ドラゴンクエストユアストーリー
どらくえふぁんのくろれきし
概要
ドラゴンクエストの中でも特に人気の高いドラゴンクエスト5を主軸に置いた、ドラクエシリーズにおける初の長編劇場版アニメ化作品。
ドラクエシリーズのアニメ化自体はダイの大冒険をはじめとして、前例がないわけではないが、ナンバリング本編における3DCGアニメ化は初めての試みであり、良くも悪くも画期的な企画として注目を集めていた。
最終的な興行収入は14.2億円であり、人気タイトルの劇場版としては無難なところに落ち着いている。
タグとしては略称のユアストーリーが多い。
評価
全体的な評価はズタボロの一言である。
キャラクターデザインに多少の変更を加えたことを含めて、映画のビジュアル面、CGのクオリティに関しては確実に日本のCGアニメ作品としては頭一つ抜けており、そこだけに関して言えば、世界レベルで通じると言っても過言ではない。
問題はシナリオ。
シンプルに酷評にしかならないので、まず良点として挙げられている部分を記述する。
まず、前提として本作はゲームと言う映画とは別媒体での映像作品のアニメ映画化であるが、映画よりも内容の長い原作に対して、三部作構成や三時間構成と言った大作映画としてではなく、上映時間を103分の尺に収めた通常の映画と同内容の映画として製作された。
この時点で内容の大幅な短縮が行われることになり、序盤のイベントはほぼダイジェストとなり、幼なじみであるビアンカと主人公リュカの幼少期イベントがほぼ全カットとなった。
その状況の中でも、青年期以降のヒロイン二人の魅力と、結婚イベントの盛り上がりに関しては、原作を再現して非常にきれいに作りこまれている。
そして欠点だが、一言で言えばラストをオリジナル要素で滅茶苦茶にしている。
まず、最初にオリジナル要素として「天空の剣」を「魔界の門」に投げ入れることで「魔界の門」を封印することができるという要素が追加された。
そして、物語のラストにおいてラスボスであるミルドラースが登場する前に、「魔界の門」に剣を投げ入れようとするが、そこでミルドラースではなく、謎のコンピューターウイルスが出現する。
コンピューターウイルスによって世界は瞬く間に破壊されて白い空間だけになり、そこで主人公は、この世界がバーチャルリアリティーによるゲーム世界であり、自分自身はゲームのドラゴンクエストをプレイしていたことを思い出す。
そんな中、主人公は今まで自分が連れていたスライムがコンピューターウイルスに対するワクチンプログロムであることを思い出し、これを使ってコンピューターウイルスを倒して、物語は終わる。
あまりにも突飛すぎて意味が分からないが、これが映画ユアストーリーの結末であり、同時にこの映画が酷評される理由である。
まず、映画作品としてこの作品は、原作を様々な意味で改変しており、これが原作ファンの怒りを買った。
少しでも作品の質を上げる為、ないしは映画化した際のつじつま合わせの為と言った理由で致し方なく改変したのであれば、ある程度は原作ファンとしても飲み込めただろうが、この改変は何一つ作品の質の向上に寄与していない。
まず、ラスボスのミルドラースが登場しない。作品のラストで唐突に意味の分からない敵を出す。
その敵に対して、ご都合主義展開であっさりと敵を倒す。主人公がプレイヤーでドラゴンクエストの世界をプレイしているという設定であるにも関わらず、天空の剣の設定や、キャラクターデザインの変更などを行い、原作そのものを改変している。
そして何よりも、子供のころから好きなゲーム作品の劇場作品を見に来たファンに向かって「大人になれよ」と冷酷に切り捨てる科白から、特に熱心なドラクエファンほど怒りを買う内容になってしまっている。
そして本作の製作に関して監督である山崎貴氏は「ドラクエばかりにかまっていられない」と発言しており、企画が持ち上がった段階で、人気タイトルの映画化と言うものを甘く見ていたことが明らかにされている。