この項目にはアニメ『ひぐらしのなく頃に業』の郷壊し編の核心的なネタバレがあります。
「ではごきげんよう」
「裏切り者の梨花」
経緯
山狗率いる鷹野三四との決着から数年後、古手梨花と北条沙都子の二人は雛見沢から離れ、聖ルチーア学園に通っていた。
しかし、元から勉強が嫌いであった沙都子は受験後も続くハードな勉強の日々について行けずに学園内で落ちこぼれてしまい、サロンに入り浸り、取り巻きまで作って学園生活を謳歌する梨花とも距離ができてしまう。
そんな日々の中で沙都子は梨花に従い、ルチーアに進学するという選択をしたことを悔やんでいた。
そんな折、沙都子は偶然からカケラの世界に迷い込み、そこでフェザリーヌ・アウグストゥス・アウローラらしき何者かの手によってループ能力者となり、昭和58年からやり直すことになった。
再び鷹野及び山狗と戦い、これに勝利し、惨劇を回避したのだが、沙都子の心には大きな不安があった。
これから先にまたルチーアでのあの地獄のような日々が待っているのではないかと。
そんな中で沙都子は梨花に対し「自分は勉強が嫌いだし受験が終われば燃え尽きてしまう」「それにあの学校の空気は自分には合わないだろう」と言うことを吐露し、ルチーアへは行きたくないと伝える。
しかし、まさか沙都子がループをしているとは思っていない梨花は沙都子の言葉を受験に対する不安と解釈してしまい、「沙都子のことは自分が助ける」と約束する。
沙都子は梨花の言葉を信じ、再びルチーアへの進学を決意する。
…しかし、ルチーアで待っていたのは前の世界線と変わらない学園生活であった。
約束がありながらも前の世界線と変わらない梨花の振る舞いに沙都子は怒りを募らせていく。
そしてある日、沙都子は学園のエントランスにて梨花を呼び止める。
正反対の現状に身を置く二人がピリつく会話を交わした後、沙都子は梨花をそっと抱きしめる。
驚くが満更でも無さそうな態度の梨花、周囲で黄色い声を上げる女生徒たちを尻目に意味深な言葉を呟き、まるでその場所から逃がさないかのように梨花を強く抱き寄せる沙都子。
梨花の困惑もよそに沙都子が指を鳴らした次の瞬間、抱き合う二人の上にシャンデリアが落ちた。
血飛沫が飛び散り、一瞬の静寂の後女生徒たちの悲鳴が響いた所で第21話は終わるのであった…。
解説
いわゆる百合心中と言われるものだが、「大衆の前で」「抱き合いながら」「手の届かないシャンデリアをわざわざ落として」する非常にレベルが高い百合心中であると言えるだろう。
それに加えて嘘つき、裏切り者と罵りながらも梨花への執着が捨てられず、他の女生徒を巻き込まないようにして二人っきりでの死を演出するという点に沙都子の梨花に対する深い愛憎が見え隠れする。
作中において二人の間に直接的な恋愛描写はなく、二人に恋愛感情のようなものがあったかどうかはわからないため、これを百合と呼ぶかどうかは各々の見解が分かれるところである。
しかし、このシチュエーションに何か言葉を当てはめるのであれば百合以外の言葉がないというのもまた事実である。
余談
以上のように中々凄惨な出来事なのだが、インパクトとその語感、沙都子の愛憎入り交じる行動が人気を博し、第21話放送後には「シャンデリア」という単語がTwitterトレンドにまで食い込む事になった。
このシャンデリア百合心中の後、初めて後期エンディング映像が公開された。
その映像はまさに直前に二人を叩き潰したシャンデリアのシルエットから始まり、幼少期(本編)・中学生期・聖ルチーア学園入学後…と梨花と沙都子の距離が離れていく様子が描かれ、最後には狂気の表情で腕を広げる沙都子とそこへ落ちるシャンデリアで締められている。
ひぐらしにおいてはループした世界線はそのまま続いていくことが示唆されているが、このシャンデリア百合心中後の世界を考えてみるとなかなか面白いかもしれない。
例えばルチーア学園の生徒たち。
彼女らは梨花と沙都子のバックボーンを知らないわけため、彼女らからはこの出来事が「求心力マックスなカリスマお姉様と、その同郷だけど今は疎遠になってる落ちこぼれで問題行動の不良が衆目の前で百合心中キメた」という風に映る。
間違いなくルチーアの伝説になるだろう。その光景を見た女生徒たちの中には性癖がひん曲がってしまったものもいるかもしれない。
もしルチーアに演劇部があれば平成時代には劇の題材になっているかもしれない。
逆に雛見沢組にとってみれば悲惨そのものである。
遠い場所で仲間二人を失い、さらにシャンデリアが落ちてきたのが原因だと知れば沙都子のトラップを想起するものもいるだろう。そこに思い至ったときの仲間たちの感情はあまりにも悲痛である。
加えて二人をルチーアに入学させるため、入江京介は一千万円近い入学金を出しており、その点からも悲惨と言える。