自然も時々間違える
あらすじ
「フロー」と呼ばれる不思議な現象が普通に起きる世界。
会社員近藤智万は運悪く「フロー」に遭ってしまい、12歳まで若返ってしまう。
中身は経験豊富な大人とはいえ、見た目が子供になってしまったことで、会社に居辛くなってしまった智万。
現状をなんとかしたいと考えていた彼女に、応対してくれた市役所員・辺見は「フロー」の起こした現象を専門に対処する業者「広田フロー」のアルバイトを紹介する。
概要
蟲師、水域を手がけた漫画家・漆原友紀の最新作。2018年6月号から2021年2月号まで月刊アフタヌーンにて連載された。全17話。
私たちの住む世界と似ているけれど、ちょっと違う世界で、「フロー」によって引き起こされた不思議な現象を専門業者「広田フロー」の面々が解決していく1話完結型のSF漫画....。というのは建前で、作者である漆原友紀氏曰く本当は現代もの風景漫画らしく、真の主人公は建築物とのこと。実際、SF的な設定はフローぐらい。
住宅地の塀や錆びたガードレールなど、何気ない現代日本の風景に対する氏の愛がこれでもかと盛り込まれた作品である。
登場人物
近藤智万
少しお節介な母親と共に暮らす35歳の女性。眼鏡をかけている。
元々は会社員だったが、フローに遭ってしまったことで、見た目が12歳にまで若返ってしまう。
その後、暫くは会社員生活を続けるものの、見た目が子供になってしまったことで、仕事に支障が出てきてしまい、退職してしまう。
しかし気真面目な性格であるため、何もしないことに耐えられず、フローの一件で世話になった市役所員の辺見の紹介で、フロー業者「広田フロー」のアルバイトに応募する。
チャランポランな雇い主、ヒロタを最初は諫めていたものの、徐々に彼のペースに巻き込まれていく。
ヒロタ
フローを専門に扱う業者「広田フロー」を営む男性。智万のことをちまちゃんと呼ぶ。ラーメンが好物。
チャランポランな性格で、いつも笑っているため、初対面の人にはあまり信用されないものの、フロー業者としては確かな腕を持っている。特にフローの“期限”についてはかなり正確な予測を導き出すことができる。
仕事柄、大抵の出来事には動じないが、幽霊の類がかなり苦手らしく、橋の上で幽霊らしきものを見てしまった際には、大いに取り乱してしまった。
物語の終盤に一時行方不明になる。しばらくして帰ってきたものの、どうも少し様子がおかしくなっており....?
しゃちょう
長い間「広田フロー」に住み着いているオスの白猫。去勢済み。かなり貫禄のある体つきをしている。
猫であるものの、歴とした「広田フロー」の一員である。
この世界の猫はフローを好む習性があるらしく、ヒロタの正確な予測もしゃちょうによるものが大きい。
ヒロタもそのことをよく理解しており、しゃちょうを唯一無二の相棒と呼んで、非常に大切に思っている。
ヒロタ以外の人からも餌を貰っているらしく、複数の名前を持っている。
静河
長い歴史を持つ浮動神社の神主を務める女性。
普段は神主らしく、穏やかでクールな風を装っているが、本性は結構乱暴かつ意地悪である。
ヒロタとはフロー業者と浮動神社の関係も相まって、会う度に、嫌味を交わす間柄である。
とはいえヒロタが協力を求めた時にはそれに応えたり、釣りに付き合って、一緒に大物を釣り上げるなどなんやかんや言って仲が良い。
黒王丸という黒猫を飼っており、溺愛している。黒王丸は飼い主に似たのか、しゃちょうとは仲が悪い。
ヒロタに関するとある秘密を知っている。
工藤
ヒロタの先輩の警察官。ヒロタの友人でもある。
シングルファザーであり、タクミという息子がいる。理髪屋である実家で、母と息子の三人で暮らしている。
育児と仕事の両立に限界を感じ始めており、警察をやめるか悩んでいた。
辺見
市の環境保全課フロー班に勤める女性。
何度も一緒に仕事をしているのか、ヒロタとは顔見知りである。
フローの被害に遭った智万に「広田フロー」のアルバイトを勧めた人物。
用語
「フロー」
浮動現象とも。空間の浮動化のことであり、それによって起こされる現象の総称。
全ての物質は、ごく細かに絶えず不安定に動いているため、時にバランスを崩して形を変えることがある。
作中世界では小学生の理科の教科書に載っている程当たり前なものであり、役所にはフローに対応する専門の部署も存在する。
登場人物の一人曰く人智の及ばぬ深遠なものであり、様々な奇妙な現象を引き起こす。
発生する際は、物や空間にモヤの様な物がかかる。
自然現象であるため、発生を防ぐ手段はないものの、いつ収束するかはある程度の見通しは立つらしく、そういった”予測”を生業とする人々もいる。
一般的な自然現象との相違点として、悩みや願望などといった人間の想念によって引き起こされることがよくあり、ヒロタたちが処理するフローも大半は「人因性」の物である。
フロー業者
フローによって引き起こされる現象の処理を行う専門業者のこと。
基本自営業であるが、役所に委託されて、案件を引き受けることもある。
「予測を出すだけで何もしない」という批判の様に、多少なりとも胡散臭い連中として見られているらしく、特に高齢者の中にはフロー業者よりも長い歴史と実績がある「浮動神社」に信頼を寄せている者もいる。
「浮動神社」
静河が神主を務める神社。800年の長い歴史を持つ。
「お浮動様」なる神を祀っている。この「お浮動様」は、フローもしくは浮動現象の象徴であり、総じて彼らもフローについての造詣が深い。
同じ領域を扱うフロー業者とは、商売敵の様な関係にあり、仲はあまり良くない。
作中世界では十二年に一度、大きな浮動現象が起こるとされ、その被害の減少を祈願する特別な祭り「浮動大祭」を執り行っている。
立地的にフローが発生しやすい場所にあるらしく、他では見られない、珍しい現象を引き起こすフローが発生することがある。