくら悪人といっても惨すぎるだろうという殺し方、おばさんの不意打ちと捨てゼリフの強烈なインパクト、さらにはパターン化が進むと思わず笑いがこみあげてくるBGMもあいまって凄まじい印象を残しており、他の追随を許さない。
勿論、これだけの凄惨な殺されかたをする悪人のしでかす犯罪も必殺シリーズ屈指の極悪さ。中には店を乗っ取る為に跡継ぎの娘を毒殺しようと画策、最後には締め殺して五体バラバラにして埋めるという外道な輩もいる。
そんな、死んでも死にきれない末路を辿る被害者が訴える魂の慟哭がこの世に形として現れるのが本作における超常現象であり、それを鎮めるために先生達が行う、いわば従来の金による「稼業の殺し」ではない、「供養の殺し」こそがうらごろしなのである。